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わたしはりっぱな男で、嫁さんも働き者でした。山へ行ってシカやクマをとってくらし、畑をつくり、魚をとってくらしていました。ただひとつ、子どもができなくてさみしかったのですが、メス犬を一匹かっていました。よくはたらく犬だったのですが、犬のおなかが大きくなったので狩りにつれていくのはやめていました。
ある日、狩りにいって、2、3日留守にして帰ったときのことです。若いおんなが火棚の上の肉をふところに入れるのが見えました。どこの人なんだろう?と思ってみるともう、姿がみえませんでしたが、家のいりぐちに、たくさんの子犬をだいたうちの犬がいて、いっしょに干し肉やゆでた肉がありました。
「うちの犬が人間のすがたになって肉をとったんだな」とおもいながら家のなかにはいっていろりの火をたいていましたが、嫁さんはどこへ行ってしまったのか帰ってこないので、わたしは犬に肉や魚をにて食べさせました。
すると、日がくれたころに嫁さんが帰ってきて、狩りにいっているあいだ、よそへ遊びにいっていたことがわかりました。「るすをしたら犬がおなかをすかせるだろうに、かまわずによそに泊まっていたのか!」と腹をたてながら夕食をたべて寝ました。
すると夢の中に、女の神さまがあらわれ、ふたつのなみだ、みっつのなみだをながしながら、ご飯を食べさせてくれなかったことを訴え、こんな嫁さんの家ではくらせないので神の国へかえりたいといいました。
わたしは起きて、犬をそまつにあつかった嫁さんを追いだしました。そして犬がのぞんだとおりに、お腹いっぱいたべさせたあとに、子犬といっしょに神の国へおくり返しました。
その夜、また夢に犬の女神があらわれました。ほほえみながらわたしにお礼をいい、子どもをさずけるやくそくをしてくれました。
わたしは夢からさめて、犬の女神さまのことがふびんでなりませんでしたが、わたしは再婚しました。そして男の子も女の子もたくさん生まれて、わたしは犬の女神さまに感謝しながら、子どもたちにも犬をだいじにするように言いながらくらしていて、やがてわたしは年をとって、この世をさりました。
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