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物語や歌

C0027. オタスッの村を再興する兄妹

あらすじ

 

(オタスッの娘が語る)

 おばさんが私を育てていた。水くみでも炊事でも何をしても、歌を歌いながらしていた。どのように育った者であるのか私はわからずにいた。私たちは小さな家で暮していた。やがて私は成長し、4、5歳くらいになると、おばさんは泣きながら「早く大きくなりなさい」と言っていた。水くみ場へ行くと大きな燃えた家の跡があった。

 ある日おばさんは「まき取りに行くので、おとなしく家の中にいなさい」と言って出かけた。しかしおばさんはすぐにあわてて帰ってくると「私の子供よたくさん食べなさい」といって食事を出した。「もう食べることができない」と言うと、おばさんはござを出して、ござの中から絹の小袖を取り出し、私に着せた。それから「私の子供よ、私の言うとおりにしなさい。クスㇽから来た集団が奇襲をかけおまえの父母は殺された」

(おばさんが語る)

 私の父母がいたが、私の父がシカや魚をとると村の村長が取ってしまい、食べ物がない。私が少し成長すると、父母は泣いて、「村を離れてどこかに行こう」と言った。そして私たちはどこかを歩いていると、大きな裕福な家があった。父が干し竿を叩くと神のような女性が出てきて、「どうぞお入りください、主人はまだ山から戻らないのです」と言って、家の中に入れてくれた。家の中も立派な様子で、その家の奥さんは食事を出してくれた。それから家の主人であるオタスッのニㇱパ(立派な男性のこと)が山から戻り、「どこから来たのですか」とたずねた。私の父はこれまでの事情を話し、この家で一緒に暮すことになった。

 その家の夫婦は私を可愛がってくれた。私は絹の着物を着せられ寝かされた。母は家の奥さんの仕事を手伝い、父はオタスッのニㇱパと山に行き、シカでもクマでもとった。それから家の奥さんが妊娠して、女の子が生まれた。その女の子を可愛がりながら暮していた。私の父母が年老いて死んだ後で、オタスッの夫婦はよい墓を作った。両親が亡くなった後も私を可愛がってくれた。そしてオタスッの婦人は「子供を背負って歩き回るときは逃げる場所を見ておくものですよ」と私に二回も三回も言った。私は子供を背負って川沿いで遊んでいるとき、川の土手に二人で座って隠れることができる場所があることに気づいていた。

 あるとき、オタスッのニㇱパは「今日は山へ行く気がしない。休んで弓矢をつくることにする」と言い、奥さんは「杵つきをする」と言った。私は子供を背負って川へ下る道を下り、川沿いを歩き回り、隠れることができる場所へ来たところ、オタスッの奥さんが危急の声をあげた。オタスッのニㇱパも危急の声をあげた。「この悪神どもが」という声を聞いてすぐに私は土手の下に隠れた。すると見知らぬ人々が、「一人だぞ、はやく突き刺せ、早く斬れ」と言うのが聞こえた。私は子供が泣き声をださないようにしていた。すると土手の上を人々が「娘よ声を出せ。何もおそれることはない。どこにいるのか」と言いながら私たちを探しに来た。しかし見つからず、「川に流されて死んだのだろう」と言って去っていった。悪神たちが去るのと同時に家が燃やされる音がした。日が落ちてから私は出てきて、水くみ道から見ると、家は燃やされていた。その場所で子供を背負って寝た。そして焼けた鍋、焼けた御椀で私はあなたを育ててきたのだ。

(オタスッの娘が語る)

 「あなたはオタスッの人の末裔だ。おばさんの言うことを聞いてそのようにして、神が見守るならば、父親の後を継ぐことができるのだ」とおばさんは泣きながら言った。そして私にござを巻きつけた。そして「まき取りに山に行ったところ、小さいときに声を聞いた悪神たちが川上にいて、「娘を切り殺す」と言っていた。私は斬られたら神のところへ行って、おまえの父母とともにおまえを守護する」と言った。

 私たちの小さな家のそばにヤチダモの木があったが、その根元を掘っておばさんは私を寝かせた。「踏まれても声を出すな。三日たって晩になったら起き上がって川に沿って下りなさい。すると、交易のときにつくった祭壇につるが巻きついて家のようになっているところがある。そこにいるならば、おまえは神の末裔なので、生き延びることができるだろう」とおばさんは言って、私の上にごみや木の葉をかぶせ、木の枝をかぶせた。そしておばさんは家のなかに入って泣いているのを聞いた。それからおばさんの声が聞こえなくなり、家が燃える音がした。そして人々が「娘よ声を出せ」と言い、私の上を踏みつけても私は声を出さずにいた。悪神たちはあきらめて去る音が聞こえた。三日たって私は起き上がった。「おばさんはどこにいるのか」と泣きながら、ござに包まれたまま、転がりながら、川へ下る道を下り、川の土手へ下った。そして何日もかかって浜に下った。そしてヌサにつるが巻きついている場所へ着き、中に入った。そしてそこで泣きながらいた。

(オタサㇺの若者が語る)

 私の父母が私を大事に育てていた。兄も姉もいた。姉は炊事をして私に食事を出した。「早く大きくなりなさい」と父母は言っていた。「どうして父母がこれほど私を大事にするのか」と私は思いながらいた。

(村長が語る)

 神のようなお方の子供を育てていた。あるとき村人たちは「夜中に黄色の星、赤色の星、白い星がたくさん光っている。どうしたのか」と話していた。「神の子孫を育てているのを神が知って、見守っているのだろう」と思い、ある日長男にこう言った。「今日は山に行くな。村の上手に大きな家を作って、神のようなお方の子供を住まわせるつもりだ。」

(オタサㇺの若者が語る)

 立派な家が出来上がり、私はそこで暮らした。あるとき、山に行こうと思い支度していると、突然私の心が高揚した。そして私の船着き場に行きたくなり、船着き場へ下った。そして、どうしてか、舟の縄をほどいて舟に乗った。舟は進んで、どこかの村の河口に上陸した。そして、浜につるの家があるのを私は見た。そこへ行き中へ入ると、何者かがござを巻きつけ目を光らせているのが見えた。私はひどく驚きながら、そのござを巻きつけた者を舟に投げ入れ、舟を沖へ出した。そして私の船着き場に上陸した。そして、そのござを巻きつけた者を持って家の中に入った。姉がござのひもを切ると、絹の小袖を着た神のような女の子が出てきた。その少女と一緒に暮すことになった。その少女は毎日私についてきて、いつも一緒にいた。

(ある村の村長が語る)

 長男が私に「弟の家の上で黄色の虹、赤色の虹、白色の虹がたくさん光っている。どう思いますか」とたずねた。

(オタサㇺの若者が語る)

 夜に外に出て父の家の方をみると、窓から明かりがもれている。父の家の神窓のことろに行くと、父は何か考え事をしており、それからこう話した。

 「昔、レプンコタンのニㇱパたち、勇者たちが、ヤウンモシㇼのオタサㇺの神のような勇者の噂が立つのを聞いて、奇襲をかけることにした。二十ヶ月か三十ヶ月、レプンクㇽの村長が私に使いをよこして、「承知しないと先におまえの村を壊して、オタサㇺのニㇱパのところに奇襲をかけに行く」と談判した。私は断われずに承諾した。しかし村人には「ヤウンモシㇼに上陸しても悪神の心をもたずに舟にいなさい。決して手助けするな」と言った。レプンクㇽの集団と連れ立って、オタサㇺの神のような勇者の船着き場に上陸した。私の村人たちは舟にいて、レプンクㇽの集団はオタサㇺのニㇱパの家に行った。夜中だったので、オタサㇺのニㇱパが寝ているときに奇襲をかけた。オタサㇺのニㇱパがうなり声をあげるのを私は聞いて行ってみると、「一人だぞはやく突き刺せ、はやく斬れ」とレプンクㇽの悪者が言っており、オタサㇺの勇者は裸で戦っていた。オタサㇺの婦人は外で斬られてしまった。そのふところにいた赤ん坊を私はふところに入れ、私は村人とともに逃げて来た。どうにかこうにか、私が育てた神のようなお方が大きくなったので、父の話、先祖の話を聞かせようと思っていたのだ。しかし、私の子供は神のような少女をヤウンモシㇼから連れてきて、その少女はその兄と一緒にいるという。見聞きすると、オタスッの神の勇者の末裔だとわかった。クスㇽの集団が奇襲をかけて、神の末裔なので神の思慮で連れられてきたのだ。これまでこのようなことは聞かせていなかったが、今日夜が明けたら私の育てたお方のところへ行って、事情を話そうと思う。」

 父と兄の会話を聞いて私は泣き崩れた。それから私は勇者の心をもち、家の中に入ると父と兄は驚いた。私は外で会話を聞いていた事情を話し、「大きくなるまで育ててくれたことに感謝しますが、レプンクㇽの集団には仕返しをしようと思います。父と兄よ、わかってください」と言った。すると「一人で行くのは心配だ。勇者たちに頼んで悪神たちを攻撃しよう」と父と兄は私をなだめた。

 そして私は家に戻り、姉に事情を話した。それから兄のところへ行って戦いの支度をした。二三日して戦いの支度が終わると、レプンクㇽの村へ村人や兄ともに舟にのって進んだ。レプンクㇽの村に着くと、私は一人で村の真中の大きな家に行き、家の者を皆殺しにした。私の村の人たちは村の下手から上手からやってきて、私の父親が持っていた物を舟に積み込んだ。村を壊滅させて舟に乗り、育ての父の村へ戻った。

 父母は「明日になったら村人たちよ、舟に乗ってヤウンモシㇼに上陸して、オタスッに家を建てなさい。オタサㇺにも家を建てなさい。そして神の少女の家が栄えるようにしなさい」と言った。

 そして私は村人たちとオタサㇺに上陸して、大きな家を建て、父親の持っていたものを運び入れた。そして祈りの儀式をおこなった。それからオタスッに行って、同じように大きな家を建てた。そして祈りの儀式をおこなった。

 二三日休んでから、クスㇽに行って、攻撃をしかけた。私は村の真中の家へ一人で行って皆殺しにした。私の村の人たちは村の下手から上手から悪神たちを斬りながら来た。そしてオタスッのニㇱパが持っていた物、婦人が持っていた物を運び出し、家を燃やした。私は悪神たちをすべて処罰し安心した。それからオタスッの村へ荷物を運び、家の中へ入れた。そして祈りの儀式をおこなった。その後で兄に、「私の妹※が大きくなるまで私は一緒にいようと思います」と言うと、兄は泣きながら私に拝礼した。兄たちは二三日休んでから沖へ出ていった。

 その後で私は山に出かけクマでもシカでもとり、何の心配もせずに暮した。そして妹も大きくなった。私の父が亡くなる前に訪ねていくと、父は妹と一緒になるように言った。

※アイヌ語のtures「妹」は血縁関係のある妹のみをさすのではなく、親しい女性などにも使われます。

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