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物語や歌

C0024. 祭壇の神に育てられた子どもの敵討ち

あらすじ

 ぼくのおばあさんがぼくを育ててくれていました。おばあさんはなぜか裸のままぼくを育ててくれていました。どうして自分が生まれたのかわからないでいたけれど、少し大きくなってみると、ぼくの家は大きな家なのに何もなく、がらんとしていました。おばあさんがひとりでぼくの世話をしていて、おばあさんはぼくに「早く大きくなっておくれ。私はもうすぐ年を取って動けなくなる。おまえが自分で食べていけるようになるまでと思って頑張っているのだよ」といいながら暮らしていました。

 ある朝おばあさんが「おまえがここまで大きくなったのならわかるだろう。今日は先祖の話を聞かせよう」といって話してくれました。「おまえの父母はオタスッ村でも名の知れた村長だったが、おまえが生まれてしばらくすると、村が夜襲(やしゅう=よその村からの襲撃)にあったのだ。おまえの父が勇敢に戦っている間に、おまえの母はまだ赤ん坊のおまえを抱きかかえ、外のぬか捨て場に穴を掘り、祭壇の女神におまえを何とか助けてくれるように頼んだ。そして家に戻ろうとしたところで殺されてしまった。父も殺され、村は滅ぼされてしまい、宝物や家財は全て悪者たちに奪われてしまった。おまえはお腹が空いて泣いていたけれど、どの神のそっぽを向いておまえを助けようとしない。そこで祭壇の女神である私が立ち上がり、今までおまえを育ててきたのだよ。おまえは大きくなったのだから、仲間を募って親の敵討ちにいきなさい」。おばあさんはそう言って、さらにぼくの頭をなでながら「私はもう死んでいくけれど、おまえが敵を討ち果たしたならば私に祈っておくれ。そうすればいつまでもおまえを守ってあげよう」。そう言うと、おばあさんの姿はなくなり、座っていたところには木幣がひとつ、削りかけも落ちて芯棒だけになって転がっていたのです。

 ぼくはその木幣を抱きかかえて、おばあさんを思って泣きました。外の糠捨て場に木幣を立てて、敵討ちをすることを誓いました。ぼくはもう大きくなったので、自分で獲物をとってきて料理をし、おばあさんに供えて泣きながら暮らしていました。

 どこからか男の人がやってきたので一緒に住むことにしました。泣いているわけを尋ねられたので、わけを話すとその男性は一緒に敵討ちに行くといってくれました。それからもうひとり仲間の男性が加わり、いよいよ敵討ちにいくことになりました。父と母、そしておばあさんにぼくの後ろ立てになってくれるように頼んで、悪者の村が見渡せる山に登っていきました。

 「ぼくは村の真ん中に飛び込むから、ふたりはそれぞれ村の上端、下端から斬り込んでください。村を滅ぼしたら合流することにしましょう」と打ち合わせて村へ下りていきました。

 今は夜で、村人たちはみんな眠っているので、何の支障もなく村に侵入し、ぼくは村長の家に入っていきました。火種が埋めてあるので大きな火を焚き、大声をあげて家の者たちを起こし「早く起きろ!ぼくの父と母を殺して、持ち物を奪い去ったのだろう!」と言って、起きて来た男たちを殺してしまいました。老人は「そうだ、持ち物のことは知っている。返すからどうか命ばかりは助けておくれ」と命乞いをしたけれど、皆殺してしまいました。

 外に出て、仲間の男たちが刀を振るう音を聞きながら人を斬っていきました。「悪いのは村長なのに、私は命令に従っただけなのに」と言いながら逃げる者を斬りました。夜が明ける頃、仲間の男たちと合流して無事を喜び合い、それぞれの家から父や母の持ち物を運び出して外に置き、家を全て燃やしてしまいました。父と母の持ち物を背負い、山に登って置き、背負えるだけを背負って自分の村に帰ってきました。祭壇の女神であるおばあさんに報告して、お礼の言葉を述べて眠りにつきました。

 翌日はまた山の上からものを運んできて、家の中には宝物の列を作りました。それから仲間たちと一緒に酒づくりや木幣作りなど儀式の準備をし、準備ができると祭壇の女神であるおばあさんの木幣には新しい着物として削りかけを着せ、盛大に儀式を執り行いました。

 それが終わってからは、仲間たちと仲良く狩りに行きながら暮らしました。ぼくはどこからかやってきた娘と夫婦になり、仲間たちもそれぞれ奥さんをもらい、近くに家を建てました。ぼくは村長と呼ばれ、少しずつ村人も増えていきました。村は祭壇の女神が守ってくれているので、何も悪いものが近寄らず、子どももたくさんできて幸せに暮らしました。子どもたちにはおばあさんの話をして「酒をつくったならば、一番先に祭壇の女神に祈りなさい。そうすればいつまでも守ってもらえるのだから」と言い聞かせ、「恐ろしいものが来ても勇気をもって立ち向かいなさい」と言いながら、もう年を取ったので死んでいくのです、とある男が物語りました。

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