植物編 §301 ミズナラ オオナラ Quercus crispula Blume
(1)pero ペロ [→下記注1を見よ] 堅果 ⦅幌別⦆
注1.――ミズナラを「ペロコムニ」と称する地方がある[→(4)]。多分それが元の形であろう。日本語のミズナラが材に水を多く含んで燃えがたいナラの意味だとすれば、アイヌ語の「ペロコムニ」もあるいはペ・ノ・コムニ[pe-no-komni水・もつ・ナラ]の意味だったかもしれない。ペノコムニがペロコムニになり、それがアイヌ植物命名法の通則に従って「ペロ(果実)のなるナラ」と解釈され、ついにペロがこの植物の堅果をさす名称となったものと思われる。
(2)pero-itanki ペロイタンキ [ペロの椀] 殻斗 ⦅幌別⦆
注2.――殻斗が椀形をしているからばかりでなく、子供たちがこれをままごと遊びにお椀として使ったからその名がある。
(3)pero-ni ペロ・ニ [ペロのなる木] 茎 ⦅長万部、幌別、鵡川、穂別⦆
(4)pero-komni ペロコムニ [→注1] 茎 ⦅美幌、屈斜路⦆
(5)si-peroni シペロニ [本当のペロニ] 茎 ⦅A沙流・鵡川・千歳・上川⦆
(6)nihum ニフム [<ni-num 木・粒] 果実 ⦅白浦⦆
(7)nihum-ni ニフムニ [ニフムのなる木] 茎 ⦅白浦⦆
(参考)果実は次条カシワの果実と同様に処理して食べた(幌別)。病気流行の際にwattes(ワラしべ)とsunke(スゲ)とを合わせて縄をない、ミズナラの幹にたすきに結んで魔除けとする(鵡川)。ミズナラは素性の良い木として大切にされ、その三つ又になっている木は山の神の木であるとして特に尊ばれ、切ってたきぎなどにすることは厳しいタブーになっている(同上)。この果実を煮て潰して「ヌピ」nupi“もち”にして食べる(白浦)。