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(日本語による語りのみ)
私には両親がおらず、姉と二人で暮らしていた。私は成長すると姉を手伝い家事をした。ある時私は村や山を歩き回ってみたいと考えた。
(以下アイヌ語による語り)
姉に「村の様子を見て回りたい」と言うと、姉は「遠くに行ってはいけませんよ」と言った。外へ出て山に行くと、野原(キヌプトイ)に出た。私はその美しさに感嘆し辺りを見回した。野原に沿って道があり、その道に沿って行くと、粟(ムンチロ)や稗(ピヤパ)が植えられていた。私は好ましく思いながらさらに進むと、野原の中に大きな家があった。
家の傍へ行って咳払いをすると、家の中で「お入りなさい」という女性の声がした。家の中に入ると神のような女性が座っていた。その女性は笑みをうかべながら「どうして歩き回っているのですか」と尋ねるので「村の様子を見て回りたいと思い来たのです。穀物の素晴らしい様子を見て感嘆しうらやましく思いながら来ました」と答えた。
するとその女性は笑いながら「私は上天(リクンモシリ)から降りてきました。この粟や稗を人々が植えるとよい思い育てていました。この粟や稗をあなたに与えます。背負っていってお姉さんや村の人々に事情を話し、村の人々が育てるようになれば、これからはうらやましく思うこともないでしょう」と言った。そして外に出て種を取り粟や稗をたくさん私に持たせた。
私は喜び感謝しながら家に戻った。姉に事情を話し、村の人たちにも種を分け与えた。そして穀物をたくさん植えた。「上天から神の女性が種を背負ってきたおかげで、粟や稗をたくさん植えてよい暮らしができるのですから、酒宴の際には忘れずに神を祭るようにしてください」と私は話した。
それから姉は長者と結婚し、私も立派な青年と夫婦になった。私は別の家を建て、たくさんの子供に恵まれた。姉とも親しく往き来し、子供たちにも事情を話して聞かせた。そして年老いたようだ、とどこかの女性が語った。
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