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物語や歌

C0196. 夜襲に滅ぼされた村の孤児姉弟の話

あらすじ

 

 私は石狩川の村で暮らす男の子で、姉がひとりで私を育てていました。姉はどういうわけだか泣いてばかりいて、泣きながら私を背負って仕事をし、食べ物のおいしいところを私に食べさせながら暮らしていました。私が少し大きくなると、姉は私を置いて山へ行くようになりました。ある時留守番をしていると、私の家の前を流れる川の向こう岸に3人の男が来て、ヨシ原に隠れたのが見えました。帰ってきた姉にそれを報告すると、泣きながら「おまえは大きくなったのだから、わけを話しましょう」と言って今までのいきさつを話してくれました。
 「おまえがまだ赤ん坊の頃、私がおまえを背負って山へ遊びに行っていると、村のほうから悲鳴が聞こえてきました。そこで恐くなり、大きな倒木の下に隠れていました。しばらくして村へ帰ってみると、悪者に襲われたのか、みんな死んでしまっていたのです。そこで私は村はずれに家を建て、おまえとふたりで暮らしていたというわけです。でも悪者たちはまだ誰か生きているのではないかと思い、様子を見に来たのでしょう。これからは私の言う通りにしなさい」と言って、お腹いっぱい私にごちそうを食べさせてくれました。そして「今食べたら、朝ご飯は外の木のところにあるからね」と言って、姉は家の隅に穴を掘り、そこに私を入れて上から干し草で覆い、目だけが見えるようにしてくれました。そして姉はひとりで食事をして泣きながら歌を歌いました。歌の内容は「私はひとりで暮らしている」というものでした。そのうちに3人の男が山刀をふりかざして入ってきて、姉が本当にひとりで暮らしているのかを確認すると「飯炊きをさせるために連れていこう」と相談し合い、泣いて嫌がる姉を無理矢理連れていってしまいました。

 私は朝までじっとしていて、翌朝外に出て姉の言った通りご飯を食べました。川の川上川下を見渡していると、突然片肌を脱いだ男性が走ってやってきて私の頭をなで、私を担ぎ上げて石狩川の上流方向へ行きました。そして源流が接するユペッ川を走り下っていきました。ユペッ川筋の村にある一軒の家に入っていくと、おじいさんとおばあさんがいて「息子よ、こんなにかわいい子をどこから連れてきたのだ」と聞き、食事をさせてくれたり色々と世話をしてくれました。でも姉のことは恐いので黙っていました。私を連れてきてくれた男性を「兄さん」と呼んで、狩りについていったりしながら私は成長していきました。
 私が成長すると、老夫婦は改めて私に、ここに連れてこられるまでのいきさつを尋ねました。そこで今までのこと、姉のことを説明すると「石狩の川上の村が襲われたという噂を聞いていたが、おまえはその村の村長の子供なのだな。これから石狩川の下流の村に行き、親の仇を取ってお姉さんを探しなさい」と言ってくれました。

 兄と、力自慢の村人たちと一緒に出かけていき、一軒の家にたどりつきました。私がひとりで家に入っていくと、家の男たちは寝ていました。寝ていた女性は着物の袖の穴から私を見て「弟ではないのかい」と言って飛び起きました。そこで姉に私の仲間が大勢来て隠れているのだと告げました。それから兄たちは神に祈り、村には血のかたまりが落ち、村人たちはみんな寝入ってしまい、悪者たちの喉を切って殺してしまいました。
 実の父の村から奪われた物を取り返し、父たちの供養をしました。姉を連れてユペッの村に戻ると、老夫婦が喜んでくれました。姉をさらっていった男のひとりは、姉を嫁にしようとしていて、悪い男ではないと思ったので殺さずにおき、やがて姉と結婚してユペッの村で暮らすようになりました。老夫婦を見送ってから、その息子である育ての兄も私も結婚して子供ができ、幸せにくらしました。
 子供たちに「自分たちはもともとユペッの人間ではないから、でしゃばることなく、ユペッの人たちと仲良く暮らしなさい」と言い置いて死んでいきますと、ひとりの男が物語りました。

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