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私はシンヌタㇷ゚カの神の勇者として一人で暮らしていた。宝壇には神の鎧があって、まるで生きている人のように太刀を身につけていた。噂を聞くと、トプㇱペッという村があり、そこの神の勇者は悪い心を持っているのか、「移動の宝、透視の宝」を持っていて、それで山を通る人でも舟で通る人でも見つけては、手下に命じて殺して持ち物を奪っているという。私はかわいそうにと思って暮らしていた。またトプㇱペッの男には女きょうだいがいて、その姉のほうがやはり悪い心を持っていて、トプㇱペッの村に行く途中の湖にかかっている細い木の橋を通る者がいると、巫術の息を吹きかけて落としてしまうという噂も聞いていた。 ある日私は「今日は天気がいいので、ようすを見に行こう。人々を殺しているというのはどんなやつだろう」と思い、神の鎧と神の太刀を身につけて、神に祈ってから家の外に出た。何とまあ美しい村なのか、川筋をはるかに見渡しながら私は飛んでいった。 そこで私は憑き神様にトプㇱペッの村に連れていってくれと頼み、風の上に乗せられて神の山のほうへ飛んでいった。そこには大きな湖があって、1本の細い木の橋がかかっている。そこへ私が行くと、どうやら山の頂上に例の悪い女がいて、山の上から出てきては息の風を吹きかけてくるようである。私は神様に頼んで、橋の中ほどまで行ったところで偽の私の姿を出して、風に吹き飛ばされて湖に落ちたように見せかけた。すると女は帰ってしまったようだった。そこで私は無事に湖を渡り、神様に感謝した。 そして山を削った道を登っていくと、山の頂上に大きな家があった。どこから入っていいのかわからないようになっているので、屋根の煙出しの穴から中をのぞいてみると、大きな宝壇の上に例の宝が置いてあり、神の勇者が座って見つめている。 左座には女の寝床がしつらえてあったので、私がそこに静かに入っていくと、何と中には差し上る太陽のように正視することができないほど美しい娘がいた。寝ているようなので、その裾を静かに持ち上げると、初めて起きたみたいに私を見てから、私を静かに引っ張った。その娘は「シンヌタㇷ゚カの神の勇者よ、私の兄は恐ろしい者なのに、どうしてあなたはやってきたのか」という。「トプㇱペッの勇者は評判が高いので、見てみたくて来たのだ」と答え、それから私は彼女の懐の中で大人の営みを遂げた。 するとトプㇱペッの勇者は私がいるのを例の宝で見つけたらしく、大声を上げて立ち上がった。私が彼女を小脇に抱えて逃げ出すと、そいつは太刀をふるって追いかけてくる。家の外に出ると、おおぜいの敵を悪い姉が指揮して「どうやってここにやってきたのか。殺してしまえ」とけしかけた。彼女も私のそばに来て「シンヌタㇷ゚カの神の勇者よ、がんばってください」と言いながら、いっしょに戦ってくれた。 毎日毎日そうやって戦っているうちに、私はどうなったのかわからなくなった。ふと気づくと私はすっかり裸になって川に流され、川岸に打ち上げられていたのだった。まわりを見ると、例の神の娘も、はずかしいだろうにすっかり裸になって川岸に打ち上げられていた。娘も目を覚ますと「どうして私は女なのにこんな恰好をしているのだろう」と涙を流し、「水の女神様、かわいそうだとお思いなら何か着る物をください。」と言った。するとどこからか着物が打ち上げられたので、彼女はそれを身につけた。 それから彼女は私のそばに来て「私が何をしてもどうか怒らないでください」と言いながら、女のお守りの紐を外して、二つにも三つにも切り刻んで巫術の息を吹きかけた。するとりっぱな鎧が現れた。彼女はまた水の神様に私の着る物も出してもらい、私は感謝しながら着物と鎧とを身に着けた。 そして「私は何も悪い心がけを持っていないのです、神々よお守りください」と言いながら、娘といっしょにまたトプㇱペッに行って戦いを続けた。新しい鎧はお守りの紐でできているので、刀も当たらず、とうとう私は例の宝を手に入れて、娘といっしょに自分の村に帰ってきた。
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