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物語や歌

C191. 釧路の男の霊が石狩に婿入りして幸せになる話

あらすじ


 私は石狩川の河口部でおばあさんに育てられている娘です。おばあさんは何をする時でも泣いている人でした。私が少し大きくなると、おばあさんは動けなくなり、私が山菜の煮物を作って食べさせていました。

 一人前の娘になった頃、ある日家の前に男性が立っていました。家に招き入れるとおばあさんと挨拶を交わし、一緒に食事をしました。翌日にはどこかへ行くのだろうと思っていましたが、私が外に出ると、臼の上にギョウジャニンニクの束が置いてありました。不思議に思いつつ家に入ると、その男性はおばあさんに「弓矢を貸してください」と言いました。そこで弓矢と矢毒を貸すと、狩りに出て大きなクマをとって来ました。それを料理して食べると、おばあさんは「夢のようだ」と言って喜びました。それから男性はどこへも行かずに家にいて、狩りをしてクマやシカをとって来ました。そしてある時「お孫さんを私にくださいませんか」と言いました。おばあさんは喜んで承諾し、私はその男性と結婚しました。
 旦那さんは狩りが本当に上手で、何不自由ない暮らしをしたのでおばあさんは喜びました。そのうちに妊娠し、男の子が生まれ、次に女の子が生まれました。おばあさんは可愛がっていましたが、娘が歩けるようになる頃におばあさんは死んでしまいました。

 娘が上手に歩くようになってからは、旦那さんはどこかへ行って夕方帰って来たり、明け方に帰って来たりしていました。ある時2,3日狩りを休んでから、このように言いました。
 「妻よ、良く聞きなさい。私は実は生きた人間ではなく、人間の魂なのだ。クスルという村で、どうして自分が生まれたのかわからないで暮らしていた。まわりの人からは悪く言われ、若者になった頃に殺されてしまった。供物もなくあの世へ行ったところ、神の祖父に『このままでは駄目だ。石狩川の河口部へ行き、孫を育てているおばあさんのところへ行ってその孫と結婚し、跡継ぎを残したなら初めてあの世で暮らすことができるのだ』と言われたのだ。そこであの世のギョウジャニンニクを持ってここにやって来た。私はもうあの世に帰らなければならない。私が去った後にすぐ若い男性がやって来るので、結婚して子供たちの父になってもらいなさい。そしてわけを話し、私に祈って供物を捧げてくれたなら、初めて私は神の仲間入りができるのだ。新しい旦那さんとの間に子供ができても、私の息子である長男には私を供養させておくれ」。そう言って旦那さんは外に出て行き、姿が消えてしまいました。
 翌日には若い立派な男性が訪ねて来て、家に入ると子供たちが「お父さん」と言ってなつき、その人もとても可愛がってくれました。

(死人の魂だった旦那さんは、死人は川を越えることができないものだと言うけれど、川を越えて行ってクスルの村を滅ぼしたといいます)

 そして消えた旦那さんを供養して暮らし、私たちのいるところには小さな村ができ、子供たちも結婚してやがては大きな村になりました。子供たちはシカやクマをたくさんとって、村人たちと分け合って暮らしていました。
 私も年老いたので、子供たちには「先祖供養をしてもらわないと、先祖の国には行けないものだ」と言い置いて死んで行きますと、ひとりの女性が物語りました。

 

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