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私はオサツナイに住む男ですが、貧乏人なので村はずれの小さい家で暮らしていました。狩りに行っても獲物をとることができず、恥ずかしく思っていました。死にたい、家を出たいなどとばかり考える日々でした。
ある日家を出て海辺を歩いて、死んでもいいと思っていると、前方に何かピカピカと光るものが見えてきました。私のそばに来ると、それはツノの生えた蛇なのでした。私は驚いて着物を脱いで地面に置くと、蛇はそこにツノを落とし、戻っていきました。私は拝礼をしてそのツノを受け取り、家に戻って箱の底に大事にしまっておきました。それからは狩りに行くと獲物に恵まれ、とても喜びました。貧乏人であったことを忘れて裕福な暮らしをしていると、ある日村長がやってきました。初めて人間というものを見て楽しく色々な話をしていると、「何か秘密の宝を持っているだろう」と言うので「何も持っていません」と言うと、そのまま帰っていきました。そしてまた再び、酒やたくさんのごちそうを持ってやってきました。そして私を酔わせ、また「秘密の宝を持っているだろう」と聞くので、最初は知らないと言っていましたが、とうとうあのツノを出して見せてしまいました。すると村長は「これを買い取る」と言って、持って帰ってしまいました。それからは狩りに行っても前のように獲物がとれず、貧乏に戻ってしまいました。後悔して布団をかぶって寝ていると、夢を見ました。
白い着物を着たきれいな女性が言いました。「私は蛇の神です。あなたは貧乏人だけれども心がきれいなので、同情して宝物をあげたのに、どうして村長にあげてしまったのですか。村長はあの宝を持っていても、それは私の意向ではないので長者にはなれません。明日、村長は私がここに来て宝物を返すように仕向けます。あなたはその宝でまた裕福になり、蛇の神に祈るようにしてください。木幣を蛇の形にして海に流すのです。そうすれば、あなたはまた裕福な暮らしができるでしょう」。
翌日、女性の言った通りに村長があの宝を持って謝罪に来ました。そこでまた箱の底に大切にしまい、神に言われた通りに蛇の神に祈りました。するとまた獲物がとれるようになり、何不自由ない暮らしをするようになりました。するとどこからかきれいな女性がやってきたので、結婚して子供ができ、私は年を取りました。子供たちに蛇の神様に祈ることを忘れないようにと言い残して死んでいきますと、オサツナイの男が物語りました。
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