国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ

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sisam
シサㇺ 【sisam】 和人,日本の. (出典:萱野、方言:沙流)
sísam 1
シサㇺ 【名】[sí-sam 主な・そば/となり(の人)]日本人(和人)(「シャモ」)(アイヌ民族でも他の少数民族でもない日本人の多数民族を指す名称)。 sísam mosir シサㇺ モシㇼ 和人の住んでいる土地(しばしば本州を指す)。 sísam itak シサㇺ イタㇰ/シサミタㇰ 日本語。 sísam úsey シサㇺ ウセイ [和人・飲用の湯] 和人の飲む湯(「お茶」の訳語として出た)。 húre sísam フレ シサㇺ [赤い・隣国人] 西洋人(「赤毛の人」の意味)。(W) ☆参考 sisam シサㇺ《自分のそば》とはアクセントが違う。 {E: the Ainu term for the Japanese.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
sisam 2
シサㇺ 【位名】[si-sam 自分・のそば] 自分のそば。 sisam tátatata シサㇺ タタタタ 彼は自分のそばをトントンたたいた。(S民話) a=yupíhi wenno wenno koonkami híne oraun sisam un osura tek アユピヒ ウェンノ ウェンノ コオンカミ ヒネ オラウン シサㇺ ウン オスラ テㇰ (私の)兄はおおざっぱに拝礼してそれからそれを自分のそばにポンと投げるように置いた。(NK民話) ☆参考 sísam シサㇺ《和人》とはアクセントが違う。 {E: near, beside one.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
húresisam
フレシサㇺ 【名】[húre-sísam 赤い・異民族] 白人。 ☆参考 髪の毛が赤いから。(W) ☆参考 repunkur レプンクㇽ 外国人。 ☞sísam シサㇺ {E: a Caucasian.} (出典:田村、方言:沙流)
huresisam
フレシサㇺ 【hure-sisam】 外国人,白人:赤い隣人,髪の毛の赤い人. (出典:萱野、方言:沙流)
ikka-sísam
イッカシサㇺ 【名】[ikka-sísam 盗む・和人] どろぼう(追いはぎも強盗も)。(S) (出典:田村、方言:沙流)
imemke-sísam
イメㇺケシサㇺ 【名】[imemke-sísam 散髪する・和人] 床屋(店ではなく人)。 ☆参考 isapakar-sísam イサパカㇻシサㇺ とも言う。 ☆参考 isapakarusi イサパカルシ 床屋(の店)。 {E: a barber.} (出典:田村、方言:沙流)
isapakar-sísam
イサパカㇻシサㇺ 【名】[i-sapa-kar-sisam 人の・頭・を整える・日本人] 床屋(店ではなく人)。 ☆参考 imemke-sísam イメㇺケシサㇺ とも言う。 {E: a barber.} (出典:田村、方言:沙流)
sísam mosir/Sísam mosir
シサㇺ モシㇼ 【名】[和人・国] 和人の国(多くの場合、 本州以南を指す。 北海道の中で交易相手の和人の住んでいた地方を指すこともある)。 ☞sísam シサㇺ {E: Honshu; the land, country of the “Wajin”(Japanese).} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
sisam'itak
シサㇺイタㇰ 【sisam itak】 日本語,日本の言葉. (出典:萱野、方言:沙流)
sisam'utar
シサㇺウタㇻ 【sisam-utar】 和人,日本人.▷シ=私 サㇺ=側,近く ウタㇻ=仲間,隣人 (出典:萱野、方言:沙流)
sisamampe
シサマンペ §043 アブラガレイ (5) sisamampe (si-sa-mam-pe)「シサマンペ」 ⦅美幌、網走⦆ (出典:知里動物編、方言:)
sisamampe
シサマンペ §055 マツカワ (1) si-samampe (sí-sa-mam-pe)「しサマンペ」[si(本当の)samampe(カレイ)] 成魚 ⦅長万部、幌別、白老⦆ (出典:知里動物編、方言:)
sisamitak
シサミタㇰ →シサㇺイタㇰ →シサㇺイタㇰ (出典:萱野、方言:沙流)
sisamkere
シサㇺケレ §390.死ぬ死ぬと言うsisamkere〔ši-sám-ke-re シさㇺケレ〕[<si(自分を)+isam(無く)+ki(する)+re(させる)]⦅ホロべツ⦆ (出典:知里人間編I、方言:)
sisammosir
シサンモシㇼ 【sisam-mosir】 日本国:津軽海峡から西の方. (出典:萱野、方言:沙流)
sisamuttap
シサㇺウッタㇷ゚ §010 ガンギエイ;かすべ (5) sisam-uttap (si-sam-ut-tap)「シサㇺウッタㇷ゚」 ⦅白老⦆ (出典:知里動物編、方言:)
sisamuttap
シサㇺウッタㇷ゚ §011 メガネカスベ(マカスベ) (1) sisam-uttap (sí-sam-ut-tap)「しサㇺウッタㇷ゚」[<日本人・えい] ⦅浦河⦆ (出典:知里動物編、方言:)
uresisamcir
フレシサㇺチㇼ §385 (その他の鳥名)  huresisam-cir (hú-re-si-sam-čir)「ふレシサㇺチㇼ」[<‘紅毛人・鳥’] ⦅藻汐草⦆ツバメのごとくして眉毛長くたれる。 (出典:知里動物編、方言:)
weysisam
ウェイシサㇺ 【名】[wen-sísam 貧しい・和人] 貧乏和人、 貧しい和人。 te ta weysisam an aw ta weysisam an テ タ ウェイシサㇺ アン アウ タ ウェイシサㇺ アン うちの貧乏和人がいた、 となりの貧乏和人がいた。(K民話) ☆参考 短い民話の主人公としてよく登場する。 ☆参考 wenaynu ウェナイヌ は悪人、 悪党。 wenkur ウェンクル は貧しい人。 {E: a poor Japanese.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
a= 10
ア 【人接】[不定人称主格他動詞型] ①[一般称]一般に人は/人が、 (特定の人ではなく)だれかが/だれでもが。 sekor a=ye セコㇿ アイェ …と(一般に人が)言う=言われる。 húresisam mosir sekor a=ye p ne wa フレシサㇺ モシㇼ セコㇿ アイェㇷ゚ ネ ワ (外国のことは)赤毛の異民族の国と(一般に人は)言うのだわ。(W) ②[受身]…される。 a=en=kopisi アエンコピシ (不定の)人が私にたずねる=私がたずねられる。 a=en=kopisi p anakne opitta ku=ye wa アエンコピシㇷ゚ アナㇰネ オピッタ クイェ ワ 私がたずねられることはすべて私は言って(=答えて)。(S会話) kamuy opitta oro wa a=i=koypak カムイ オピッタ オロ ワ アイコイパㇰ 私たちはすべての神々からとがめられる(罰を受ける)。(W民話) kotan a=arústekka コタン アアルㇱテッカ 村が全滅させられた。(NK民話) ③[包括的一人称複数]相手を含む私たちが/の。 tanto a=ewkoytak pe anak a=ewéraman hawe ne タント アエウコイタㇰ ペ アナㇰ アエウェラマン ハウェ ネ きょう私たち(あなたと私)が話し合ったことはお互いに(あなたと私が)わかり合った。(W会話) a=sikíhi un アシキヒ ウン 私たち(あなたも私もみんな)の目よ。(W会話) ④[引用文中の自称] 自分(たち)が/の、 私(たち)が/の。 “…a=e=ráyke kusu ne” sekor hawean 「…アエライケ クス ネ」セコㇿ ハウェアン 「…私はあなたを殺す」と彼は言った。(HK民話) ⑤[敬意の二人称] あなた様が/の。 mak yaynu=an kuni a=ramú kusu マㇰ ヤイヌアン クニ アラム クス 私がどんな気持ちになるとあなたはお思いになって…。(NK民話) ☆参考 他動詞・デアル動詞 ne ネ《である》・名詞などに接頭する。 自動詞にはこれがつかず、 =an アン が接尾する。 ☞=an アン ☆参考 ユーカラ(英雄叙事詩)を歌うときには、 母音で始まる動詞語幹の前で、 しばしば a= ア の代わりに an= アン の形が使われる。 北海道南部以外では、 日常語でも an= アン がたくさん使われる。 ☞an= アン {E: ①… ②passive. ③first person plural inclusive. ④… ⑤second person honorific.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
aynu
アイヌ 【名】①人間(神や動物などに対して)。 aynu kotan アイヌ コタン 人間の集落、 アイヌの村。 aynu mosir アイヌ モシㇼ 人間界(神の国に対する)。 ②男(menoko メノコ《女》に対して)。 ③アイヌ(民族名、 sísam シサㇺ《和人》など に対して)。 aynu itak アイヌ イタㇰ アイヌ語。 aynu mosir アイヌ モシㇼ アイヌの国/地 (多く、 北海道を指す)。 aynu cip アイヌ チㇷ゚( 直訳すると)アイヌの舟=丸木舟。 ④(kor コㇿ《…の》のあとに置かれて)おとうさん、 おとうちゃん。 e=kor aynu uymam wa/uymam-repunka エコㇿ アイヌ ウイマㇺ ワ/ウイマㇺレプンカ あなたのとうさんは交易に行って/交易をしに海を越えて行った。(S子守歌) a=kor totto/henoo uwan/pepa=kor aynu/wakka i=kure アコッ トット/ヘノオ ウワオ/ペパコㇿ アイヌ ワッカ イクレ おかあちゃん、 おとうちゃん、 水をください。(W神謡K) ☆参考 用例の子守歌の歌い手のサダモさんは、 父親のことを言うのに、 ふだんは iyapo イヤポ を使い、 「あなたのおとうさん」は e=kor iyapo エコㇿ イヤポ と言う。 神謡の歌い手ワテケさんは、 ふだんは míci ミチ を使い、 「私のおとうさん」は ku=mici クミチ と言う。 {E: ①a human-being. ②a man. ③an Ainu. ④a father.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
aynu mosir
アイヌ モシㇼ 【名】[人間/アイヌ・国] ①(神の国に対して) 人間の国。 ②(sísam mosir シサㇺ モシㇼ に対して) アイヌの国(多くの場合北海道を指す)。 ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ekira
エキラ 【他動】[e-kira …と一緒に・逃げる]…と一緒に逃げる、 …を連れて(取って、 持って)逃げる、 …を持ち去る。 pon matkaci ikka-sisam ekira ポン マッカチ イッカシサㇺ エキラ 少女をどろぼうが連れて逃げた。(W) {E: to run away, flee with…} (出典:田村、方言:沙流)
erampokiwen
エランポキウェン 【他動】[e-ram-poki-wen …で・心・その下・悪い] …を憐れむ、 …をかわいそうに思う。 …sekor kesto ci=ye a ci=ye a kor, os k=érampokiwen …セコㇿ ケㇱト チイェ ア チイェ ア コㇿ、 オㇱ ケランポキウェン …と毎日私たちは言っていて、 その後になって私は(坊やが)かわいそうになった。(W独話) pirka kewtum kor pon weysisam anakne kamuy erampokiwen wa nispa ne ピㇼカ ケウトゥㇺ コㇿ ポン ウェイシサㇺ アナㇰネ カムイ エランポキウェン マ ニㇱパ ネ 気だてのよい小さな貧乏和人は神が憐れんでくれて裕福になった。(S民話) ☆参考 erampokwen エランポㇰウェン とも言う。 {E: to pity, feel sorry for…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
eus
エウㇱ 【他動】[e-us その頭・につく] 頭が…に届く、 …の上の方についている。(S) sine pon weysisam an híne síran pe ne hike, tu sapa eus wa シネ ポン ウェイシサㇺ アン ヒネ シラン ペ ネ ヒケ、 トゥ サパ エウㇱ ワ 一人の小さい貧乏和人がいたのだが、 彼には二つの頭が(体の上の方に)ついていて。(S民話) nis or eus kane poro ape a=ari híne ニソㇿ エウㇱ カネ ポロ アペ アアリ ヒネ 私は空にとどくほど大きな火をたいて。(HC民話) ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
eyayekatkor
エヤイェカッコㇿ 【他動】[e-yay-e-kat-kor …で・自分・で・やり方・を持つ]…がくせに/習慣になる。 kesto an kor a=kor itak patek ku=ye p ne kusu k=孜ayekatkor wa sísam itak ku=ye kusu ne hike ka a=kor itak ku=ye hawe un ケㇱト アン コㇿ アコリタㇰ パテㇰ クイェㇷ゚ ネ クス ケヤイェカッコㇿ ワ シサミタㇰ クイェ クス ネ ヒケ カ アコリタㇰ クイェ ハウェ ウン 毎日私たちの言葉(アイヌ語)ばかりしゃべるものだからくせになって日本語をしゃべろうとしてもアイヌ語をしゃべってしまうのよ。(S) ☆参考 eramus エラムㇱ 慣れる。 {E: for something to become a habit.} (出典:田村、方言:沙流)
eykasuy
エイカスイ 【他動】[e-i-kasuy …のことで・人・の手伝いをする] …(を)する手伝いをする。(しばしば動詞句のあとで助動詞的に使われる。) néa sísam nispa a=koyántone híne hekattar utar a=omáp kor a=respa eykasuy kor án=an ネア シサッㇺ ニㇱパ アコヤントネ ヒネ ヘカッタㇻ ウタㇻ アオマㇷ゚ コㇿ アレㇱパ エイカスイ コㇿ アナン 私はその和人のだんなの所に置いてもらって、 子どもたちをかわいがって育てるのを手伝って暮らしていた。(W民話) {E: to help someone to…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
hon
ホン 【名】[概](所は honi ホニ, honihi ホニヒ) 腹、 おなか、 腹部一帯。 hon ne kor pe/totta kunne/sisamomare ホン ネ コㇿ ペ/トッタ クンネ/シサモマレ (直訳すると)おなかとして持っているものを大袋のように自分のそばに置く=(食べて食べて食べて)おなかが大袋みたいに体から離れたみたいにふくれます。(Sユーカラ) ☆参考 honkor ホンコㇿ 妊娠する。 {E: the belly; the stomach; the abdomen.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ikkakur
イッカクㇽ 【名】[ikka-kur 盗む・人] どろぼう(=ikka-sísam イッカシサㇺ)。 ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ikkap
イッカㇷ゚ 【名】[ikka-p 盗む・やつ] どろぼう(追いはぎも強盗も)(=ikka-sísam イッカシサㇺ)。(S) {E: a thief; robber.} (出典:田村、方言:沙流)
itak 2
イタㇰ 【名】①言葉。 itak ipehe イタㇰ イペヘ/イタキペヘ ☞itakipehe イタキペヘ。 anun itak アヌン イタㇰ/アヌニタㇰ よその(他地方の)言葉。 aynu itak アイヌ イタㇰ アイヌ語。 sísam itak シサㇺ イタㇰ/シサミタㇰ 日本語。 a=kor itak アコリタㇰ 私たち(あなたも私も)の言葉(アイヌ民族同士で言うときアイヌ語を指す)。 ci=kor itak チコリタㇰ(あなたのではなく)私たちの言葉(他民族、 たとえば和人に言う場合にアイヌ語を指す)。 ②(動詞句のあとで) tuyka itak omare トゥイカ イタㇰ オマレ [雅](直訳すると)…の上に言葉をのせる=…しながら言葉を言う。(☞itako イタコ) {E: words.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
kane 2
カネ 【助動/接助/副助】(意外、 予想以上、 誇張の表現に多く使われる)。 ①[助動](なんと)…している。 ponpon kane ayne tane us wa isam ポンポン カネ アイネ タネ ウㇱ ワ イサㇺ だんだん小さくなってとうとう消えてしまった。(S) íne urepet kor kane p ne noyne イネ ウレペッ コㇿ カネㇷ゚ ネ ノイネ 四本指を持っているもの(ばけもの熊)であるらしく。 ②[接助](なんと)…して、 …したままで、 …するほど。 sinu kane reye kane ahup シヌ カネ レイェ カネ アフㇷ゚ 彼らはひざをついて身をずらしはって家の中へ入った(遠慮して身を低くして入る様子)。 mérayke wa hecururu kane an メライケ ワ ヘチュルル カネ アン 寒いので首をちぢめている。(S) suwop or k=ómare kikir mak iki ayne etuk kane iki kor an スウオㇷ゚ オㇿ コマレ キキㇼ マㇰ イキ アイネ エトゥㇰ カネ イキ コラン 箱に入れておいた虫どうやって出てきたのだろう。 ku=sanpe ka wen kane a=utári k=ésikarun クサンペ カ ウェン カネ アウタリ ケシカルン 気持ちも暗くなるほどに身内の者に会いたい。(S) ③[副助](慣用表現の中で、 副詞句の後に置かれて)néno kane an ネノ カネ アン …とそっくりだ。 sísam nisu a=kutkore ruwe néno kane an シサㇺ ニス アクッコレ ルウェ ネノ カネ アン 日本の臼に帯をしめさせたのみたいだ。 (néno an ネノ アン は《…に似ている》。) sekor kane セコㇿ カネ …というふうに(言った)(sekor セコㇿ《と(言った)》だけよりもちょっとした強めのニュアンスが加わる)。 ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
kik(i) kar
キㇰ/キキ カㇻ 【連他動】[防御・をする]…を防ぎ守る。 kotan kik kar コタン キㇰ カㇻ 村/国を防ぎ守る。 a=kor mosir kiki a=kar easkay アコㇿ モシㇼ キキ アカㇻ エアㇱカイ 私たちの国を防ぎ守ることができる。 “a=kor mosir epitta oka aynu hene sísam hene tumi or un a=nisúk yak easir mosir kik kar kotan kik kar a=eáskay oasi na” sekor 「アコㇿ モシレピッタ オカ アイヌ ヘネ シサㇺ ヘネ トゥミ オルン アニスㇰ ヤㇰ エアシㇼ モシㇼ キㇰ カㇻ コタン キㇰ カㇻ アエアㇱカイ オアシ ナ」 セコㇿ 「わが国じゅうのアイヌも和人も皆戦争に頼まれて行かなければ私たちは国土を守り国を守ることはできないよ」と…。(W会話) {E: to defend, protect…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
koraci
コラチ 【後副】…のように、 …そっくりに、 まるで…みたいに(「…といっしょ」)。 upas koraci retanno iro ウパㇱ コラチ レタンノ イロ 雪のようにまっ白い色。 réra koraci iki ikkasisam レラ コラチ イキ イッカシサㇺ 風のように行動するどろぼう(和人の昔話の一つ)。(W) hńta kusu somo e=ye no e=kor wa e=arpa? ikka koraci フンタ クス ソモ エイェ ノ エコㇿ ワ エアㇻパ? イッカ コラチ なぜ言わないで持って行くの、 どろぼうみたいに。(S) an koraci アン コラチ ありのままに。 eani ta an koraci e=ye hawe ne wa エアニ タ アン コラチ エイェ ハウェ ネ ワ あなたこそ本当のことを言っているんだなあ。 ☆参考 néno ネノ …に似て。 そのほかに似た意味・用法の後置副詞は ☞sirine シリネ、 kunne クンネ ☆参考 pekor ペコㇿ、 ápekor アペコㇿ、 kotom コトㇺ、 noyne ノイネ は接続助詞、 動詞のあとに置かれる。 sikopayar シコパヤㇻ は他動詞《…にそっくりである》。 {E: as, like…; just like…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
korpa
コㇿパ 【他動】[複](kor コㇿ は単複の区別なし) (二人以上が/二つ以上を)…を持つ。 tane utar anakne tane sísam puri patek tono puri patek korpa kusu タネ ウタㇻ アナㇰネ タネ シサㇺ プリ パテㇰ トノ プリ パテㇰ コㇿパ クス 今の人々は今は和人の習慣ばかり殿(和人男子の尊称)の習慣ばかり持っているから。(S会話) onaha korpa p opitta オナハ コㇿパㇷ゚ オピッタ 彼の父親が持っていたもの全部。(W民話) {E: to have… (pl.).} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
koykesuy
コイケスイ 【他動】[ko-ikesuy …に向かって・怒って行ってしまう] [雅]怒ってとびだして…に行く。 sísam mosir/tono mosir/mosir noskike/koykesuy ruwe/ne wa síran awa シサㇺ モシㇼ/トノ モシㇼ/モシン ノㇱキケ/コイケスイ ルウェ/ネ ワ シラン アワ [雅](奥方は)怒って家をとびだして和人の島、 殿の島、 島の中央に逃げて行ったのだったが。(W神謡語り) {E: to rush out in anger to go to …} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
mosir
モシㇼ 【名】[< mo-sir 小さい(?)/静かな・地]国土、 島、 地(広い範囲の大きなまとまった土地を言う。 一つの国を指すこともあり、 広く世界全体を指すこともある。 神の国、 人間の国等の「国」をも指し、 また、 せまく言うときは、 一つの島、 一つの地方を指すこともある。 kotan コタン が人の集まって住んでいる所、 つまり村や集落、 あるいは村々の集まり(地域)等を表すのに対し、 mosir モシㇼ は、 人が住んでいても住んでいなくても言う)。 a=kor mosir アコㇿ モシㇼ 私たちの国土(北海道を指すこともあり、 日本を指すこともある)。 aynu mosir アイヌ モシㇼ (神の国に対して)人間の国、 (sísam mosir シサㇺ モシㇼ に対して)アイヌの国(多くの場合北海道を指す)。 kamuy mosir カムイ モシㇼ 神の国、 天国。 kanna mosir カンナ モシㇼ 天の国(=神の国)。 repun mosir レプン モシㇼ 沖の島=海外(本州等も外国も含む)。 samor mosir サモㇿ モシㇼ 本州。 sísam mosir シサㇺ モシㇼ 和人の国(多くの場合、 本州以南を指す。 また北海道の中で交易相手の和人の住んでいた地方を指すこともある)。 mosir hoppa モシㇼ ホッパ (=mosiroppa モシロッパ)世を去る、 (身分のある人や敬われている人などが)亡くなる。 ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ocekocen
オチェコチェン 【自動】[語構成も語源も不明] 極端に背丈が低い。 iyohay toan sísam ocekocen ruwe! イヨハイ トアン シサㇺ オチェコチェン ルウェ! まあ、 あの人(和人)二、 三尺しかないねえ。(S) {E: to be extremely short (in height).} (出典:田村、方言:沙流)
ocinakkari
オチナッカリ 【名】[o-cin-akkari その尻・足・を通り越す][隠]和人。 ☆参考 「sísam シサㇺ と言えば人にわかるからわからないように言う。 もともと、 自分らを踏みつけるやつら、 こいつらのために自分たちがこんなみじめにされたのだ、 という気持ちの憎い言葉。」 (S) {E: “Wajin”; a Japanese.} (出典:田村、方言:沙流)
opaye
オパイェ 【他動】[複](単は oarpa オアㇻパ)[o-paye …に・行く[複]](二人以上が)…に行く。 toop sísam kotan opaye hike opaye wa トオㇷ゚ シサㇺ コタン オパイェ ヒケ オパイェ ワ ずうっと遠く和人の国(「内地」)の方に行く人は行って。(S言い伝え) {E: to go to…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
or
オㇿ 【位名】[概](所は oro/orke オロ/オㇿケ) ①(モノを表す名詞の後に置かれて、 そのモノを場所としてとらえる名詞句とする。 場所や時を表す名詞の後に置かれると、 よりはっきりとその場所、 その時を示す。 目的語として位置を表す名詞句を要求する語、 たとえば位置格助詞 ta タ《…に/で》、 un ウン《…へ》など、 動詞の接頭辞 o- オ《…に/で》など、 他動詞 kus クㇱ《…を通る》、 oma オマ《…に入る/位置する》などの前で多く使われる。) …の所、 …のとき。 (その他、 文脈によって…の中、 …の家、 …の上などいろいろに訳せる。)sapa or o ki サパ オㇿ オ キ 頭につくシラミ。 mesi itanki or a=o kor メシ イタンキ オㇿ アオ コㇿ ごはんを茶わんによそうと。(W会話) poro su or oma sayo ポロ ス オㇿ オマ サヨ 大鍋に入っているおかゆ。(W民話) apa or pak k=arpa korka アパ オㇿ パㇰ カㇻパ コㇿカ 私は戸口の所まで行ったけれど。(W) nis or péka hopuni ニソㇿ ペカ ホプニ 空を飛んだ。(S民話) toy or ta nepki kor an トヨッタ ネㇷ゚キ コラン (彼は)畑で働いている。 suy or osma スヨㇿ オㇱマ 穴に飛び込んだ(落ちた)。(S) iteki en=or ta ahup yan イテキ エノッ タ アフㇷ゚ ヤン 私の家に入らないで下さい。(S) kesikomu sekor sísam or ta a=ye ケシコム セコㇿ シサㇺ オッタ アイェ 消しゴムと日本語で言う。 kanto or un rikin カント オルン リキン 天に昇る。(S言い伝え) atuy or un cikap アトゥヨルン チカㇷ゚ 海の鳥。(W民話) nis or wa ran ニソㇿ ワ ラン 空から降りて来た。(W民話) ②…or ta …or ta …オッタ …オッタ ☞otta オッタ 2。 or wa オㇿ ワ (受け身表現の行為者、 oro wa オロ ワ とも言う。)…によって。 kamuy or wa ene a=e=yáynure カムイ オㇿ ワ エネ アエヤイヌレ あなたは神からそう思わされた。(W民話) ☆参考 所属形は oro オロ の例が圧倒的で、 orke オㇿケ は1例のみ。 orke オㇿケ には別の用法がある。 {E: ①from… ②by…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
oyasi
オヤシ 【名】(人を表す名詞の後に置かれて) …の野郎、 …の畜生(「人間のうんと悪いやつのこと、 にくたらしくて言う」)。(S) sísam oyasi シサㇺ オヤシ 和人の畜生。(S) aynu oyasi アイヌ オヤシ アイヌ野郎。(S) ☆参考 ikkap oyasi イッカㇷ゚ オヤシ などとは言わない。 「どろぼうもそのほかも含めて言うのだから。」 (S) taan oyasi タアン オアシ などとも言わない。(S) ☆参考 樺太ライチシカ方言の藤山ハル氏はおばけを oyasi オヤシ と言う。 (出典:田村、方言:沙流)
oykesuy
オイケスイ 【他動】[o-ikesuy …に・怒って立ち去る] 怒ってとび出して/立ち去って…へ行く。 sísam mosir/tono mosir/mosir noskike/a=oykesuy híne/arpa=an wa シサㇺ モシㇼ/トノ モシㇼ/モシン ノㇱキケ/アオイケスイ ヒネ/アㇻパアン マ 和人の島、 殿の島、 島の中央に私は逃げて行って。(W神謡語り) {E: to leave in anger for…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
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ㇷ゚ 【形名】(=pe ペ)(母音の後では p ㇷ゚、 子音の後および言い始めでは pe ペ。) ①[被修飾名]…もの、 者、 やつ(多くの場合モノや動物。 人間の場合は主に子どもや女性を指し、 大人の男子の場合は低く見た言い方)。 retar seta ukoykire p レタㇻ セタ ウコイキレㇷ゚ 白い犬をけんかさせるもの(なぞなぞで、 答えは mimaki ミマキ 歯)。(S) soy ta arki p ソイ タ アㇻキㇷ゚ 門口に来た者(=人)。 ②[被修飾名]…こと(ことがら)。 ye p koraci イェㇷ゚ コラチ 彼が言ったことのとおりに(=彼の言ったとおり)。 ③[名詞化辞]…の。 …p ne …ㇷ゚ ネ …のだ。 Piratur ta nupur ekasi an hi a=nu p ne a hi kusu ピラトゥッ タ ヌプレカシ アニ アヌㇷ゚ ネ ア ヒ クス 平取に霊力のある(占いやまじないのできる)老人がいることを聞いたのだったから(=聞いていたから)。(NK民話) …p ne …ㇷ゚ ネ …するものだ(説明/教え/さとし)。 néno eci=ikí p ne na ネノ エチイキㇷ゚ ネ ナ (あなたがた)そうするのだよ(=そうしなさいね)。(KK民話) …p ne kusu …ㇷ゚ ネ クス …する/したものだから、 …ので。 sisam tátatata p ne kusu シサㇺ タタタタㇷ゚ ネ クス (彼が)自分のそばをトントンたたいたので。(S民話) …kuni p ne …クニㇷ゚ ネ …することになっている/する(べき)ものだ(予定/教え/予言/言いつけ)。 yam o saranip/e=se kane wa/e=yan kuni p/ne ruwe ne na ヤモ サラニㇷ゚/エセ カネ ワ/エヤン クニㇷ゚/ネ ルウェ ネ ナ (あなたは)栗の入った背負い袋を背負って国へ帰るのですよ。(W神謡語り) ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
po 2
ポ 【副】なおいっそう。 sísam mosir ta po poronno a=etóyta シサㇺ モシッ タ ポ ポロンノ アエトイタ 和人の土地ではなおいっそうたくさん栽培していた。 na ponno rumatek tek hi ne yak po pirka p ナ ポンノ ルマテㇰ テㇰ ヒ ネ ヤㇰ ポ ピㇼカㇷ゚ もう少しぼうっとした色だとなおよかったのに。 po hene ポ ヘネ なおいっそう。 ésir ne hike ka pirka a korka ta po hene pirka エシン ネ ヒケ カ ピㇼカ ア コㇿカ タ ポ ヘネ ピㇼカ さっきのもよかったけれどこれはなおさらいい。(S) {E: still more.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
puri
プリ 【名】[概/所][< 日本語ふり(?)] 習慣、 慣習(「ふりあい」)、 やり方、 くせ、 行状。 aynu puri アイヌ プリ アイヌ風のやり方、 アイヌ民族の伝統的な習慣。 sísam puri シサㇺ プリ 和人の習慣/やり方。 {E: habits; customs; ways.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
réko
レコ 【他動】[re-ko 名前・(?)] …に名をつける、 …を…と(いう名で)呼ぶ、 …の名を言う。 aynu réko sinre patek oka ruwe ne アイヌ レコ シンレ パテㇰ オカ ルウェ ネ アイヌが名づけた地名ばかりがあるのです。(S言い伝え) semekatki kotan a=reko セメカッキ コタン アレコ 私はとんでもない村の名前を言った。(S民話) páseni sísam or ta a=reko katu aotamo パセニ シサㇺ オッタ アレコ カトゥ アオタモ パセニは日本人のところで名付けるしかたはアオダモ=日本語ではアオダモと言う。(W) kunneywa an kor hecirasa, tókap an kor ukocupke wa hemuymuye wa an nonno sísam or ta a=reko hi asagao sekor a=reko クンネイワ アン コㇿ ヘチラサ、 トカㇷ゚ アン コㇿ ウコチュㇷ゚ケ ワ ヘムイムイェ ワ アン ノンノ シサㇺ オッタ アレコ ヒ アサガオ セコㇿ アレコ 毎日朝になると開き、 昼になるとしぼんでしまう花を日本語ではアサガオと言う。(S) {E: to name, call…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
sumiyaki
スミヤキ 【名】[日本語] 炭焼き。 sumiyaki sísam スミヤキ シサㇺ 炭焼きの人(和人)。 {E: charcoal making; charcoal burner.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ta 4
タ 【格助】①(空間的・時間的位置を示す副詞句をつくる。)…に、 …で。 Piratur ta ピラトゥッ タ 平取に/で。 a=kor mosir ta a=kar easkay アコㇿ モシッタ アカㇻ エアㇱカイ わが国でつくれる。(S) kotan eepak ta en=etunankar コタン エエパㇰ タ エネトゥナンカㇻ (彼は私に)部落のはずれで出会った。(S) ta a=kotanu ta ka oka タ アコタヌ タ カ オカ ほらここに、 私たちの村(地域)にもある。(W会話) te ta テ タ ここに/ここで。 taan ta タアン タ ☞taanta タアンタ uweepak ta ウウェエパㇰ タ ☞uweepakta ウウェエパㇰ sine an ta シネ アン タ ☞sineanta シネアンタ sine an pe ta シネ アン ペ タ あるとき。 sine an pa ta シネ アン パ タ ある年。 hi ta ヒ タ …したときに。 ②(連体的に使われて) te ta X húci テ タ X フチ ここのXおばあちゃま(特定のフチの場合に言う。 一般的に言う場合は te un húci テ ウン フチ と言う(☞un ウン)。(S) te ta poysisam テ タ ポイシサㇺ ここの(うちの)小さい和人。(S民話) aw ta pon weysisam アウ タ ポウ ウェイシサㇺ となりの小さい貧乏和人。(S民話) {E: locative in space and time: in, at etc.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
tátatata
タタタタ 【他動】[tata-tata トントンたたく(擬音の重複)・(重複)] ①…をトントントントンたたく。 sisam tatatata シサㇺ タタタタ 彼は自分のそばをトントンたたいた。 ②(魚や肉)をたたいて細かくする。 {E: ①to beat, strike… ②to beat, chop, grind (meat, fish) finely.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
totta
トッタ 【名】大袋、 米俵二つくらいの大きい saranip サラニㇷ゚。 totta or eci=omáre na トッタ オㇿ エチオマレ ナ 大袋に入れるよ(子どもがあまり泣くとこう言う)。(S) hon ne kor pe/totta kunne/sisam omare ホン ネ コㇿ ペ/トッタ クンネ/シサモマレ [雅]おなかが大袋みたいに体から離れたみたいにふくれます。(Sユーカラ) ☆参考 主にユーカラで使う言葉。 通常は poro-saranip ポロサラニㇷ゚《大袋》、 ica-saranip イチャサラニㇷ゚《穂摘み袋》と言う。 ☆参考 かますは kamasu カマス。 totta トッタ はかますより大きい。 ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
toytapa
トイタパ 【自動】[複][toy-ta-pa 地/畑・を掘る・(複)](toyta トイタ は単複の区別なし)(二人以上が皆)畑を耕す、 農耕する。 toytapa sísam utar トイタパ シサㇺ ウタㇻ 畑を耕す和人たち=和人の農夫たち。(S民話) {E: to farm, cultivate a field (pl.).} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
ukoirsimne
ウコイㇼシㇺネ 【自動】[u-ko-ir-sim-ne 互い・に対して・一まとまり・(?)・である] どっちが頭か尻かわからないようにぶかっこうだ。 ukoirsimne sísam nisu a=kutkore ruwe néno kane an ウコイㇼシㇺネ シサㇺ ニス アクッコレ ルウェ ネノ カネ アン ぶかっこうで和人の臼に帯をしめさせたのみたいだ。(S) (出典:田村、方言:沙流)
úsey
ウセイ 【名】[< úse-i それだけの・もの](?) (飲用にわかした)お湯、 白湯(さゆ)。 úsey kar ウセイ カㇻ お湯をわかす(煎じ湯をつくることも)。 úsey páha ウセイ パハ 湯気。 úsey sések ウセイ セセㇰ お湯が熱い、 お湯がわく。 sísam úsey シサㇺ ウセイ 和人のお湯(お茶を白湯と区別して呼ぶ表現の一つ、 「お茶」の訳語として出た)。 kina úsey キナ ウセイ 野草の湯(お茶を白湯と区別して呼ぶ表現の一つ)。 úsey-ku-itanki ウセイクイタンキ 湯のみぢゃわん。(S) úsey ani k=éwonne ウセイ アニ ケウォンネ お湯で顔を洗う。 ☆参考 お茶を呼ぶにもこの語を使う。 最後の用例のように洗面用にわかしたお湯にも言うことがあるが、 おふろのお湯のことにも言わない、 水が自然と温まったものにも言わない。 そのようなお湯は sések wakka セセㇰ ワッカ 熱い水。 {E: hot water (for drinking purposes, not bath water).} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
utari(hi)
ウタリ(ヒ) 【名】[所](概は utar ウタㇻ 人々)…の同族の人々、 …の村人たち、 …の仲間たち/連れになっているグループ/組。 k=útarihi menoko utar turano tun ren ci=ne híne タント クタリヒ メノコ ウタㇻ トゥラノ トゥン レン チネ ヒネ 今日は私の同族(アイヌ民族)の人たち、 女性たちと一緒に二、 三人で。(W独話) a=utári ka sísam ka ikopoyke wa アウタリ カ シサㇺ カ イコポイケ ワ 私たちの同族(アイヌ民族)も和人もまじって (S会話) e=se wa e=arpa wa é=utari e=ere yakun é=utari opitta ray kusu ne aan pe エセ ワ エアㇻパ ワ エウタリ エエレ ヤクン エウタリ オピッタ ライ クス ネ アアン ペ あなたが(この魚を)背負って行って(=持って帰って)あなたの村の人たちに食べさせたらあなたの村の人たちはみんな死んでしまうところだったが。(NK民話) eci=utári hosippa ruwe somo ne? エチウタリ ホシッパ ルウェ ソモ ネ? あなたたちの組/仲間は皆帰ったのではないのか。(S) ☆参考 アイヌ民族を指す呼称として「ウタリ」というのは、 アイヌ語で言うときは k=útari(hi) クタリ(ヒ)《私の同族》、 a=útari(hi) アウタリ(ヒ)《私たちの同族》のように人称形で言う言葉である。 {E: of the same tribe, family, village group etc. of…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
uworkopoyke
ウウォㇿコポイケ 【自動】[u-w-or-kopoyke 互い・(挿入音)・の所・にまじる] 互いの中に入りまじる、 まぜこぜになる。 aynu ne ciki sísam ne ciki repunkur, sonno repunkur ne ciki uworkopoyke wa mosir epitta siyusacari アイヌ ネ チキ シサㇺ ネ チキ レプンクㇽ、 ソンノ レプンクンネ チキ ウウォㇿコポイケ ワ モシレピッタ シユサチャリ アイヌも和人(日本人)も外国人、 本当の外国人も入りまじって国じゅうに散らばった。(S言い伝え) ☆参考 ukopoyke ウコポイケ はただ《まざる、 (まぜたものが)まざって均質になる》。 {E: to become mixed.} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
wen 1
ウェン 【自動】①悪い、 粗末である、 だめである、 だめになる。 wen cise ウェン チセ 粗末な家。 wen itak ウェン イタㇰ(発音は ウェヌ イタㇰ)悪い言葉。 wen kewtum ウェン ケウトゥㇺ 悪い心/根性。 wen kamuy ウェン カムイ ☞wenkamuy ウェンカムイ。 kewtumu wen ケウトゥム ウェン 心/気立て/根性が悪い。 …yak wen …ヤㇰ ウェン …するといけない。 …yakka wen …ヤッカ ウェン …してもだめである(効果がない)。 …tú ray wen ray ki トゥ ライ ウェン ライ キ ひどい死に方で死んでしまった(川上男と川下男の民話の結末によく出てくる表現)。(S民話) sir-wen シㇼウェン(発音は シㇽウェン)天気が悪い。 ②亡くなる(婉曲表現)。 wen oruspe ek ウェノルㇱペ エㇰ 死んだという便りが来た。(S) wen nisa ruwe ne sekor haw as ウェン ニサ ルウェ ネ セコㇿ ハワㇱ いけなかった(=もう死んだ)という話だ。 (注 「捨てことば(ぞんざいな言葉)ではない。」 (S) ☆参考 直接的に「死ぬ」という語は ray ライ、 ほかに婉曲表現として isam イサㇺ《亡くなる》、 mosiroppa モシロッパ《世を去る》など。) ③[自動詞語根](限られた語の構成要素として)貧しい。 wenkur ウェンクㇽ 貧乏人。 weysisam ウェイシサㇺ[< wen-sisam]貧しい和人。 (注 wenaynu ウェナイヌ は《悪人、 悪党》。) (注 「貧しいおばあさん」は wenkur húci ウェンクㇽ フチ。) ☆対語 pirka ピㇼカ よい。 {E: ①to be, become bad, no good; ②to pass away; ③…} ⦅テープ⦆ (出典:田村、方言:沙流)
yaun
ヤウン 【連体】[ya-un 陸・の] 陸の、 北海道の。 yaun mosir ヤウン モシㇼ 陸の/この島の国(北海道を指す)。 yaun sísam ヤウン シサㇺ 北海道の和人。 {E: refers to Hokkaido.} (出典:田村、方言:沙流)