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アイヌ語辞典

日本語名:フキ

アイヌ語名:コロコニ

利用:食用、薬用、生活用具、住

植物編 §026 フキ Petasites japonicus Miq.

(1)kor コル 葉 ⦅各地⦆
 注1.――ただし、これは合成語の要素としてのみ見出される。
  kor-kuca フキの葉の小屋
  kor-su フキの葉の鍋
  kor-ur フキの葉の雨衣
 これらについては後で説明する。

(2)kor-ham コルハム [フキの葉っぱ] 葉 ⦅北海道各地⦆

(3)koram コラム [<kor-ham] 葉 ⦅北海道各地⦆

(4)koriyam コリヤム [<kor-ham] 葉 ⦅樺太⦆

(5)korkoni コルコニ [kor(フキの葉)kor(もつ)ni(木)] 葉柄 ⦅北海道各地⦆

(6)ruwe-kina ルウェキナ [太い・草] 葉柄 ⦅樺太各地⦆

(7)ruye-kina ルイェキナ [太い・草] 葉柄 ⦅白浦

(8)makayo マカヨ [<pakkay(子負い)] 花茎(フキノトウ) ⦅北海道各地⦆
→補注(8)。

(9)makao マカオ [<makayo] 花茎 ⦅美幌屈斜路
 注2.――北海道の北部から樺太にかけてフキノトウに雌雄を区別する。ただし、植物学上の事実とは反対に、雄性頭花を雌に、雌性頭花を雄にしているのは注目される。美幌の一婦人の語るところによれば、matne-makao(雌のフキノトウ)は大きく、pinne-makao(雄のフキノトウ)は小さい。そして、pinne-p(雄の・もの)は成熟するのも、花が咲いて散るのも早く、堅くて食えぬので、もっぱらmatne-p(雌の・もの)ばかり取って食うそうである。→補注(9)。

(10)pinne-makao ピンネマカオ [pinne(男である)makao(フキノトウ)] 花茎(雌性頭花) ⦅美幌屈斜路

(11)matne-makao マッネマカオ [matne³(女である)makao⁴(フキノトウ)] 花茎(雄性頭花) ⦅美幌屈斜路
 注3.――[´max-ne]とも[´maç-ne]とも発音される。
 注4.――makaoともmakayoともいう。

(12)pinne-kina ピンネキナ [雄の・草] 花茎(雌性頭花) ⦅樺太各地⦆
 注5.――「ぴィネキナ」[´pijne-kina]とも発音される。

(13)pahkay パハカイ [<pakkay<po-kay(子を・負っている)] 花茎(雄性頭花) ⦅樺太各地⦆

(14)makayo-nonno マカヨノンノ [フキノトウの・花] 花 ⦅幌別

(15)makayo-epuy マカヨエプイ [フキノトウの・頭] 成熟した果実 ⦅幌別

(16)etetarah エテタラハ [<e-tetara-p(頭・白い・もの)] 成熟した果実 ⦅真岡
 注6.――成熟した果実には白い冠毛がついている。

(17)kina-sapa キナサパ [kina(草)sapa(頭)] 根 ⦅白浦
(参考)花茎は焼いて皮をむいてそのまま、あるいは魚油をつけて食べた(幌別)。北海道北部及び樺太では生のままでも食べたという。葉柄もやはり焼いて皮をむいて汁の実にしたり、漬け物にしたり、あるいは乾燥して冬季の用に貯えたりした。また葉柄や花茎は、山中で怪我をした場合に生のまま噛んで付けたり、あるいは風邪の際ベニバナヤマシャクヤクなどと混ぜて煎じて飲んだりした(幌別)。
 樺太では根も食べた。すなわち、それをドロドロに柔らかく煮て、その中にあらかじめ煮ておいた葉柄を刻んで入れ、さらにそれに油を入れてかきまぜるのである。根はまた淋病や脚気の薬に煎じて用いた(白浦)。フキの根(korkoni sinrici)は、ハシカその他流行病の時、熱さましに煎じて飲んだ。生のも使ったし、干し貯えておいてもおいた(美幌)。
 フキの葉は、物を拭ったり、包んだり、栓にしたり、鍋にしたり、極めて広い用途を持っていた。フキの葉の鍋を「コルス」kor-suと言い、それを作ることは、山狩りなどに行く者には必須の心得であった。フキの葉を5、6枚重ね合わせて両端を縛り、その中に米と水とを入れ、火にかけるのである。松浦竹四郎の東蝦夷日誌に「爰にて宿けるに鍋を忘れ如何ともなし難く(中略)甚是を思ひ煩ひしに、土人程なく欵冬葉を取来り五六枚重ね、是に程よく米と水を入れて括り、火上に置しが、頓て其葉は燃仕舞と思う頃に取上見れば、中に握る如く丸く飯に成たり」とある。また澱粉を水で練ってフキの葉に包み熱灰の中に埋けて焼いて食う。これをirup-sito korham ari a-ma[澱粉だんごをフキの葉で焼く]と言って、アイヌが特に好む方法である(幌別)。また鍋のない時砂の中に小さな穴をほり、フキの葉をおいてその中に水を入れ、それに小石をいくつも焼いては入れ、焼いては入れして物を煮た。これをkorham ani suwe[フキの葉で煮る]という(天塩)。山中で雨に降られた時は、フキの葉を重ねて紐を付けて肩にかけ、さらに頭にも一枚かぶる。それをkor-ur[フキの葉の・衣]という(同)。山で野宿する時は、簡単な小屋を立ててフキの葉で葺く。それをkor-kuca[フキの葉・小屋]という。ただし、フキの葉だけでは乾くと飛んでしまうから、その上にクサソテツをかぶせる(同)。

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