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私はポイヤウンペ。シヌタプカで姉に育てられていました。私は山へ狩りに行き、姉は畑の作物を作って忙しく働き、何不自由ない暮らしをしていました。私が大きくなると姉はこう言いました。「オタサムにいる神の叔父のところに女の子が生まれ、その子とあなたは許嫁同士なのですよ。その後親たちが次々に亡くなり、それからは私があなたを育てて来たのです。許嫁の娘はたったひとりで家を守って暮らしています。もうあなたは一人前になったのだから訪ねて行きなさい」と言いました。それからは毎日行くことを催促され、時に怒られもしたので、ある日神の鎧を身に着けて出かけて行きました。憑き神にオタサムに連れて行ってくれるように頼むと、私は空に飛び上がりました。
やがて美しいオタサムの村に着きました。許嫁の家に近づくと、どうしたことか雷の音が聞こえて来ました。そして私が家に着く前に、雷の神が乗り物から下りて家に入って行くのが見えました。私は腹を立てながら家に近づき、窓から中の様子をうかがいました。宝物が並ぶ家の中には、神座に神の勇者が座っていて、右座には巫術の力が強い許嫁の女性が座っていました。そして男が「私はあなたの許嫁です。さあ料理を食べさせてください」と言いました。女性は「あなたは許嫁ではない」と言って泣いて拒みましたが、男はこう言いました。「私は雷の神である。おまえに惚れて天から降りて来たのだ。おまえは人間で、私がおまえを斬ったら蘇生することはできないのだぞ。早く料理を作りなさい」と言いました。女性は「斬りたいなら早く斬りなさい。神が見ているのですよ」と言いました。
私は怒りに駆られ、家の中に飛び込みました。そして雷の神と太刀を交え、神は天井に逃げてこう言いました。「私がおまえを斬ったら蘇生することはできないのだぞ。この土くさい人間め」と言って煙出しの窓から逃げました。私も飛び上がって追いかけ戦いました。
そのうちに相手を見失い、どこかの村に降り立ちました。村の上手にある城の中の神座に相手がひどく疲れた様子で座っているのが見えました。その家の年配の男性が泣きながら私に命乞いをして「不肖の息子が不義を働いて申し訳がない。ポイヤウンペよ、どうか命ばかりはお助けください」と言いましたが、例の神は「何を父さんは言っているのだ。人間など斬ってしまえばいいのだ」と言うので私は家の神座に進み、その家の者たちを斬ってしまいました。例の神は蘇生して私を追いかけて来ました。村人たちが群がって来て、例の神はその後ろで檄を飛ばしていたので、私は村人たちを斬り続けました。加勢に来てくれた姉は何者かに金の網で連れ去られてしまいました。殺されてしまったのだと思い、私が狂ったように人を斬っていると、誰かが私の肩をつかんでこのように言いました。「私は天の国のおまえの兄、オイナカムイだ。おまえが天の国、人間の国を滅ぼさんとするほどの怒りを鎮めることはしない。でもおまえの育ての姉は、神々のはからいで金の網で捕縛し、おまえの城に許嫁とともに連れて行ったのだよ。正気に返りなさい」と言いました。そこでその神とともに家に帰ると無事に生きていた姉が出迎えてくれました。オイナカムイは天に帰り、許嫁の女は泣いてばかりいました。そこで「悪い神が恋しいのかい」と言うと、笑って料理を作るようになりました。その女性と夫婦となり幸せに暮らし、子供ができると一番上の息子にオタサムの城を守らせることにしました。
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