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自然図鑑 検索結果

日本語名:ナガバヤナギ、オノエヤナギ、カラフトヤナギ

アイヌ語名:スス

利用:生活用具、祈り

オノエヤナギの芽吹き

オノエヤナギの芽吹き

学名Salix sachalinensis
科名ヤナギ科
種類
種IDP0322

 ヤナギの仲間はとても種類が多く、アイヌ語で「ヤナギ」といったときに、どの種を指しているのかよくわかりません。川辺に群生するヤナギのうちいくつかの種を利用していたと思われます。
 アイヌ文化では、儀式のときなどに神に捧げる木幣の多くをこれらの木で作ります。おはらいをするときの手草や、とったサケの頭を叩くなづち棒(※)なども作ります。
 ※なづち棒は、ただ単にサケにとどめをさすための道具ではなく、サケ神に捧げる木幣と考えられています。

オノエヤナギの葉

オノエヤナギの葉

オノエヤナギの幹

オノエヤナギの幹

アイヌ語辞典

植物編:植322(1)
アイヌ語名:スス susu
語義:[→注1]
地域・文献:⦅北海道、樺太、全地⦆
区分:

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アイヌの伝承

アイヌ語での呼び方:スス
→口承文芸資料「ヤナギとミズナラの会話」35238

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物語や歌など

村長の家に嫁いだ貧しい娘とヤナギの神
 私はひとり娘で、父親はどういうわけだか、毎日山に狩に行ってもウサギの一匹もとれません。母と私で頑張ったので何とか食べられていましたが、父親が狩で獲物がないために貧乏人だと思われて宴会に招かれず、仲間に加われないのをかわいそうに思っていました。

 ある日見たことのない若い人が裏返しにした着物を着てやってきました。若者は「私は川下の村長の息子だけれど、両親はまだ若いときに死んでしまいました。妹と二人で暮らし、その後、村の女性と結婚して一緒に暮らしていたけれど、妻は病気で亡くなってしまいました。それで私はこのように着物を裏返しにしているのですが、いつまでも一人でいるわけにもいきません。娘さんと結婚させてくれれば、ご両親も幸せに暮らせるようにしたいと思っています」と話しました。父親は話が終わると「自分は貧乏人で村の仲間にも入れず、恥ずかしいと思っています。こんな貧乏人の家の娘を嫁にほしいと言われても、そうするわけにはいきません」と言いました。しかし、若者も譲りません。父親は黙って考えていて、「それほどまでに言うなら、娘を連れて行ってもいいですが、その代わりに何かあっても、貧乏の子をもらったがために…という愚痴を一言でももらしたら、それは許せません。それを覚悟の上なら、連れていってもいいでしょう。」と話しました。そうして私は嫁に行くため出かけていき、若者の家に着くと、若者の妹がひどく仏頂面をしています。それから、何日一緒にいてもろくに話しかけてもくれません。ご飯を作っても一緒に食べてくれず、そっぽを向いて食べていました。

 そうしているうちに、畑を耕す時期になりました。家の周りは良い土地で、大きな柳の株があるあたりはいっそう土が肥えています。私はそのあたりに種を蒔いたりして過ごしていました。そのころ、夫が山に行くと父親のようにウサギの一匹も獲れないで帰ってくるということが続きました。そんなある日、山から帰ってきた旦那が「貧乏人の娘と結婚したために、自分も貧乏になっていくんだろうか。」と独り言を言っているのを聞いてしまいました。あんなに父親が強く言ったのに、そんなことを言われるなんてと悔しく思って、その日は晩御飯が済むとすぐに寝てしまいました。

 そして、翌日夫と妹が出かけてしまった後に、柳の切り株のところに行って、泣きながら自分の気持ちを歌いました。すると柳の枝が擦れあう音がし、それをよく聞くと「人間の魂をつくる神がおまえの父親に狩の魂を入れ忘れたから、父親は狩ができなくているけれど、おまえたちは働き者で食べ物に不自由することなく暮らしているのだよ。おまえの夫はどうしてか先の奥さんを亡くし、それから妹は夫にべったりで、間違いをおかしてしまった。そんな状態でおまえは嫁に来たから、妹は仏頂面をしていたのだ。そして、夫の狩の魂を女のトイレに入れて、その上から用を足していたので、狩の魂の力がなくなってしまい、獲物が獲れないのだよ。狩の魂はトイレから出してよく洗って木幣をつければ獲物がとれなくて困ることもなくなるよ。今日は父親のところに行きなさい。夕方になって、おまえがいないのを見たら、夫はびっくりして追いかけてくるから、父親には何も言わずにいるのだよ。そして、寝るときになったらこのことを夫に話しなさい。両親をだいじにするのだよ。おまえがすぐに戻ってこなかったら、私は罰するつもりであるからね」と言っているように聞こえました。

 私は言うとおりに親のところへ行き、私を追って夜にやってきた夫と両親の家に泊まることになりました。そして、寝るときになって初めて柳の神から聞いたことを夫に話して聞かせました。「お前を嫁にして帰り、妹の様子が変だとわかってはいたのだが、言うのも嫌でいたので、神が私を咎めておまえに聞かせたのだなあ。これからはおまえの両親を大事にして、お前も大事にして過ごしていくつもりだ。」夫はそういって謝り、私を抱きしめました。

 翌日夫はひとりで家に戻り、妹をせっかんしてからトイレの中にあるものを取り出して、きれいに洗って木幣をつけて、山に行くと大きなクマが獲れたのだと言います。そして、家に帰ると妹が隅の方で苦しんでいました。一緒にご飯を食べようと私は声をかけましたが、二、三日隅で布団をかぶって寝ていました。その後は、起きて来て、私のそばで料理をし、家の中や庭をきれいにしました。

 柳の神にお礼をし、私の両親を呼び寄せて養い、たくさんの子どもに恵まれました。妹は自分から家を出ていって、村はずれの粗末な小さな家で暮らし始め、平凡な男性と結婚し、子どももたくさんできました。しかしあまり恵まれた暮らしではなく、私は食べ物や着るものを持っていってあげて不自由のないようにしました。今は年老いてもうこの世を去るときが来たので、私の子ども達に悪い心を持たずに、柳の神に守ってもらって穏やかに暮らすのだよということを命じて、私はこの世を去ろうとしています。

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