日本語名:ナナカマド
アイヌ語名:キキンニ
利用:食用、薬用、生活用具、祈り
ナナカマド
学名 | Sorbus commixta Hedl. |
科名 | バラ科 |
種類 | 木 |
種ID | P0223 |
山地や林内に生えるバラ科の高木です。街路樹としてもおなじみです。
アイヌ文化では、これらの木の独特のにおいに病気の神などを遠ざける力があると考えられていました。木幣を作ったり、器具材として使うなどします。樺太では、体や髪を掻きくずで洗ったとされています。当館の採録資料では、おかゆやお茶にするなどの利用が語られています。
同じアイヌ語名の植物にエゾノウワミズザクラがありますが、当館の日高地方の伝承者が語るデータは、ナナカマドに同定されることが多いようです。道東地方の伝承者の語りには、エゾノウワミズザクラに同定できるものがあります。
アイヌ語辞典
植物編:植223(1)
アイヌ語名:キキンニ kikinni
語義:[kiki(魔神を追っ払うもの、=棒幣)ne(になる)ni(木)]
地域・文献:⦅美幌⦆
区分:茎
アイヌの伝承
アイヌ語での呼び方:キキンニ
・風邪をひいたときにお茶にして飲んだり、おかゆに入れたりします。34132,34178
・枝を窓や戸口に刺します。水桶にも入れます。34178
物語や歌など
流行病とナナカマドの祭壇
私は裕福な長者で、立派な婦人と連れ添っていた。あるとき、よその村に流行病がはやって人々が死ぬという噂を聞いた。
私は神に頼むとよいと考え、ある日キキンニをたくさん切って背負い、浜へ下った。浜に出て六列の幣をつくり、村に流行病がはやらないようにと神々に頼んだ。それから村に戻って村人に事情を話し、家にもキキンニをおくようにと言い聞かせた。
そして、幸いにも私の村には流行病がはやらなかった。キキンニの神のおかげで助かったのだから、キキンニの神を決して忘れるなと村人たちや子供たちに言い聞かせて年老いた。