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わたしは、姉に育てられていました。姉は、針仕事ばかりをしています。わたしも針仕事をしたくなり、やらせてもらいました。はじめは、しわくちゃの袋ばかり縫っていたので、姉さんは鼻をかんで外に捨ててしまいましたが、毎日針仕事をしているうちに、上手になって、姉さんにもほめられました。
ある日、どこからか神がやって来る音が聞こえました。そして、男の人が入ってきて、
「あなたの妹さんは、心も顔かたちもすばらしいので、わたしにください」
と言います。姉さんは断りましたが、言い負かされてしまいました。わたしは、泣きながらゴザ袋に荷物を入れ、そのまま男の人に連れて行かれました。
雲の上を飛んで、神の国に着きました。大きな山城があります。中に入ると、6人の男がいました。
わたしは、2日も3日も泣いてばかりいて起き上がりませんでした。そこで、
「この人間の女が、われわれの言うことを聞かないのなら、ずっと遠くの山にいるサㇰマンダチ・マタマンダチのところに行かせよう」
と言われました。
そこで、わたしは荷物を背負って、川を上流に行きます。夕方になると、大きな家があります。すると、外に若い神の女性が出て来て、美しい家の中に入れてくれました。そして、その晩は泊まらせてもらい、翌日になると神の女性は、
「わたしはサㇰマンダチ女神です。わたしが着がえて踊りますが、あなたは我慢するのですよ」
と言いました。そして、女神さまは、神の小袖を着て、巫力の強い耳飾りをつけ、灼熱の日ざしが描かれた扇を持って踊ります。すると、暑くなって息をするのも苦しいくらいです。扇であおぐと、灼熱の日ざしがあらわれます。人間の村を見れば、そのせいで干上がっています。わたし自身も死にそうでしたが、炉ぶちにしっかりつかまってこらえていました。6日6晩そうしたあげく、ようやく女神さまは衣装を脱ぎ、「よくがんばったわね」と、別の扇であおいで、わたしの手当てをしてくれました。
「今度は、マタマンダチ女神のところにいくと、今度は雹や氷で攻められるから、しっかり神に祈っていなさい」
と言われ、わたしはさらに山の方へいきました。そして、大きな金の家に着きました。そして、美しい若い女神さまが中に入れて、泊まらせてくれました。
翌日、わたしに「心をしっかり持ってね」と言うと、女神さまは雹が描かれた小袖を着て、雹の描かれた扇を取り出し、巫力の強い耳飾りをして、踊りだしました。踊りながら、扇であおぐと、大風とともに大小の雹が落ちてきて、わたしは死にそうになりました。炉辺をしっかりつかんで、こらえていました。
6日6晩、そうしていますと、女神さまは踊りをやめ、「よくがんばって生きのびたわね」と衣装をしまい、わたしの体の傷の手当てをしてくれました。そして、
「マタマンダチ・サㇰマンダチのところに来たしるしとして、これをあげましょう」
と言って、わたしに神の首飾りを下さいました。
わたしは、感謝しながら、女神の家を出て、下りました。途中、サㇰマンダチ女神の家に泊めてもらいました。女神さまは、
「人間の娘よ、一番年下の雷の神がおまえを好きになって、連れてきたのだが、言うとおりにしなかったので、わたしたちのところに罰を与えによこされたのだね。おまえは、よく耐えたから、神のところに来た証として、これをあげましょう」
と言って、わたしに神の首飾りをくださいました。わたしは、それをゴザ袋に入れますと、
「気をつけて戻りなさい。おまえが雷の神の家についたら、ゴザ袋をほどいてみなさい」
と、わたしに教えてくださいました。
わたしは、雷の神の山城に戻ると、女神さまに言われたとおり、ゴザ袋をほどきました。そうすると、家の中はハチでいっぱいになりました。男たちはハチに刺されています。
そしてわたしは、神の力で運ばれて自分の山城に戻ってきました。煙も出ておらず、中に入ると姉さんが横になっていました。「帰ってきたわよ」とわたしが言うと、姉さんはわたしに飛びついてきました。わたしも姉さんに抱きついて、泣きました。姉さんは、
「わたしの話し相手は、おまえだけだったのに、連れられていってしまったものだから、わたしは毎日泣いて横になってばかりいたのよ」
と言いながら泣いています。わたしは、
「神のおかげで、わたしは生きて戻れたのよ」
と言って、これまでのことを話しました。そして、
「実はわたしたちはハチの神なのに、それを知らないでわたしを連れて行ったものだから、雷の神たちがハチに刺されている中、わたしは逃げてきたのよ」
と言いますと、姉さんは驚いていました。
それからは、姉さんとおしゃべりしながらくらしていましたが、どこからか立派な長者が来たので、姉さんも、わたしもいい夫をもらいました。
一方、雷の神は、わたしの一族がハチだなんて思わなかった、と言っていたということです。
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