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物語や歌

C0150. エゾマツと魔鳥

あらすじ

 

 石狩川中流の村長と石狩川下流の村長は互いに仲が良く、それぞれひとり息子を持っていました。年を取ってからはお互いに行き来もしなくなりましたが、ある時噂に聞くと、下流の村長のひとり息子が山で行方不明になり、人手をくり出して探しても見つからないというのです。中流の村長は息子に「おまえも忙しいだろうが心配だから探しに行ってあげなさい」と言いました。それから息子が探しに行きましたが、依然として行方は知れませんでした。
 ある日中流の村長の息子は石狩川をさかのぼって行きたくなり、どう我慢してもだめなので出かけていきました。前から引っ張られるようにして進んでいくと、はげ山の上に一本のエゾマツが立っているのが見えました。つかまる物もない山にどうにかして登っていくと、エゾマツの枝が下にたれ下がっているところに、わずかに煙が立っているのが見えました。葉を透かして見ると、中に顔を洗っていないために色が黒くなった、行方不明の若者であろう人が火をたいてたばこをふかしているのが見えました。そこでまわりを歩きながら「私も入ってはいけないでしょうか」と言うと、その若者は「お入りなさい。身の上話をいたしましょう」と言うので中に入りました。挨拶を交わしてから何かを尋ねても、若者は言葉を話すことができませんでした。そこで持ってきた食べ物をちぎって火にくべながら、火の神、エゾマツの神に「夢でわけを教えてください」と祈りました。そして若者と一緒に持ってきた肉を食べてから眠りにつきました。すると黒い着物を着た女性が夢に出てきてこう言いました。「私はエゾマツの女神です。ある時木が大きく揺れたので驚いて見ると、魔鳥ケソラㇷ゚がこの若者をかどわかして連れてきて、私の枝の上にとまっていたのでした。若者が飢え死にしたら魂を取って結婚しようとたくらんでいたので、私の枝で作った家の中で食べ物を与えて守っていました。そして頼りになる人間を探していると、あなたが適任だと思ったので、ここに来させたのです。矢でケソラㇷ゚を射てくれたなら私が手助けをします」。やがて木が揺れて、木の上に何か黒いものがとまっているのが見えました。そこで特別な矢を出して射たところ命中しました。
 翌朝あの若者は話をして「何かの悪い神が私の言霊をつかんでいたので話すことができませんでした。ある日私が山を歩いていると、霧がかかり、どこを歩いているかもわからなくなりました。さんざんに歩いたあげくにこのエゾマツのところに来て、守られて暮らしていたのです」と言いました。話は後でゆっくりと思い、若者を連れて川を下っていきました。途中で石狩川の上流の村長のところで休み、自分の村へは寄らずに河口部まで下りてきました。そして若者は家族と再会し、皆で喜んで泣きました。そこでとりあえず私は家に帰り、父にわけを話すと喜んでくれました。眠りにつくと、黒い着物を着た女性がふくれっつらをしてこう言いました。「私があの若者を好きになり、かどわかしたのだったが、おまえに射られてしまった。まだ痛いけれど、死ぬことはないのでこれからもあの若者を狙い、人生なかばで自分のものにするつもりだ」と言いました。そこで夢の話を父や石狩川の下流の村長たちにすると、皆で神に抗議しました。するとまた夢にあの女性が出てきて「神々にさんざん叱られたので、もうあの若者のことはあきらめることにした。無事に人間の寿命を全うできるでしょう」という夢を皆で見ました。それからエゾマツの神のところに行って、木幣や酒を捧げて祈りました。それからは石狩川の中流と下流、お互いの家を行き来しながら仲良く暮らし、お互いに結婚して子供もできました。子供たちにはエゾマツの神に祈ることを忘れないようにと言い置いて死んでいくのですと、石狩川中流の村長の息子が物語りました。

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