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物語や歌

C0045. 夜襲から女たちを救った子グマの神

あらすじ


 私はある村に暮らす女性で、立派な長者と結婚し、夫は働き者なので、狩りに行くとたくさん獲物をとってきます。私も山菜とりや畑仕事に精を出し、何を欲しいと思うこともなく暮らしていましたが、ただひとつ子どもがいないことが寂しいと思うことでした。やがて夫は妾をもらい、私はその妾の女性と何をするのでも一緒に助け合って仲良く暮らしていました。妾の女性に早く子どもができたらいいと思いながら暮らしていましたが、その女性にもまだ子どもはできないのでした。
 ある年に、夫は交易に行くと言ってたくさんの毛皮を舟に乗せました。そして私たちに「飼いグマの世話をよくして、留守を守っていておくれ」と言い、海へ漕ぎ出していきました。その後は、妾の女性と一緒に子グマの面倒をみながら暮らしていました。
 するとある時から子グマが鳴いて、檻の中で暴れるようになりました。夜でも昼でも鳴き騒ぐので、何かの前ぶれかと思い、火の神にお祈りもしましたが、クマは一層暴れるので、もう檻は壊れそうになってしまいました。そこでどうしようもなくなり、檻の出口を開けると、クマは檻から出て、神窓から家の中に入り、神座に座りました。そしてクマの吐息が言葉になって聞こえてきたのです。
 「育ての母さん、よく聞いてください。旦那さんの留守を狙って、悪い者たちが夜襲にやってくるようです。殺されてしまうから、宝物を持って早く逃げてください」。そう言うので驚いて泣いてクマに飛びつきましたが、逃げろと急かされるので、急いで夫の宝物入れを開けてみたところ、銀の刀のつばがありました。葬式用の紐しかないので、それをつばに通してクマの首に結びつけました。そして炊事してあった物をクマにたくさん食べさせ、妾の女性や村人に事情を説明しました。そしてクマを先に逃がすと、クマは神窓を通って家の外に出て、祭壇の端を通って山のほうに鳴きながら走っていきました。私たちも泣きながら火の神に再びクマ神に生きて会えるようにと祈り、クマとは反対方向に、妾の女性と一緒に逃げていきました。
 人間がいるところを探して歩いていると、どこかの村に着きました。村の真ん中にある家のゴミ捨て場のところで泣いていると、家から若い女性が出てきて私たちを見て、すぐ家に入ってしまいました。家の人に私たちのことを告げると、老人の声で「お入れしなさい」というのが聞こえました。そして家に招き入れられ、妾の女性とふたりで入っていくと、家には年老いた夫婦がいました。客座に座って泣いていると、わけを聞かれたので、今までのいきさつを説明しました。するとその家の人は私たちに同情してくれました。夕方になるとその家の家族である若い男性ふたりが山猟から帰ってきました。そして私たちの身の上を説明すると、その家族は「行くあてもないならば、これからはこの家で暮らしなさい」と言ってくれたので、ふたりで居候となってその家の若い娘の仕事を手伝って暮らしました。
 裕福な暮らしでしたが、夫とクマのことが気がかりで、妾の女性と泣きながら暮らしていました。しばらくするとこんな噂が聞こえてきました。村人たちが山猟にいった時に、喉のあたりが光っているクマを見たというのです。クマが歩くと、喉のあたりが陽が射したように光っていたというのを聞いて、もしかして私たちの育てたクマなのではないかと思いました。
(この後は語り間違えたということなので中略)
その噂を聞いてしばらくすると、男の人たちがそのクマをとって、村に背負ってきました。私たちが育てたクマに間違いなく、その村で盛大な送りの儀式をしました。そしてその儀式が終わった後、なんと本妻の女性も死んでしまったのです。
 (ここからは妾の女性が物語る)クマも本妻の姉さんも死んでしまったので泣きながら暮らしていると、村の人たちはクマが姉さんを連れていったのだから仕方がないよとなぐさめてくれました。姉さんの葬式が終わると、家のおじいさんは夢を見ました。例のクマ神が出てきてこのように言ったというのです。「檻から逃げた後、山でヤマブドウをとろうとすると、ヤマブドウの木の神は私に対して実の出し惜しみをし、コクワの実をとろうとしても、コクワの木の神は実の出し惜しみをしました。『人間くさいやつにはやらないよ』と言うので、私は山ではいつも食べることに苦労をしていました。仕方がないので育ての母を探し、一緒に神の国に行こうと思っていたのです。私をとった人はいい人だったので、盛大な送りの儀式をしてもらうことができました。そして育ての母を一緒に連れていったというわけです。どうか怒らないでください。それからこの家にいる妾の女性は、この家の長男と結婚させてあげてください。交易に行った旦那さんも、海の上で病気にかかって死んでしまい、帰ってくることはなかったのです。この死んだ母、父の子孫を妾の女性が残してくれるように配慮して欲しいのです」。
 その家のおじいさんは神へ感謝の祈りをし、その言葉通りに長男と私を結婚させてくれました。子どもがたくさんできましたが、本妻の姉さんとその夫をいつまでも惜しみながら暮らしました。一番先にできた子だけは自分の子孫とし、後の子は死んだ姉さん、旦那さんの子孫として(?)育て、私も死んでいくのですと、ある妾の女性が物語りました。

 

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