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オタスッの村をトパットゥミがおそいました。わたしは、その後に子どもがひとり残されているのを見つけ、かわいそうに思いました。
そして、どうにかしたくて、古い船を探しました。その船の中に食べ物などいろいろと入れて、その子を連れて船に乗っていっしょに逃げました。
やがて、海の真ん中に大きな島がありました。その島のふもとに行くと、砂浜があります。そこに上陸し、家を作るのによさそうなところを見つけました。そこに子どもを連れて、荷物を運び、小さな家を作って、そこでくらしました。
わたしは、耕作したり、魚をとったり、浜辺でコンブなどを集めたりして、その子を育てていました。
そうして3年ほどたちました。この子も大きくなって、何でも手伝ってくれます。家が小さくなってきたので、大きな家を作りました。
さらに年月がたち、子どもが大きくなり、大人の男性らしい顔立ちになってくると、わたしは、
「この子のお嫁さんになるような人をどこかに探しに行っても、そのせいで見つかって殺されたら大変だから、おそれおおいことだけれど、オタスッの村の子孫を広げるため、わたしがこの子の妻になろうかしら」
と考えていました。そして、この子にも、そのように言いました。すると、
「どこに行っても殺されそうなら、結婚しても神から罰されませんよ」
と言うので、わたしたちは連れ添うことになりました。
そしてわたしは、夫に弓や矢の作り方を教えました。それから夫はシカをとって来て、シカや、海辺でとったものなどを食べながら、わたしたちは暮らしていました。
何年もそうして暮らしているうちに、わたしは2人の男の子を生みました。
だんだんと息子も大きくなり、わたしは、
「もう子どもたちも大きくなったので、オタスッの村へ連れて行って、子孫を広げましょう」
と思いました。夫に話すと、賛成したので、わたしたちは村に戻るしたくをしました。息子たちも、船に荷物を入れるのを手伝ってくれます。そして、船に乗って、わたしたちの村へ向かいました。
村に着くと、今はオタスッびとの山城も古くなり、ボロボロでした。息子や夫といっしょに、燃やすものは燃やし、片づけてきれいにしました。
つぎに、夫たちは家の材料になる木を運んできて、大きな家を作りました。そして、子どもたちも大きくなったので、夫は息子たちといっしょに猟に行って、シカでもクマでもたくさんとってきました。そして穀物を作ることもして、わたしたちはおいしいものを食べ、何不自由なくくらしていました。
そして、シカやクマの毛皮を和人の村に持って行って交易もしました。また、わたしは夫に先祖供養をすべきことも教え、神々に祈る言葉も教えました。
こうしてくらしているうちに、わたしも年を取り、先に死ぬように思うので、こういうわけだから、しっかり自分たちの子孫を広げるのですよ、とわたしは話していました。
と、居候の女が語ったお話なのです。
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