ヘッダーメニューここまで

ここからメインメニュー

  • 自然図鑑
  • アイヌ語辞典
  • アイヌの伝承
  • 物語や歌
  • 絵本と朗読
  • 語り部
  • スタッフ

メインメニューここまで

サイト内共通メニューここまで

ここから本文です。

物語や歌

C0070. クマの夜襲を察知した石狩の勇気ある末娘

あらすじ


 

 イシカㇻの村長が私で、男の子がふたり、女の子がふたりいて

(ここから末娘が語る)

 ふたりの兄と姉がいて、一番下の娘が私でした。父も母も死んでしまってからは、兄たちに大切に育てられ、そのうちに上の兄は結婚し、下の兄も結婚して別に住みました。姉たちもそれぞれ結婚して、私も結婚して別の家に住んでいました。兄たちが山猟に行ってしまうと、嫁たち、姉たちは寂しいからといって私を呼んで、みんなで集まってひとつの家に泊まっていました。女というものは留守を守って家の仕事をするものであり、何が寂しいのかと思ったけれど、何度も何度も寂しいからと呼ばれては泊まっていました。

 もう夏の終わりで、兄たちはまた猟に行ってしまいました。準備をしていると「戻るのが遅くなるから、よく留守番していなさい。妹をひとりにしないで、決して誰もひとり寝をすることがないように」と言いおいて、男たちは行ってしまいました。

 何日かして、ある日兄の赤ん坊が火のついたように泣いて、どんなにあやしても駄目で、私が呼ばれていってあやすと、やがてすやすやと眠ってしまいました。もう日が暮れて、赤ん坊が泣いていたので水くみを忘れていたと言って、私は手桶を持って水くみ場におりていきました。川の上流下流をよく見回す習慣なので、それをしてから水をくんでいると、川の上流にクマが2つも3つもくっついたような大きなクマが、兄の家のほうを見てから川に飛び込み、泳いで家の上手のほうに泳いでいって、アシ原に隠れる様子を見ました。それから水をくんで家に帰り、誰にも何もいわずに、嫁たちに「まきをたくさん下座の土間に運んでおいて、鍋の底を削りなさい」といって、窓にはすだれをかけて明かりがもれないようにしました。一同は何事かと私に怒ったけれど「生き残りたければいう通りにしなさい」と叱りました。

 真夜中になった頃、私は山猟にいった兄たちのところに行くと言いました。残った女たちに槍や太刀を持たせ、鍋を削り続けるようにいい残し、太刀と槍を持って外に飛び出して川の上流方向へいくと、兄たちの狩り小屋につきました。5軒の家があったのですが、みんなひとつの家に集まって英雄の物語などをして楽しく笑い合っていました。そこに入っていったので兄たちは驚いて、わけを話して襲撃に備えて身構えることにしました。兄の家に誰が突入するかと相談すると、誰も入ろうとしませんでした。そこで私が入り、そこにいたクマを、火で熱して赤くなった槍で突いて殺してしまいました。男たちはあきれたことに、おびえて誰も飛び込んできませんでした。私のおかげで助かったと感謝するのであきれて、夜が明ける頃ひとりで村まで下りてくると、姉たちは泣いていました。

 その夜疲れて眠っていると、夢にひどく痩せたおじいさんが出て来ました。「これイシカㇻの娘、男よりよっぽど勇気のある娘といっておまえは神の間でも評判であった。私はそれが面白くなかったので怒っていると、神々は『その娘を殺して連れてきたならば、偉い神にしてやろう』というので、それならばそうしてやろうと思って、まずおまえの兄たちを襲って殺し、おまえがそこに来たら殺してやろうと思っていた。しかしおまえに見抜かれ、先に兄たちのところに知らせにいっていたために、私はおまえに殺されてしまった。私をけしかけた神様たちも悪いのだ。私をあわれんで、祖末な木幣、酒で私にくれて祈ってくれたならば、私はもとの姿に戻ることができ、おまえたちには子供をたくさん授けてあげよう」といった夢を見ました。ひどく腹が立ちましたが、兄たちが戻ってから悪神がいう通りにしてやりました。それからもみんなで仲良く暮らしていると、子供がなかった姉にも子供ができ、私にも子供ができ、幸せに暮らしましたと、イシカㇻの村長の末娘が物語りました。

本文ここまで

ページの先頭へ戻る

ここからフッターメニュー