ヘッダーメニューここまで

ここからメインメニュー

  • 自然図鑑
  • アイヌ語辞典
  • アイヌの伝承
  • 物語や歌
  • 絵本と朗読
  • 語り部
  • スタッフ

メインメニューここまで

サイト内共通メニューここまで

ここから本文です。

物語や歌

C0206. 白い犬の水くみ

あらすじ

 

 私は人間の兄さんと暮らしている一匹の犬でした。兄さんは私をかわいがってくれましたが、申し訳ない気持ちでいました。人間になれたら家の仕事ができて兄さんも助かるのに、と思いながら毎日暮らしていました。
 ある日手桶をくわえて川へ行き、水をくもうとすると、つんのめって川に落ちてしまいました。流されてしまいましたが、手桶はしっかりとくわえたままでした。やがて河原に上陸し、手桶を見ると水が入っていたので嬉しく思いましたが、ひどく疲れていたので荒い息をして、そのまま眠ってしまいました。すると私の上で神様の来る音がゴーゴーと鳴り響き、目を覚ますと、私のそばには白い犬の毛皮があり、私は美しい人間の娘になっていました。きっと人間になりたがっていた私をかわいそうに思って、何かの神様が願いをかなえてくれてのでしょう。私はさっそく毛皮を持って家に帰り、手桶で水をくみ、火をたいてみました。そこへお兄さんが帰ってきて、かまどの煙があがっているのを見て不審に思い、窓から家の中の様子を見てから入ってきました。私にわけを尋ねるので、正直に今までのことを話しました。すると兄さんは喜んでこう言いました。

「おまえがまだ小さい頃に私が山へ狩りに行くと、目の前に一匹のオオカミが現れて、おまえを私の前に置いて森へ帰ってしまった。神様からの授かり物だと思ったので、おまえを大事に育て、椀ではなく宝物の鉢でおまえに食事をさせていたのだ」と言って、それからは人間として兄さんと一緒に暮らしました。家の仕事をしながら暮らし、いつしか一人前の娘に成長しました。

ある時夢を見て、家の神窓から神のような立派な白い着物を着た女性が顔を出し、私にこのように言いました。「娘よ、よく聞きなさい。オオカミ神と言っても、ひとりふたりではないのです。おまえの父はその中でも最も位の高い神であり、おまえが兄さんと呼んでいる男の両親は、オオカミ神を敬って祈りを欠かさなかったので、父神はとても喜んでいました。しかしある時伝染病がはやり、男の両親は死んでしまい、息子がひとりだけ残されてしまったのです。そこで父神は、ひとり娘のおまえを男の元に遣わし、クマやシカをとらせて生活の手助けをさせようと思ったですが、おまえがあまりにも人間になりたいと思っているのを不憫に思い、人間の姿に変えてあげたのです。これからはこの若者と夫婦になって暮らしなさい。子供が2,3人できたら、女の子を連れて帰っていらっしゃい。おまえがいなくなった後には後妻が来るでしょう。そしてまた子宝に恵まれたなら、おまえの夫を神の国に呼び寄せなさい。神の国に帰るまでは夫に尽くすのですよ」。
 朝目を覚ますと、兄さんも同じ夢を見たと言い「神の娘さんなのでおそれ多いことですが、神の意向なので一緒になりましょう」と言いました。そして兄さんと夫婦になり、私が仕事をしようとしても夫は何もさせずに私を大事にし、私は炊事くらいしかすることがありませんでした。やがて一番最初に男の子が生まれ、次に女の子がふたり、次々に生まれました。夫には「私が少し病気をしても、それは神の国にいる父神が帰ってこいと言っているのです。私が死んでもあなたはすぐに新しい奥さんをもらい、その人との間の子供たちとも、私との子供たちとも仲良く暮らしてください。そしてオオカミの神に祈ることを忘れないでくださいね。私が死んでも、人間の先祖のところに行くのではありません。オオカミ神のところに行くのですから、供物の送り場所は神の国ですよ」そう言って、私は死んでいきました。

(ここから夫が語る)良い妻を失ってしまいましたが、神の意向なのでどうしようもないと思っていました。そのうちに美しい女性がやってきて一緒に暮らし、子供が2,3人できました。子供たちも大きくなった頃、私も病気をして神の国に呼ばれ、子供たちには「人間の先祖ではなく、オオカミの神に祈るのだぞ」と言い置いて死んでいきました。
 その後子供たちは、言われた通りにオオカミの神に祈りながら暮らし、みんな年を取って死んでいきました。

 

本文ここまで

ページの先頭へ戻る

ここからフッターメニュー