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私は父と母にとてもかわいがられて暮らしていた。私が外へ出ようとすると、父は出かけるときには「妻よ、何がするときも坊やを守るんだよ」と行って出かけて行った。母は私を背負って水汲みなどをし、私が寝ると、私をおろして粉搗きをした。本当に両親は私を可愛がっていた。
大きくなると跳ね回って遊んだ。両親は「決して外に出てはいけないよ。外には悪さをするものがいるからね」というので、遠くには行かず庭で遊んだり家に入ったりして遊んでいた。
もっと大きくなった頃、どこかに心がけの悪い伯父がいて、あるとき急に父に手紙をよこすようになった。2度3度と手紙をよこして、とうとう6回になった。「来ないと言うなら殺してやるぞ」と手紙に書かれていたので行くことにした。父は泣きながら「坊や、妻よ、しっかり留守番をしておれよ」というと、母も泣きながら「私も付いて行きます。この子は家に残していきます」といった。父は「坊やを守っていろ。もし私が殺されたら、坊やが大きくなったら仇をうつだろうから」と言ったが、母は聞こうとしない。
2人は舟に乗ったので、私も舟に飛び乗って隠れていた。母はいつまでも泣いていた。父が櫂をかいて、そのうちに舟をつけた。見ると本当に、悪い伯父の大きな家が見えた。
父は泣きながら「妻よ、お前はここにいなさい。私が生きていたら帰ってくるから。帰らなければ殺されたと思って、帰って子どもをしっかり育てるんだよ」といってずっと向こうへ行ってしまった。
舟から飛び下りると母は驚いて「いったいどうして」と言いながら私を抱き寄せた。私は「母さんはここに隠れていて、ぼくはこっそり行って伯父さんがすることを見てくるから」といって、草の下にかくれ、木の陰にかくれ家の外で様子を伺うと、父が責められるのが聞こえた。「兄よ、私が何をしたわけでもないのに、このように私を責めるとは」といって泣きながらカムイに助けを願うのを聞いているうちに、父の声がしなくなった。
悪い伯父は、父の両足をかかえてゴミ捨て場に投げ捨てると、家に入っていった。何ながら、草のかげにかくれて父を引きずっていった。母が泣きながら来て、助け合って父を舟に入れた。家に戻って父を中に入れ、母は薬湯を作る小鍋を火にかけた。私が薬をすすって口移しし、揺り動かした。父が死なないよう「大きくなったらあの伯父をひどく懲らしめてやるから。父さん聞こえていたら起き上がることくらいできるようになるよ」と言って泣きながら父の前や後ろで跳ね回ってまじないをした。
どうにかこうにかして、父に一命を取りとめさせた。大きくなったら伯父を懲らしめてやろうとばかり考えていた。横になっても、何かしているときも、いつも悪い伯父を懲らしめることばかり考えて暮らしている。と、ある者が語った。
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