ヘッダーメニューここまで

ここからメインメニュー

  • 自然図鑑
  • アイヌ語辞典
  • アイヌの伝承
  • 物語や歌
  • 絵本と朗読
  • 語り部
  • スタッフ

メインメニューここまで

サイト内共通メニューここまで

自然図鑑 検索結果

日本語名:エゾマツ

アイヌ語名:スンク

利用:薬用、生活用具、住

エゾマツ

エゾマツ

学名Picea jezoensis
科名マツ科
種類
種IDP0414

絵本 [youtube=https://www.youtube.com/watch?v=pQSgoOHdMzE]

 巨木に育つこともあるマツ科の常緑樹です。針のような葉の先は尖っているので触れるとちくちく痛みます。
 アイヌ文化では、道北地方や樺太では樹皮で家の屋根や壁をふき、舟をつくります。また胆振地方では松やにをあかぎれの塗り薬にします。
 日高地方の口承文芸資料では、人を助ける女神として登場する話がいくつか採録されています。巨木になったものは目立つので、「黄金のエゾマツ」のような舞台装置としても登場します。カツラの木と同様に神として尊敬され、あまり悪く語られることのない木です(そのような印象の木は、巨木になる、材として有用であるなど、いくつかの共通点があるように見えます)。

エゾマツの幹

エゾマツの幹

アイヌ語辞典

植物編:植414(1)
アイヌ語名:スンク sunku
地域・文献:⦅北海道・樺太⦆
区分:

詳しく見る

アイヌの伝承

アイヌ語での呼び方:スンク
→口承文芸資料「エゾマツと魔鳥」35298AB

詳しく見る

物語や歌など

エゾマツと魔鳥
 石狩川中流の村長と石狩川下流の村長は互いに仲が良く、それぞれひとり息子を持っていました。年を取ってからはお互いに行き来もしなくなりましたが、ある時噂に聞くと、下流の村長のひとり息子が山で行方不明になり、人手を出して探しても見つからないというのです。中流の村長は息子に「おまえも忙しいだろうが心配だから探しに行ってあげなさい」と言いました。それから言われた通りに息子が探しに行きましたが、依然として行方は知れませんでした。

(石狩川中流の息子が物語る)
 ある日石狩川をさかのぼって行きたくなり、どう我慢してもだめなので出かけていきました。前から何者かに引っ張られるようにして進んでいくと、はげ山の上に一本のエゾマツが立っているのが見えました。つかまる物もない山にどうにかして登って行くと、エゾマツの枝が下にたれ下がっているところに、わずかに煙が立っているのが見えました。中を透かし見ると、中に顔を洗っていないために色が黒くなった、行方不明の若者であろう人が火をたいてたばこをふかしているのが見えました。そこでまわりを歩きながら「私も入ってはいけないでしょうか」と言うと、その若者は「お入りなさい。身の上話をいたしましょう」と言うので中に入りました。挨拶を交わしてから私が何かを尋ねても、若者は言葉を話すことができませんでした。そこで持ってきた食べ物をちぎって火にくべながら、火の神、エゾマツの神に「夢でわけを教えてください」と祈りました。そして若者と食事をしてから眠りにつきました。すると黒い着物を着た女性が夢に出てきてこう言いました。「私はエゾマツの女神です。ある時木が大きく揺れたので驚いて見ると、魔鳥がこの若者をかどわかして連れてきて、私の枝の上にとまっていたのでした。魔鳥は若者が飢え死にしたら魂を取って結婚しようとたくらんでいたので、私の枝で作った家の中で食べ物を与えて守っていました。そして頼りになる人間を探しているとあなたが適任だと思ったので、ここに来させたのです。矢で魔鳥を射てくれたなら私が手助けをします」。やがて木が揺れて、木の上に何か黒いものがとまっているのが見えました。そこで特別な矢を出して射たところ命中しました。

 翌朝あの若者は話をして「何かの悪い神が私の言霊をつかんでいたので話すことができませんでした。ある日私が山を歩いていると、霧がかかりどこを歩いているかもわからなくなりました。さんざんに歩いたあげくにこのエゾマツのところに来て、守られて暮らしていたのです」と言いました。話は後でゆっくりと思い、若者を連れて川下に行きました。途中で石狩川の上流の村長のところで休み、私の村へは寄らずに河口部まで下りてきました。そして若者は家族と再会し、皆で喜んで泣きました。そこでとりあえず私は家に帰り、父にわけを話すと喜んでくれました。眠りにつくと、黒い着物を着た女性(=魔鳥)がふくれっつらをしてこう言いました。「私があの若者を好きになりかどわかしたのだったが、おまえに射られてしまった。まだ痛いけれど死ぬことはないので、これからもあの若者を狙い、人生の途中の段階で自分のものにするつもりだ」と言いました。そこで夢の話を父や石狩川の下流の村長たちにすると、皆で神に抗議しました。すると再度夢にあの女性が出てきて「神々にさんざん叱られたので、もうあの若者のことはあきらめることにした。無事に人間の寿命を全うできるでしょう」という夢を皆で見ました。それからエゾマツの神のところに行って木幣や酒を捧げて祈りました。その後は石狩川の中流と下流をお互いの家を行き来しながら仲良く暮らし、お互いに結婚して子供もできました。子供たちにはエゾマツの神に祈ることを忘れないようにと言い置いて死んでいくのですと、石狩川中流の村長の息子が物語りました。(安田千夏)

詳しく見る

本文ここまで

ここからフッターメニュー