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私は立派な長者でした。狩りをして暮らし、妻も働き者で何不自由ない暮らしをしていました。私の村にはパタッという名の長者がいました。ある時から夜になると、村の向こうから「パターッ、パターッ」と呼ぶ声がして、犬も吠えます。それが夜ごと夜通し続くので、人々は恐がり、暗くなってから出歩く者はいなくなりました。夜眠れない者もいるというのを聞いて、「誰も行ったこともないまま恐れているというなら、私が行ってみようか」と思いながら暮らしていました。そしてある晩、食事をしてから私は行ってみることにしました。隠れながら声のするほうに行くと、大きな木のてっぺんから声がしているのでした。そこで弓矢を取り出して、その声の主を射ると落ちてきました。見ると人間なのでした。「一体何のためにこんなことをするのだ」と聞くと、その者はもがきながらこう言いました。「パタッという長者は、ひとりだけ物に恵まれすぎているので、私は腹が立ち、パタッがいなくなればいいと思ったのでやったのだ」そう言って死んでしまいました。村人たちが集まってきて驚き、「こんなことをする者は死んでしまってもいい」と言い、私はパタッから感謝をされました。
それからはあの声もしなくなり、パタッとは親交を持ちつつお互いに子供が生まれました。今まで通り狩りに行けば獲物に恵まれ、何も恐れるものもなく暮らしましたと、ひとりの男が物語りました。
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