リス科で、シマリスに比べると大きく、冬眠はしません。森の中を一年中元気に走り回っていて、人目に触れる機会も多い小動物です。
アイヌ文化では、姿を見ることを不吉がる地域もありますが、当館の採録口承文芸資料にある通り、その特徴的な仕草は何かを予知して人間に知らせているのだという考え方があります(日高地方)。身近な生物の行動や鳴き声に何かを読み取ろうとするのは、アイヌ文化の基本概念と言ってもいいでしょう。
アイヌ語辞典
物語や歌など
エゾリスの知らせ
あるおじいさんがふたりで連れ立って魚をとりに山へ行きました。途中でエゾリスが木の上にいました。木の上を跳び回りながら木の枝をくわえて折り、振り回していました。まるで何かに怒っているようでした。
その晩は魚をとって山に泊る予定でしたが、おじいさんたちは、エゾリスはどうしてあんなことをするのだろうと話し合いました。そしてエゾリスに向かって「何かを知らせてそうするのであっても、私たちは何か悪い心を持って来たのではないのだ。魚をとるために来たので、何かを知らせているのなら、神様たち、どうか私たちを守ってください」と言って祈りました。
そのまま予定通り魚をとりに行って、大きな火を焚き、とった魚は家の奥の穴に入れてふさいでおきました。ふたりで話をしてから眠りにつくと、ひとりのおじいさんが何かの音で目を覚ましました。すると魚を埋めたところで、何者かが魚を掘り出して食べている音がしました。そこでおじいさんは声をあげて火の燃えさしをつかんで外に出て、木に登って行きました。もうひとりのおじいさんは火を抱えて家の奥にまき散らしました。するとクマが大きな声を出して逃げて行きました。そのおじいさんも木に登り、クマが逃げて夜が明けてからおりて来ました。無事を喜んで、「エゾリスの様子を早くに見て神に頼んでおいたから生きることができた。山に行ったらあたりをよく見回して歩くと運気が良くなるのだよ」と、あるおじいさんが物語りました。