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物語や歌

C0237. 悪グマを退治した正妻

あらすじ

 

 私は夫と暮らすひとりの女性でした。夫は狩りでクマやシカをとってきて、私も働き者なので何不自由ない暮らしをしていました。でもただひとつ子供がないことだけを寂しく思っていました。村人たちが子供を連れているのを見るたびに子供が欲しくなり、夫に「妾をもらってください」と言っても、聞こえないふりをしていました。
 ある時夫は山へ行って2日も3日も帰ってきませんでした。妾でも探しているのかと思っていると、本当にきれいな若い娘を連れてきたので、とても喜んで別邸を建て、助け合って暮らしていました。そのうち妾にとてもかわいらしい男の子が生まれたので、かわいがって暮らしました。

 息子が大きくなり、妾がオオウバユリ掘りに連れていくと言うので、一緒に行きました。舟で川をさかのぼって行き、夫の狩小屋につきました。私は家の中の草を先に刈って妾と息子を家に入れ、外の草刈りをして掃除をしていました。狩小屋の近くの小さいの山のすそ野で、クマが穴の中にいるのを見ました。でも見ないふりをしてオオイタドリの葉を刈って、狩小屋の前まで敷きつめておきました。そして妾には何も言わずに食事をしました。
 ふたりを寝かせ、私は槍を持って寝ずにいました。夜が明ける頃に、何かがオオイタドリの葉を踏んで近づいてくる音が聞こえました。家の戸口の前に来たので、槍で思い切り突いたところ、槍が当たったらしく、そこで倒れて転げ回って暴れ、やがて死んでしまったのがわかりました。そのクマを踏みつけて悪口をさんざんに言い、それから眠りにつきました。

 妾は起きて驚き、食事をするとオオウバユリ掘りをせずに家に帰り、夫に話しました。そして夫も一緒に狩小屋まで来て、その様子を見ると驚きあきれ、「このクマは偉い神ではない。女の度胸を試したのだろう」と言って、そのむくろを刻んで、頭は折れた木の上に置いて、送りの儀式もせずに「湿地の国に蹴落としてやる」と言って帰ってきました。

 それからはあまり遠くの山に行くのは恐ろしいので、近くの山に行ってオオウバユリ掘りなどをしながら暮らしました。それから妾には次々に子供ができ、子供たちの成長を見て何不自由ない暮らしをし、私はもう死んでいくので、昔恐ろしい目にあったことを子供たちに話して死んでいきますと、ひとりの女性が物語りました。


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