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アイヌ語辞典

植物編 §020 ハマニガナ Lactuca repens Maxim.

ota-tesma オタテシマ [ota(砂浜)tesma(走っているもの)] 茎 ⦅真岡
 注1.――「テシマ」は、樺太でも普通には「かんじき」をいうが、ここではその意味だとも思えない。クサフジの茎なども「ムン・テシマ」mun-tesma(草の・テシマ)とか、「テシマ・カラ・キナ」tesma-kara-kina(テシマを・作る・草)とかいうが、そのテシマなども「かんじき」の意味に取っては何のことだか分からない。テシマは、樺太の植物名の中では、「テシパ」tespaの原義に近く、「ずうっとすべって行くもの」「ずうっと走って行くもの」の意味をもち、英語のrunner(繊匐枝)creeper(匍匐枝)などに当たる場合もあるように思われる。あるいは、「ひも」「つな」の意味さえあったのではないかと疑われるような用語例もある。
 樺太の白浦に「ウコ・テシマ・アフンケ」uko-tesma-ahunkeという遊戯があった。u(互い)ko(に)tesma(テシマを)ahunke(入らせる)、すなわち、「テシマの引きあい」ということで、実際は「綱引き」である。そのやり方は次の通りである。
 夏の夜など、親しい者どもが数人ずつ、あちらこちらの家にたむろして談笑している。そこをねらって、幾人か組をつくって、「トララ」torara(革ひも)の一端に乾鮭の肉を結びつけたものを用意して行き、その乾鮭のついた部分を不意に戸口から投げこむ。これを見るやいなや屋内の一人が
「テシマ アフン」tesma ahun!(テシマが入ったぞ)
と叫ぶ。すると居合わせた者が総立ちになって、その乾鮭のついた革ひもを、あたかも舞い込んだ幸運をこんりんざい逃すものかというように、一生懸命ひっぱる。しばらくそのようにして、家の内と外とでえいやえいやと引きあった後、勝っても負けても一同破顔一笑しながら、額の汗をふきふき、炉のまわりに寄り集まって、鮭の乾肉などをむしって食いながら、夏の夜の数刻を心からなる談笑に過ごすのである。
 この遊戯において鮭の乾肉を結びつけた革ひもをテシマというのであるが、クサフジやハマニガナなどの茎は、実際にそれで魚を結束することもあったかと思う。

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