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物語や歌

C0195. 六重の喪服を着た男

あらすじ

 

 私はある村のある家でひとりきりで暮らす女の子です。どうして生まれたのかわからずに、毎日ひとりで家の中を掃除しながら暮らしていました。
 人間というものを見たことはなかったのですが、ある時私の家に男の人だと思われる人がやってきました。その人は六枚も喪服を重ねて着ていました。その人が持ってきた肉を料理し、一緒に食べました。翌日はどこかに行くのだろうと思っていましたが、そのまま一緒に暮らすようになり、その人がとってくる獲物を食べて暮らしていました。
 そしてある時その男性から「妻になっておくれ」と言われたので結婚しました。夫は働き者で、私に獲物のさばき方、仕掛け弓の仕掛け方などを教えてくれました。そのうちに私は妊娠しました。すると夫は口を開き「私は石狩川筋の出身で、そこには父と母、兄がふたりいるのだ。兄たちは嫁をもらわずにいて、私が先に結婚すると、なぜか私が山猟に行っているうちに妻がいなくなってしまうのだ。もう6人もの妻が行方不明になったので、このように喪服を着て家出をしてきたのだ」と言いました。そして生まれ育った家に一緒に来て欲しいと言われ、身重なので断りましたが熱心に頼まれたので、一緒に行くことにしました。

 道中、戻るときに必要だからと、夫は木を削りながら行きました。石狩に着くと、途中に川辺の洞穴があり「何か恐ろしいことが起きたら、ここに隠れたらいい」と夫は言って、荷物も全部そこへ隠しました。夫は村長の息子だったようで、村長の家にひとりで入っていってしまいました。私が外で休んでいると、夫の妹らしき若い女性が「かわいそうに」と言って私の手を取って、家に招き入れてくれました。家の中では酒宴を開いて息子の帰りを祝っているようでした。おしゅうとさんたちが夫にさんざんお酒を飲ませると、夫は倒れてしまいました。兄たちが夫の持ち家である隣家に運んでいったので、後から様子を見に行くと、夫はひとりで寝ていました。声をかけると、なんと夫は死んでいるのでした。驚いて泣いていると、壁際にきれいな女性が立っていて「泣かないで逃げなさい。ここにいてはあなたも殺されてしまいます。ここの家の男たちは、末の息子が優秀なのをねたんで妻を次々に殺し、とうとう末息子も殺してしまったのです。さあ逃げなさい」と言って、その人は消えてしまいました。きっと殺された先妻の中のひとりだったのでしょう。それから急いで逃げて川岸の洞窟に隠れ、そこでひとりで男の子を出産しました。その子を抱いて、来る時に削った木を頼りに何とか家に戻り、泣きながら息子を育てました。

 (ここから息子が語る)私の母は、私がものごころついた時から泣いてばかりいる人でした。そして絵に描いたりして男の仕事を教えてくれていました。大きくなってから、どうして泣いているのかと聞くと、私が生まれる前に起きたことを全て話してくれました。父と母がかわいそうで、私は敵討ちに行く決意をしました。母は止めたけれど、どうしても行くというと「ならば昔削った木の目印を頼りにし、そして仮小屋の跡をたどっていきなさい」と送り出してくれました。母に言われたとおりに進んでいくと、やがて大きな村に着き、村長の家に乗り込みました。老人の髪をつかんで「俺がわかるか」と言いました。老人は動揺していましたが、そのふたりの息子とともに私が殴りつけて殺し、家の外でごみと一緒に燃やしてしまいました。父が死んだ家に行って掃除をし、泣きました。村人たちは私の敵討ちを喜んでくれ、一緒に父の供養をしました。 

 母のところに帰り、私について来てくれた人たちと小さな村を作り、結婚して子供ができ、母を見送った後で自分も年を取りました。子供たちに供養をしてくれるようにと言い残して死んでいきますと、ひとりの男が物語りました。

 

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