植物編 §310 シラカンバ Betula Tauschii Koidz.
(1)retattat レタッ・タッ [<retar-tat 白い樺皮] 樹皮 ⦅平取、穂別⦆
(2)retattat-ni レタッタッ・ニ [上記樹皮のとれる木] 茎 ⦅平取、穂別⦆
(3)kapattat カパッタッ [<kapar-tat 薄い・樺皮] 樹皮 ⦅A沙流・鵡川・千歳・有珠⦆⦅長万部⦆
(4)kapattat-ni カパッタッ・ニ [上記樺皮のとれる木] 茎 ⦅A沙流・鵡川・千歳・有珠⦆⦅長万部⦆
(5)ki-tat キタッ [光る・樺皮] 樹皮 ⦅美幌、屈斜路、名寄⦆⦅A十勝・石狩⦆
(6)kitat-ni キタッ・ニ [上記樺皮のとれる木] 茎 ⦅美幌、屈斜路、名寄⦆⦅A十勝・石狩⦆
(7)petat ペタッ [<pe(樹液)-tat(樺皮)] 樺皮 ⦅長万部、幌別、荻伏⦆
(8)petat-ni ペタッニ [上記樺皮のとれる木] 茎 ⦅長万部、幌別、荻伏⦆
(9)pettat ペタッ [<pe-tat] 樹皮 ⦅有珠⦆
(10)pettat-ni ペタッニ [上記樺皮のとれる木] 茎 ⦅有珠⦆
(11)tah タフ [<tat] 樹皮 ⦅白浦、真岡、鵜城⦆
(12)tah-ni タハ・ニ [<tat-ni] 茎 ⦅白浦、真岡、鵜城⦆
(13)sitah-ni シタハ・ニ [<si-tat-ni 本当の・樺皮の・木] 茎 ⦅白浦、真岡、鵜城⦆
(14)hupuh フプフ [<yupuh] 樹皮 ⦅樺太西海岸中北部⦆
(15)yupuh ユプフ [yupu(緊縛する)p(もの)] 樹皮 ⦅樺太東海岸北部⦆
(参考)早春、樹幹に傷つけ、そこから流れ出る樹液、――いわゆる「タッニワッカ」(tatni-wakka「樺木・水」)を容器に受けてそのまま飲んだり、あるいはそれにザゼンソウの葉を刻んでいれ、二三日放置しておいてから飲んだりする。あるいはこの樹液でザゼンソウを煮詰めて食う(美幌)。樺太では、なお、この樹液(「タハニ・ワハカ」)tahni-wahka「樺木の・木」)を放置しておいて寄せ豆腐のように凝固したものを「タハニ・トペ」(tahni-tope「樺木の・乳汁」)と言い、それにキハダまたはクロミサンザシの果汁を加えて時々撹拌し、そのまま放置して発酵させ、酒を造ったという。樹皮はサイハダカンバと同様に種々の器財容器を造るのに用いた。