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物語や歌

C0124. 神の娘に恋をした(エイノ)

あらすじ

 

 ウタクンペチ、ウサルクンペチの尾根に沿って、私は上がって行った。どうしたことか、林の根元の方で何かが光っているようだった。しかし私は振り向きもせずに、尾根に沿って上がって行った。すると娘の歌声が聞こえた。

 高いところに上がって見ると、なんと木原は美しいことか、木原の真中にウバユリの野原があった。そしてどこの村で生まれたものか、美しい若い娘が歌を謡っていた。ウバユリ掘りをするために頭を下げ、歌う声が響いていた。

 その娘は左側の袖を脱ぎ、歌いながらウバユリ掘りをしていた。私は背後から隠れて近づいて行き、娘の乳房を押さえつけた。すると、突然私は何もわからなくなってしまった。しばらくして気が付くと、私は木原の下で手を拡げてひっくり返っていた。見るとその娘はどこへ行ったのか、姿が見えない。

 私は情けなく思いながら家に帰った。私の奥さんは「どこに行っていたのですか」と言い、食事の支度をした。私は家の中に入って、宝物壇の前で服を被り寝ていた。私の奥さんは炊事をして「起きて食事にしましょう」と言うが、私は食事もとらなかった。何日も寝ていた。私の奥さんは炊事をして食事を差し出すが、私は食事をとらなかった。

 私の奥さんは「何がほしくて寝ているのですか。一緒になりたい女性でもいるのなら言ってください。私が探します」と言うが、私は何も言わずにいた。私は何も食べずにいるので、お腹がすいたが、起きるのもつらかった。

 ある晩私は夢をみた。神のような娘が私の頭の先に座っており、怒った顔をしていた。娘はこう言った。

 「話をしますから聞いてください。私は雷神の娘です。私の父、私の母が「人間の村でウバユリを掘ってくるとよい」といって私を使いに出しました。私は大きな背負い袋を背負い、人間の村に下りました。ウバユリを掘っていると、突然私の乳房をあなたが押さえつけたのです。私は驚いて荷物をまとめ、神の村へ戻りました。私の母は「まさか人間のところでいたずらをしたのでは」と言いましたが、私は「何もいたずらはしなかった」と言いました。それから見ていると、あなたは心を痛めて毎日寝ています。私の父母もその様子を見て、「仕方がない、人間の長者が心を痛めて寝ている。おまえは人間の村に下りて、ニ、三年一緒に暮らし、男の子、女の子が生まれたら神のところへ戻ってきなさい」と言いました。仕方ないので、私は下りていきます。人間の長者よ、明日私は下りていきます。」

 しばらくして私は目が覚めた。もう朝になっていた。私の奥さんに夢の中のことを話すと、奥さんも夢をみたらしく、そのことを話した。顔を洗い火の傍にいると、低い幣の列の端で火がはねるような音がした。

 私は起き上がって見ると、立派な板屋があった。私はその傍へ行って、静かに戸口のすだれを開け、中に入った。

 中に入って見ると、このあいだの娘が糸をつむいでいた。私は上座に座った。娘は起き上がって、炊事をするために歩きまわり、よい御馳走をつくった。そして薄造りの御椀、薄造りの御膳を出して盛り付け、私に差し出した。私は受け取って御馳走を食べ、残りの半分を娘に差し出した。娘はそれを受け取って食べた。

 食べ終えると、私の奥さんが入ってきた。そして、「よかったよかった」と言い挨拶をした。私は感謝の気持ちを抱き安心した。

 それから私は山に行き、クマでも捕り、何不自由なく暮らしていた。神の娘とともにいると、神の娘はやがて妊娠した。すると私の奥さんは喜んで神の娘を大事した。それから男の子が生まれた。私の奥さんは喜び、子供を背負い仕事をした。

 その後、神の娘はまた妊娠し、女の子が生まれた。私の奥さんは喜び、神の娘には仕事をさせず、一人で家の仕事をした。よい暮らしを続け何年かたつと、神の娘は私に言った。

 「人間の長者、話をしますから聞いてください。私は神のところに戻ります。決して私のことで心を痛めないでください。男の子は残していきます。成長すると名のある者になるでしょう。人間の奥さんとの間にも二人か三人か子供が生まれます。私は神ですから、神の世界へ戻っても決して私のことで心を痛めないでください。」

 そう言うと、「神の村へ戻ります」と言って私の娘と天へ去っていった。その後で私は心を痛めながらいたが、男の子を残してくれたので、私は気持ちを落ち着けた。私の奥さんにもたくさん子供が生まれ、何不自由なく暮らした。神にも感謝の祈りを述べた。子供たちに「こういう訳でおまえたちの兄は神の子孫なのだ。何をするにしても神を敬っていると運が向くものだぞ」と言い聞かせた。そして年老いたので話すのだ、オタスッの人だかが物語った。

 

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