植物編 §396 カヤ ススキ Miscanthus sinensis Anderss.
(1)nupkaus ヌプカウシ [nup(原野)ka(の上に)us(群生している)] 稈 ⦅美幌、足寄⦆⦅A十勝、石狩⦆
(2)mukkaus ムクカウシ [<nupkaus] 稈 ⦅屈斜路⦆
(3)rapempe ラペンペ [rap(翼)en(鋭い)pe(もの)] 稈 ⦅長万部、幌別、穂別⦆⦅A沙流・鵡川・千歳・有珠⦆
注.――rabinbiヨシ(鳥居龍蔵『千島アイヌ』)
(参考)伝説によれば、この植物はもと国土創造神の婦人の陰毛だった。それで春になれば原野に群生するのだという(→§395参照)。
幼少の時からこの稈に祈りを捧げて箸に使えば、長じて大雄弁家になるという(穂別)。美幌ではこれで屋根や壁を葺いた。そこでは家に3種類あった。①カヤで葺いたもの。「ムンチセ」num-cise[草・小屋]、あるいは「キチセ」ki-cise[カヤ・小屋]。②笹で葺いたもの。「ウラシチセ」urascise[笹・小屋]。③樺皮で葺いたもの。「タッチセ」tat-cise[樺皮・小屋]。