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昔、ある村に立派な男性がいて、狩りをしながら良い暮らしをしていました。ある時どこからか和人がやってきて、一緒に住むようになりました。助け合って狩りに行っていましたが、やがてその人の妹を妻にし、別に所帯を持って暮らすようになりました。妹には男の子が生まれ、可愛がって暮らしていました。
ある時またそのアイヌの男性と和人が連れ立って狩りに行き、妹とその子供は留守番をしていました。すると和人だけが帰ってきて、なにかをじっと考え込み、大きな鍋を火にかけていました。ぐらぐらと煮立つと、妹に「息子を渡しておくれ」と言うので渡すと、なんと煮立った鍋の中に入れて息子を殺してしまいました。妹は「何をするの!」と叫んで飛びかかりましたが、もう死んでしまっていたので、亡骸を抱いて泣きました。すると和人は宝壇をめちゃめちゃにし、宝物である黒い糸玉、白い糸玉を奪って懐に入れました。そして出ていくので妹は追いかけて浜に出ましたが、追いかけきれないので家に戻り、帰った兄に全て話しました。すると兄は声をあげて怒り、和人を追いかけていきました。和人はもう舟に乗って沖へ漕ぎ出しており、遠くに小さくなっているのが見えました。兄は舟で追いかけていき、追いつきそうになると、和人は懐から白い糸玉を出して前方に投げました。すると前方が明るくなりました。そして黒い糸玉を兄のほうに投げると、兄の行く手が暗くなって進めなくなり、和人をとり逃がしてしまいました。兄は泣きながら戻り、神に祈って「あの悪い和人を罰してください」と言い、年老いていきましたので、このように話したのだそうです。
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