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私は父母と一緒に暮らす女の子でした。何不自由ない暮らしをしていましたが、私はひとりっ子で誰かと一緒に遊ぶということもなかったのでした。父と母は私に「淑女というものは、川で顔を洗うときには川の下流上流に拝礼するものだよ」と言っていたので、毎日そのようにしていました。
ある日、川にお盆に乗ったきれいな娘が流れて来て、私たちの水汲み場に上陸しました。その女性は切羽をひとつ持っていて、「これを差し上げましょう。あなたがこの上に被さると切羽は消えてしまいますが、本当に立派な旦那さんが来たなら浮かび上がって来るでしょう。その人と夫婦になれば、何不自由ない暮らしができて子供もたくさん授かるでしょう」と言いました。それを何度も拝礼して受け取ったところ、その切羽は消えてしまいました。
父は「たまに休みたくても男の子がいないので仕方がない」と文句を言うのを聞いて泣き暮らしているうちに、一人前の女性に成長しました。ある日ひとりの若い男が来て私の家に泊まると、あの切羽が浮かび上がって来ました。その男性に「結婚してください」と言うと承諾してくれました。切羽は外して、木幣に包んで箱にしまっておきました。
すると次の日から旦那さんが山猟に行くと、獲物がたくさんとれて子供も次々に授かりました。父も母も安心し、そのうちに寿命で死んでしまいました。子供たちも大きくなったので、女の子には女の仕事、男の子には男の仕事を教えました。そして川に行ったときは、川の上流下流に向かって感謝の所作をして、よく見渡しなさいと教えました。水の神は良い神なので、祈るのを忘れないようにと言い置いて死んでいきますと、ひとりの女性が物語りました。
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