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私はひとりで暮らしている男でした。ひとり暮らしなので、猟から帰ってくると自分で食事の支度をしていましたが、ある日猟から帰ってくると、私の家にかまどの煮炊きの煙が上がっていました。不思議に思いながら家に入ると、白い着物を着たきれいな女性が料理を作っていて、私にそれを出してくれたので食べました。翌日にはどこかに行くのだろうと思っていましたが、どこへも行かずに毎日私の料理を作ってくれました。とても料理が上手で、穀物の料理をとてもおいしく食べさせてもらっていました。
ある日、私は猟へ行かず、女性も出かけずに家で針仕事をしていました。そこでこっそりと白い糸玉の糸に針を通し、女性の着物のすそに縫いつけておきました。すると女性が外に出ていくと、糸玉が転がり、糸をたどっていくと村人たちの畑につきました。先日村人たちがヒエを作っておいたのがなくなると言っていたのを聞かないふりをしていたのですが、そこで穂を摘んでいる一匹の大きなウサギを見ました。そこで家に帰って普通にしていると、あの女性が帰ってきました。顔色が曇っていて、いつも通りに食事を済ませるとこのように言いました。
「人間の男性よ。よく聞いてください。私は人間ではなく、天の国のウサギ神の娘なのです。神の国を見回しても私にふさわしい男はいませんでした。そこで人間界に目を向けると、あなたが私にふさわしいと思ったのでここにやってきました。妻になって子供をもうけたならば、ウサギの嫁、ウサギの子と人から笑われると思ったので、妻にはならず、あなたの世話をするためだけにやってきたのです。でももう年を取ってしまったので、神の国へ帰ります。でもすぐにどこからか別の女性がやってくるでしょう。酒をつくったときは、天のウサギ神に祈りますと言って木幣を添えて捧げてください」。
そして翌日、その女性は大きな年寄りウサギになってどこかへ行ってしまいました。そしてどこからか女性がやってきたので、妻にして子供ができました。そこで言われた通りにウサギ神に祈り、子供たちが成長したらウサギ神に祈るようにと言い残して死んでいきますと、ひとりの男が物語りました。
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