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物語や歌

C0076. 鵡川の男と石狩の河童の話

あらすじ

 

 私は鵡川の人で、石狩の長者は貧しい人を使用人にしているという話は聞いていたのですが、毎年このような話を耳にしました。石狩の長者の網には石か何かが引っ掛かって上げることができず、度胸のある人に上げてくれるように頼み、頼まれた人は舟に乗り沖に向かうのですが、誰も戻ってきたことはない。そのように毎年、立派な長者が一人ずつ殺されているという話を聞き、とても気の毒に思い、いつか自分のところにも頼みにくるかもしれないと思っていました。

 ある日、とうとう私のところにも石狩の長者から使いの者がやってきました。そして、聞いていた通り網を上げるよう頼まれたので、明日になったら行くと伝えました。

 翌日になり、私は神々に事情を話し、見守ってくれるよう祈り、山刀を下げて出かけました。石狩の長者のところに行くと、長者から「沖の網がどうしても上がらないのですが、あなたに頼めばどうにかなると思ったのです。使用人に舟を出させますから、乗っていって網を上げてください」と言われました。

 舟に乗り、網のところに行くと、私は小さい鍋を持ってきていたので、肛門を鍋で覆って褌をぎゅっと縛り、山刀を腰に結びました。飛び込んでみると、まさかそんなことがあるとはまったく思っていなかったのに、小さな子どものようなものが網を掴んでいました。河童といわれるもののようで、私はとても恐くなり、一歩間違えたら生きては帰れないと思い、取っ組みあいをしました。子どものように見えたけれど、とても力が強く、何度か危ない思いをしながらも、どうにかして山刀を抜いて片手をバッサリ切り落としました。その切った手を掴んで、泳いで陸に上がりました。

 その河童の手を持って自分の村に帰り、神に無事に戻ったことを伝え、手を火棚の上に掛けておき、二、三日すると神窓の下からこのような声がしました。「人間の長者よ、聞いてください。私は悪い心がけを持っていたわけではないのです。石狩の長者が『魚がたくさん獲れるようにしてくれたら、一年に一人ずつ人間をあげますよ』と言うので、石狩の長者の網に魚を追い込んで、人間をもらって殺して食べていたのです。頼まれたからそうしていたものの、私も悪かったので、手を返してくれたら、これからはこのような悪い心がけは持たず、あなたを見守ります。あなたは今子どもがいないけれど、子どももできるようにします。どんな仕事も見守ります。私の宝物も持ってくるので、どうか私の手を返してください」というので「本当なら返すけれども、これからまた悪い心がけを持つようなことがあったら、神様達から懲らしめられるよ」と言って、その手を窓から放り投げておきました。

 何日かすると、大きな箱の宝物と魚が置いてありました。それを家の中に入れ、私は石狩の長者のところに抗議しに行きました。石狩の長者の髪の毛を掴み、梁や柱に叩きつけ「今まで理由もなく、周りの村の者をお前は殺してしまったのだ。これからは決してそのような悪い心がけを持つのではないよ」と言いながら、石狩の長者の顎と頭を子どものようにしました。「これからは決して悪い心は持ちません。どうか生かしてください」と言うので、償いの品を受け取り、家に戻りました。

 神様達にもこのようだったということを話し、私の妻も本当に河童のいうように妊娠して子どもがたくさんできました。「若いときに、石狩の長者が悪い心がけを持ち、周りの村々の立派な者達が悪神に殺されてしまったけれど、私を見守ってくれ、こうしてお前たち子供にもたくさん恵まれているので、おまえたちは決して悪い心を持つことなく、仲間を大事にするのだよ」ということを言いながら暮し、この世を去ったという話をしました。

 

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