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物語や歌

C0238. 飢饉を救った狩り場の神

あらすじ

 

 私は狩り場の神で、男のひとり暮らしでした。女手がないので、ガマをたくさん刈ってきて、その上に座って暮らしていましたが、何の不自由もなく暮らしていました。
 ある日私の家の神窓に影がさしたので見ると、お酒のいっぱい入った酒椀の上で捧酒箸が飛び跳ねていて、その音がこのように聞こえました。「オキクㇽミの神から使いに出されて伝言を伝えに来ました。人間の村が飢饉になり、オキクㇽミの神が食べ物を分け与えていたのですが、それももうできなくなりそうです。狩り場の神様、どうぞ手を貸してください」。
 それを聞いてかわいそうになりました。12個の行器を出してきて、そこに少しだけ酒を注ぐと、全ての行器がいっぱいになりました。そして酒宴をひらき、神々を招待しました。シカの神に「シカを出してください」と頼むと、「人間たちは私の仲間を殺しても、木幣も捧げない。仲間たちは泣きながら帰ってくるのだ。そこで食糧を出さないことにしたのだ」と言いました。魚の神のところに言って頼むと「人間たちは私の仲間を殺しても、なづち棒も捧げない。仲間たちは泣きながら帰ってくるのだ。そこで食糧を出さないことにしたのだ」と言いました。
 そこで私はシカの神の倉庫からシカの骨をくすねて、狩り場にまき散らしました。魚の神の倉庫から魚の骨をくすねて、川のへりにまき散らしました。2,3日経つと、シカも魚もたくさんあふれるようになったので安心していました。
 すぐにオキクㇽミの神から酒や食べ物がたくさん届き、また神々を招待して酒宴を開きました。力のついた人間たちからも次々に供物が届くので、シカや魚の神様はこう言いました。「最初から狩り場の神の言う通りに食糧を出していれば、色々な供物を受け取ることができたのに。少しの人間のすることに腹を立てて食べ物を出さなかったのですが、狩り場の神のおかげで供物を受け取ることができるのです」と言って私を敬いました。
 それで今でも狩り場の神は祈られているのですと、どこかの神が物語りましたとさ。


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