植物編 §448 マイタケ Polyporus frondosus Fr.
(1)iso-karus イソカルシ [熊・きのこ] ⦅樺太各地⦆
(2)yuk-karus ユクカルシ [熊・きのこ] ⦅北海道各地⦆
注1.――yukは今「鹿」を意味するが、もともと獲物の義で、合成語の中ではむしろ熊をさすことが多い。ここでも後述の土俗などから見て熊の義に取っておく。
(3)maytake マイタケ [<jap.] ⦅美幌、屈斜路、塘路⦆
注2.――美幌でも老人の中にはyuk-karusなる語を知っている者がいた。しかし大多数はmaytakeを本来のアイヌ語だと思っている。これに2種類を区別する:――
ⅰ)matne-maytake[雌のマイタケ]白マイタケ
ⅱ)pinne-maytake[雄のマイタケ]黒マイタケ
(参考)樺太では山でこのキノコの生いかけを見たら、棒切れでその周りの地面に大きな輪を描く。それくらい大きくなれという意味であろう。このキノコを採る時は、必ず槍を構えて突く真似をしてから採る。もし槍を持ち合わさぬ時は、手頃の樹を切って槍様のものを作り、それで突く真似をしてからでなければ採られないことになっていた(白浦)。つまり熊を捕るような気持ちなのである。
北海道の塘路では、マイタケを見つけると、“ekattar, etak enkota arki wa yayrenka yan! ”[子どもらよ、さあ早く来て喜べや]と叫んで、子供らを呼び寄せて、見せてから採った。更に古く男なら陣羽衣、女なら厚司衣を着て、その周りを踊り、それを脱いで“kʼokkari kun! ”[とっかえっこしよう!]と言ってオンカミ(拝礼)しながら採った。美幌では、熊を捕った時のように、男はフォー! フォー!と高らかにオコクセ(ときの声)をあげながら周りを踏舞したというし、女はオノンノ! オノンノ![うれしい! うれしい!]と唄いながら周りを踊ったという。