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物語や歌

C0230. 兄に呪われたオタサムの男の話

あらすじ

 

 私はオタサㇺの村で父と暮らしている男でした。大きな村で暮らしていて、母はおらず、私が大きくなってからは狩りにひとりで行っていました。村人について交易に行きたいというと父は駄目だと言い続けていました。でもうらやましいと思い、父には漁に出ると言って準備をしたところ、父は「どこへ行っても自分の素性は言うのではない」と言い、私は交易に出かけていきました。

 海へ舟を漕ぎ出して進んでいくと、仲間たちが途中で休もうと言うので舟を陸に上げました。川が海に流れ込んでいるところの土手に登ってみると、家がありました。そこを訪ねていくと、みすぼらしい着物を着た若い娘がいて、家の中の人に「見たこともない、神のように美しい男性が来ています」と言うと、「お入れしなさい」という男性の声がしました。家に入ると、暮らし向きが良くないことがひと目でわかる様子の老夫婦が座っていました。男性のほうを見ると目の玉がないのでした。挨拶を交わしてから、持ってきた食べ物を差し出して、皆で食べました。そして「一体どうしてここで暮らしているのですか?」と尋ねると、老紳士が答えました。

「私たちはオタサㇺで暮らしていたのですが、私には兄がいて、父が死ぬ時に『遺産は兄弟で平等に分けるように』と遺言を残して死んだのですが、兄は悪い心を抱いたようでした。兄に猟運がなく、私に猟運があることをねたみ、悪い神に祈ったのでしょう。私はつらい目にばかり遭いました。私が先に結婚して子供ができたことも憎しみの対象だったのでしょう。私の息子たちは次々に死んでしまい、兄から逃げてここへやってきたのです。長男を連れてきたため、狩りをしてくれていたので苦労することなく暮らしていましたが、ある日息子は帰ってこなかったのです。犬を連れていっていたので、その犬が息子の片袖をくわえて戻り、クンクンと鳴いているのでただごとではないと思い、川の上流へ探しに行ったところ、息子は化け物に殺されてしまっていました。

 それから私は着物を被って寝てばかりいました。妻はオオウバユリ掘りにまだ小さかった娘を連れていきましたが、戻ったところで大蛇が娘に襲いかかりました。危急の叫びを聞いて私は駆けつけ、木の枝で大蛇を殴りつけていたところ、大蛇の体液が飛び散って私の目に入ったのです。それからは目が痛んで、そのうちに目の玉が溶け落ちてしまったのです」。私はあまりにも気の毒で、涙を落としながら聞いていましたが、父が「自分の素性を語るな」と言っていたので、自分のことは何も言わず、ただ「交易に行く途中です」とだけ言いました。するとその老紳士は「ここにある宝物を持っていき、着物と交換してきてくださいませんか」と言うので、それを持って交易に向かいました。もしやこの人は私の叔父ではないかと思ったものの、心に秘めておきました。

 交易に行った先では、色々なものを殿様に交換してもらい、舟いっぱいになりました。感謝をしながら帰途につき、あの途中の家に立ち寄りました。俵と酒樽をひとつ背負って家に入っていくと、老人は喜んで神に祈りました。着物もきれいな着物を家の人にあげて、私は感謝されましたが、やはりオタサㇺから来たということは言いませんでした。翌日、荷物のほとんどはその家の人にあげてしまい、私はひとつの俵と酒樽だけを持って帰りました。

 家に帰ると、父が「村人たちはもう帰っているのに、おまえが遅いので心配していたが、良かった」と言うので、怒ってドスンと座り「父さんには兄弟はなかったのか」と聞きました。すると父は「弟がいたのだが、私は弟をねたんで悪い神に祈ったりした。弟は海の向こうに逃げていったが、おまえはそこへ行ったのではないか」と言うので、さんざんにののしって「宝物に囲まれて暮らすといい。私はもう出ていく」と言って家を出て、叔父のところに行きました。叔父は泣いて喜んでくれました。崩れかけた家は建て替えてきれいにし、村の人たちにも挨拶をしました。それからは私がクマやシカをとり、何不自由ない暮らしをしました。そしてその村で結婚し、子供もたくさんできました。死ぬ前に子供たちには「自分はもともとこの村の人間ではなく、身を寄せた身の上なのだから、村の人たちとは仲良く暮らしなさい」と言い残して死んでいきますと、オタサㇺの人が物語りました。


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