植物編 §296 クワ Morus bombycis Koidz.
(1)turepni トゥレプニ [turep(→注1)ni(木)、“トゥレプのなる木”] 茎 ⦅長万部、礼文華、虻田、有珠、幌別、白老、鵡川、穂別、千歳、沙流⦆
注1.――樺太では木の実をni-tureh(<ni-turep)または単にtureh(<turep)と言っている。北海道ではturepと言えばもっぱらオオウバユリの鱗茎をさすことに今はなっているけれども、古くは木の実をも呼んだらしいことは、このturep-niの名称から察することができる。
(2)tureh-ni トゥレヘニ [<turep-ni] 茎 ⦅多蘭泊⦆
(3)topempe トペンペ [topen(あまい)pe(もの)] 果実 ⦅幌別、名寄⦆
注2.――木がturepniで、果実がtopempeなのである。
(4)tesmani テシマ・ニ [tesma(かんじき)ni(木)、“かんじきにする木”] 茎 ⦅美幌、屈斜路、近文、真岡⦆
(5)tesmani-epuy テシマニ・エプイ [tesmani(桑の木)epuy(果実)] 果実 ⦅美幌⦆
(6)tesmani-yar テシマニ・ヤル [tesmani(桑の木)yar(はぎとった皮)] 樹皮 ⦅美幌⦆
(参考)果実は生でも食べた。飼い熊が病気の時、わざわざこの果実を取って来て食わせた。皮は入れ墨をする時に使った。木はそれでかんじきや弓その他の器具を作った(幌別)。美幌では、足の立たぬ病気に、この木の若枝とハコベの茎葉とを鍋で煮立てて、その湯気で身体を蒸し、同時にその煎汁を飲んだ。