ヘッダーメニューここまで

ここからメインメニュー

  • 自然図鑑
  • アイヌ語辞典
  • アイヌの伝承
  • 物語や歌
  • 絵本と朗読
  • 語り部
  • スタッフ

メインメニューここまで

サイト内共通メニューここまで

自然図鑑 検索結果

日本語名:エゾヨモギ、オオヨモギ、ヤマヨモギ

アイヌ語名:ノヤ

利用:食用、薬用、祈り、生活用具

エゾヨモギ(オオヨモギ)

エゾヨモギ(オオヨモギ)

学名Artemisia montana  Pamp.
科名キク科
種類
種IDP0001

 キク科の多年草で、1〜2mに成長する大型のヨモギです。
 アイヌ文化では、食用(団子やかゆに入れるなど)のほか、薬用として葉をもんで傷薬に、煮汁を飲み薬にするなどします。またヨモギの茎や葉を鍋に入れて沸かし、病人がその湯気を浴びる温熱療法も行われます。
 日高地方には「オオヨモギはこの世で一番先に生えた植物」という伝承があり、清めの呪具としても使われ、当館の資料ではヘビに対する呪術行為がいくつか採録されています。口承文芸資料にも、おはらいの道具として使われる話があります。

エゾヨモギ(オオヨモギ)

エゾヨモギ(オオヨモギ)

アイヌ語辞典

植物編:植001(1)
アイヌ語名:ノヤ noya
語義:[“もみ草”の義]
地域・文献:⦅北海道、樺太⦆
区分:葉をいう

詳しく見る

アイヌの伝承

アイヌ語での呼び方:ノヤ
日本語の呼び方:ヨモギ
・ヨモギの葉とそば粉を混ぜたもちは、とてもやわらかくておいしいものでした。34132
・蛇に足をかまれて歩けなくなった時、ヨモギとショウブを火にくべ、その上にかまれた足をかざして煙にあてました。その後これらの野草をお湯で煮た汁を布にしみこませて傷につけておくと、翌日には歩くことができるようになりました。34141
・急性肺炎で熱が高いとき、立ち枯れているヨモギをとってきて鍋に入れて沸かし、煮立ったら鍋と患者の上に布団をかけて湯気を吸い込みました。すると熱はすぐに下がりました。34124,34178
・蛇や虫をむやみに殺してはなりませんが、いたずらをした蛇は頭にヨモギの茎を刺して殺し、もとの姿に戻るようにという意味の言葉を添えて祈りました。34182
→口承文芸資料「イヌエンジュの神に助けられた娘の話」34151、34180

詳しく見る

物語や歌など

イヌエンジュの神に助けられた娘の話
 私はイペッの川上の村に住む女の子で、両親はなく、兄が私を育てていました。兄に教えてもらった針仕事がずいぶん上達した頃、兄はこう言いました。「妹よ、うちの家はイペッの川上の村長の家系であり、イペッの中ほどにある村の村長の家の息子とおまえは、生まれたときからのいいなずけなのだよ。おまえはもう一人前になったのだから、そのいいなずけを訪ねていきなさい」。それを聞いて私は何か嫌な予感がしました。兄をひとり置いていくのも気がかりで気が進みませんでしたが、でもその日から兄は何度も私に出かけていくように勧め、私が結婚したら兄も寂しくなくなるのだからといわれ、ある日出かけることにしました。

 火の神様によく道中守ってくれるようにと祈り、自分の作った縫い物を荷物にして背負い、川を下っていきました。途中に砂浜があり、その真ん中には見たこともないような大きなイヌエンジュの木が立っていました。その木にさわりながら道中守ってくださいと祈っていると、木の陰から体の小さな、全身赤い色をした男がふいに現れました。私をつかまえようとするので、神に助けを求めながら木のまわりを回って逃げました。木の神の樹皮は男の攻撃でぼろぼろに裂けてしまい、ふと気がつくとその男は(人間ではない悪神だったようで?)木からぶら下がって動かなくなってしまいました。そこで泣きながら川下に走って逃げていくと、立派な家の庭にたどり着きました。

 助けを求めてイペッの中ほどの村長の家に行くと、すぐに入れてあげなさいという声がして、私は家に招き入れられました。今までのことを話すと、家の人たちは驚いて「あなたはうちの嫁なのだね。昔から夫婦になるはずの者同士がなかなか訪ねあわないでいると、仲を荒らす悪神が来るというのは聞いていたけれど、本当だったのだ」と言って、私の手を取って無事を喜んでくれました。そのうちにその家の息子がふたり山猟から帰ってきて、年上の息子が私のいいなずけであるらしく、家の主人は息子たちに今までのいきさつを話しました。

 翌日になると、息子たちはイヌエンジュのところまで出かけていき、帰ってくるとふたりは「木の神から巨大な赤マムシがぶら下がって死んでいたのだ。そのマムシをエゾヨモギの槍で突いて、二度と復活しないように祈った」と言いました。それからイヌエンジュには裂けてしまった樹皮の代わりに木幣で帯をし、祭壇を立てて木の神、水の神に祈りなさいと息子たちは指図されたので、その通りにしました。

 その夜から、いいなずけと私は二度と悪神に邪魔をされないよう、一緒に寝ることにしました。すると夢にイヌエンジュの神が出てきてこのようにいいました。「これ娘よ、赤マムシの悪神は、おまえが生まれたときからおまえに目をつけて見張っていたのだ。それを神様たちが見通し、おまえを守ろうとした。そこでどんな悪神でもかなわない強い香気を持つ私が選ばれ、先回りしておまえの行く手に立っていたというわけだ。私の樹皮は赤マムシの攻撃で裂けてしまったけれど、その香気を体内に取り込んだ悪神は死んでしまった。でも村長の息子たちが木幣で帯をしてくれたので、私は大丈夫なのだよ。これからも忘れずに私を祈ってくれたならば、孫子の代までおまえたちを守ってあげよう。それから明日になったら、おまえの兄を訪ねていきなさい」。同じ夢をその家の男の人たちも見たようで、起きてから火の神様に祈りました。

 翌日実家へ戻ると、兄は悪神に操られたとはいえ、私を一人で行かせたことを後悔して寝込んでいました。私たちと同じ夢を見たので全てを悟り、神に感謝して祈り、みんなで仲良く色々な話をしました。イペッの中ほどに帰ってから、兄もお嫁さんをもらったらいいということで、夫は兄のお嫁さんになる人を見つけて兄のところに連れていき、結婚することになりました。
 兄弟それぞれみんな子供がたくさんでき、お互いに行き来して仲良く暮らしました。父や母を見送ってからも仲良く暮らし、いつまでもイヌエンジュの神に祈ることを忘れないようにと子供たちに言い聞かせて私も死んでいくのですと、イペッの川上の村長の娘が物語りました。(安田千夏)

詳しく見る

本文ここまで

ここからフッターメニュー