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自然図鑑 検索結果

日本語名:ヤマブドウ

アイヌ語名:ハッ

利用:食用、生活用具、嗜好

ヤマブドウの実

ヤマブドウの実

学名Vitis coignetiae Pulliat ex Planch.
科名ブドウ科
種類つる植物
種IDP0141

絵本 [youtube=https://www.youtube.com/watch?v=5QiMpxti5aM]

 ブドウ科の木質ツル性植物で、秋に食用の実がなります。アイヌ文化では実を生食したり果実酒にする以外にも、若葉やツルを生で食べます。また成長したツルを利用して、編み袋やわらじを作ります。当館の採録資料では、薬として葉を傷やできものに貼りつけたとあります(日高地方)。口承文芸資料では、ヤマブドウのつるで作った輪に引っかかり、悪クマが家に侵入するのを防ぐことができたという散文説話があります(日高地方)。

ヤマブドウの花(7/5)

ヤマブドウの花(7/5)

アイヌ語辞典

植物編:植141(1)
アイヌ語名:ハッ hat
地域・文献:⦅北海道全地⦆
区分:果実

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アイヌの伝承

アイヌ語での呼び方:ハッ(全) ストゥカプ(つる)
日本語の呼び方:ブドウ
小さいつるをとってきて、耳環のために開けた耳たぶの穴がふさがらないよう穴に通しておきました。34445
・わらじは丈夫で暖かいものができました。足に布を巻き、その上にちょうど今でいう編み上げの靴のようにして履き、雪の中をまき拾いに歩き回りました。川の中の石を踏んでも、氷の上でも、山の傾斜地でも滑らずに歩けました。34101,34156
→口承文芸資料「オオカミ神の娘がポイヤウンペの息子を育てる」34182

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物語や歌など

おばあちゃんとヤマブドウ
 私は一人で祖母に育てられていた。祖母はなぜかいつも歌いながら家事をしていた。物心ついてからわかったのだが、歌っていると思ったのは泣いていたのだった。

 あるとき、大きな荷物をしょった者が来た。祖母以外に人を見たこともなかったが、男というものらしい者が来て「しばらく来なかったが大きくなったなあ」といって私をかわいがった。恐ろしくて逃げようとするが「私はおまえのおじだ。恐がるな恐がるな」という。そこへ祖母が帰ってきたので、おじがしょってきた食べ物などを祖母に渡すと、祖母は何度も感謝した。

 おじが帰った後祖母はこういう話をした。「今までおまえが幼すぎて話すこともできないでいたが、おまえには両親がいたのだ。あのおじさんはおまえの母の弟で、ずっと食べ物を運んでくれていたんだよ」。秋になると、家の前にブドウの実がたくさん実った。食べてみると本当に甘くておいしいものだった。それから祖母が山に行ってさびしい時にはそれを食べながら遊んだ。

 大きくなると、家事でも何でも私がやった。祖母はいよいよ年をとって動くのもゆっくりになっていた。あるとき水をくみに川へ下がっていくと、下手の向こう岸に何か黒くて大きなものが来て、川を渡ってこちらへ来ると、草むらの中に消えた。祖母に知らせなければと思ってすぐに家に戻り伝えると、身体を起こすのも辛そうなほど弱っていた祖母が、急にしゃっきりと座りなおした。「なんてことだ。今までお前が幼すぎて話すこともできないでいたが、あれを見たなら言わなければならない。おまえには両親もおじいさんもいたのだ。上手の村に暮らしていて、私たちには一人しか子供がいなかったが、おじいさんは誰よりも狩りが上手で、村の人々に獲物を分けるので、村長以上に頼りにされていた。しかしそこの村長は心の悪いもので、おじいさんの評判をねたんで、悪神に祈っていたらしい。おまえの父さんが狩りに行くと、そのうち元気がなくなり疲れた顔をして帰ってくるようなった。そのうちおじいさんは、悪神に目をつけられたようなので、違うところに家を作ろうといって、ここに移ってきたのだ。おじいさんは他の村人が悪い長に目をつけられないよう付き合いを断っていたが、あるとき女の人が父親と一緒に来て、おまえの父さんと結婚し、生まれたのがお前なのだ。

 しかし元の村の村長の妬みは凄まじく、また悪神の力も相当な物だったのだ。あるときおまえの父さんが山に入ったままもどらなかった。おじいさんはたいそう心配して、母親は心配して探しに行ったが戻らなかった。一晩待ってみたが戻らなかった。それでおじいさんは私に『何かあったに違いないから自分は行くが、おまえはなんとしてもこの子を大きく育ててくれ。そうすればこの世にうちの血筋が残るのだから』と言って行ってしまった。私もおまえを負って方々探してみたが、それきりおじいさんも戻らなかった。皆悪神に殺されてしまったのだろう。

 その家族を殺したものが、また今頃になってやってきたんだろう。私はもう年だから死んでもいい。しかしおまえは何とか生き延びて、上の村の人々に助けてもらって生きろ。そうすればおじいさんや両親の血筋が続くんだから」といった。私は「おばあさんが死ぬなら自分も死ぬ」と言って泣いたが、祖母は私を叱って「明るいうちに食事を作りお腹いっぱい食べなさい。食べたら言うとおりにしなさい」という。

 しかたなく炊事をしていると、祖母が外で何かしている。見に行くとブドウのつるで輪を作っていて、私にその輪を持たせて家の周りを歩かせた。自分も一緒に歩きながら、輪を一つずつ家の壁に取り付けていった。そしてご飯を食べたが、私は叱られても泣きながら食べていた。食べ終わると、祖母は外からブドウをとるときのはしごを持って入った。家の中にはしごを立て、私に祖母の着物を1枚よこすと「はりの上にあがってこれを被って伏せてなさい。何があっても動いたり声を出したりしてはいけないよ」といった。言われた通りに上がって着物を被り、声を殺して泣きながら祖母がどうするのか見ていた。

 祖母は寝床へ行くと、どこにしまっていたのか大きくて立派な槍を出した。その穂先を囲炉裏に入れ、上にまきを積んで大きな火をおこした。念入りに穂先を焼きながら、今度は着物を被って短い棒を持って戸口の上手側まで行き、短い杖をついて小声で何かを言いながら家の中を歩き回った。それが終わると気がつくと辺りは真っ暗になっていて、どこかからバッタンバッタンと、よほど大きなものらしい重い足音が聞こえてた。家の中に入ってこようとして、前小屋の戸に引っかかってもがいている。それでも何とか入ってきて、見ると大きな熊だった。大口を開け、前脚を伸ばしたのが見えた。そのとき、あの年を取った祖母が勢いよく飛び出し、その大口の真ん中に真っ赤に焼けた槍を突き立てた。ばちばちと焼ける音が聞こえ、熊は苦しさに両手を振り回した。そのとき、戸の両側につけていた輪に熊の前脚がはまり動けなくなった。熊があばれると、今度は梁につけた輪に上あごがはまり、熊は苦しさに大声を上げた。祖母も犬が遠吠えするようなすさまじい声をあげ、家の中は騒然となった。祖母はぐいぐいと力いっぱい槍を突き入れ、ついに熊が力尽きて辺りが静かになった。

 そこへ、上手の村の人々が駆けつけた。人々は熊を引きずり出すと、口々にののしって叩いたり蹴ったり大便小便をかけた。私のおじも来ていて、男なのに大声で泣きながら私たちの無事を喜んでくれた。一度村へ戻って食べ物を取ってくると、大鍋で料理をして、それを食べながら夜通し番をしてくれたので、私と祖母は安心して寝ることができた。朝になると村長が指揮して、皮のついたまま熊を切り刻んだ。熊の肉を絶対に口にしないように、指やナイフに付いたのを舐めてもだめだと注意しながら刻み、腐った木の株にまき散らした。熊の頭は腐った木の株の上に置き去りにし、生き返れないようにした。

 それから、2,3日は村の人が交代で泊まりに来てくれて、祖母が落ち着くのをまって村に移り住むように誘ってくれた。村長は「先代の村長は心がけが悪く人の富を憎んでは嫌がらせをしていた。あなた達は村長に憎まれて、呪いをかけられたのだろう。だが、今は自分が選ばれて村を治めているから、おばあさんも年老いたことだし、移って来ないか」と言った。祖母は祖父の建てた家に愛着があったが、移る事にした。祖父の家は燃やし、先祖の国に送った。

 それからは、祖母も笑うようになり、村の上へ下へ遊びに行くようになった。もといたところのブドウの木はそれからも大切に手入れし、村の人たちがみんなブドウを食べるようになった。親切にしてくれた村長の息子と結婚し、祖母に一生懸命孝行し、幸せな老後を送ってから先祖の国に旅立っていった。村中の人に親切にしてもらい、子供もできて、幸せな老後を送ってこの世を去るのだと一人の女が語った。

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