ヘッダーメニューここまで

ここからメインメニュー

  • 自然図鑑
  • アイヌ語辞典
  • アイヌの伝承
  • 物語や歌
  • 絵本と朗読
  • 語り部
  • スタッフ

メインメニューここまで

サイト内共通メニューここまで

ここから本文です。

物語や歌

C0205. シャチの耳輪

あらすじ

 

 私はユペッに暮らす男で、父と母、姉と一緒に暮らしていました。父はもう年を取って狩りには行けませんでしたが、私が代わりに狩りに行っているので、何不自由ない暮らしをしていました。
 ある夜、寝ていると女性の叫び声が聞こえたように思いました。起きて耳を澄ませると聞こえず、寝ようとして横になると聞こえるのです。私の様子を見て父が「どうしたんだ」と尋ねるので「女性の叫び声が父さんには聞こえませんでしたか」と聞くと「私には聞こえないが、女性がひどい目にあっているのを神が知らせているのではないだろうか。声のするほうに行ってみなさい」と言いました。

 そこで私はすぐに外に出て、ユペッの支流を上流に向けて走っていき、本流と合流すると、今度は川下のほうへ走っていきました。すると何かが川の中でキラキラと光っています。水が渦巻いているところで何か光る物が浮き沈みしているようでした。浮かんだときに川に飛び込んで光る物をつかんでみると、何と人間の女性が死んだようになっているのでした。以前父に教わった通りに、うつぶせにして背中を押して水を吐かせると、息を吹き返しました。その女性は、片耳にシャチの形がついた耳輪をしていました。肩に担いで家まで戻ると、父が神に助けを求める祈りをしていました。姉の寝所に連れていき、女性同士の方がいいと思ったので、姉に介抱を頼みました。姉は驚いてすぐに色々な手当をしましたが、体中傷だらけでひどい状態でした。体を暖めたりしていると、女性はやっと気がつきました。そしてそれからは少しずつですが快方に向かっていきましたが、泣いてばかりいるので、気の毒でわけも聞かないままでした。足が折れているので歩けず、姉が色々と世話をしてあげていました。

 ある夜夢に神のような老人が出て来てこう言いました。「これ若者よ、よく聞きなさい。昔私があちこちを旅している時に見かけたこの娘、そしてその両親ほど心の美しいものはいないのです。でもこんな目にあっているとは知らずにいて、あなたの父の祈りで初めてこのことを知ったのです」。その夢を見て、この娘が神に守られているので耳輪をしているのだとわかりました。そして女性が何とか歩けるようになった頃、父はこのように言いました。「どんな時でも子供のことを心配するのが親というものだ。あなたの両親も心配しているだろうから、どんな事情があるのか話してはくれまいか」。すると娘は泣いてしまいましたが、私からも頼むとやっと口を開いてくれました。

「私はユペッの本流筋に住む村長の娘です。父母と兄たちは私を大事にして、仕事は何もしなくていいからと言うので、私は針仕事ばかりをしていました。姉はまきとりや炊事をしていましたが、私は手伝いませんでした。ある時姉が「オオウバユリ掘りをしに行こう」と誘うので、やったことがないのに一緒に行きました。オオウバユリ掘りをしていると、突然姉が私の髪の毛をねじり上げたところまでは覚えているのですが、それきり何もわからなくなり、気がついたらあなたに助けられて、こんな体になっていたのでした。恥ずかしいやら申し訳ないやらで、泣いてばかりいたのです」。そう言うので、私の家族は皆驚いてしまいました。

 ある時、父が「ご両親が心配しているだろうから、娘さんを家に送ってあげなさい」と言うので、姉と3人で出かけていきました。歩きにくいところは手を貸しながら、ユペッの本流に行くと大きな村がありました。娘の家に入ると、娘の父母や兄たちが、頭から着物をかぶって寝ており、ただ姉だけが働いていました。娘が「生きて帰ってきました」と言っても、誰もすぐには信じず、こちらを見ることもしませんでした。でも耳輪を見ると「娘よ」「妹よ」と言って、無事を喜んで皆で泣きました。その父である老人はこのように言いました。「姉妹でオオウバユリ掘りに行ったのに、姉がひとりで帰ってきたのです。『妹は水を飲みたいと言って川に流されてしまった』と言うので、村人たちみんなで探しに行きましたが、見つからず死んでしまったと思い、頭から着物をかぶって泣き暮らしていたのです」。姉を問いつめると「同じ姉妹なのに、皆妹にだけ何もしなくていいと言って、私はまるで召使いのように働いた。妹を殺して川に捨てたのに、見透かされてしまった」と言うので、兄たちが髪の毛をつかんでさんざんに殴り、外にほうり出してしまいました。

 私はその家族に感謝され、父である人は「下の娘ばかりを大切にした私たちも悪かったけれど、こんなにひどいことをするなんて」そう言って姉をののしりました。私が家に帰ろうとすると、娘は何かを両親に耳打ちして、改めて父である人が私にこう言いました。「娘はあなたに感謝をしているので、あなたと結婚し、色々とお世話がしたいと申しております」。そこでそれを承諾し、その娘を連れて帰ることにしました。でも女手がなくなってしまうので、私の姉とその家の長男を結婚させ、残して帰ることにしました。娘とふたりで家に戻り、両親に報告すると、とても喜んでくれました。それからあの娘は嫁として、体が不自由ながらも一生懸命働いて、母には楽をさせてあげられました。その後は嫁の実家と行ったり来たりしながら、何不自由ない暮らしをし、両親は孫の顔を見てから死にました。次々と子宝にも恵まれ、私も年老いて死んでいきますと、ひとりの男性が物語りました。

 

本文ここまで

ページの先頭へ戻る

ここからフッターメニュー