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アイヌ語辞典

日本語名:ハナウド(オオハナウド)

アイヌ語名:ピットク

利用:食用、薬用、嗜好、祈り

植物編 §113 ハナウド Heracleum lanatum Michx.

(1)pittok ピットク [→注1.] 根生葉の葉柄 ⦅全北海道⦆
 注1.――pittokは、pir(傷)-tuk(癒合する)、か。
 注2.――辞書にPittok-kinaとあるが、普通どこでもpittokとだけ言ってkinaとは言わぬ。

(2)har ハル 茎 ⦅全北海道⦆
 注3.――第三人称形はharí、haríhiである。

(3)hara ハラ 茎 ⦅樺太各地⦆
 注4.――第三人称形はhári、hárihiあるいは(hárihe)である。北海道とアクセントの違うことに注意。
 注5.――金田一博士の探訪随筆(p.138)に、花ウド(pittok、樺太hara、方言サク)、とある。しかし、pittokはハナウドの総名ではなく、根生葉の葉柄をさす名称である。また、haraは、もとの形がharで、それは北海道のものと同じであり、かつ、これもハナウドの総名ではなく、中心に出る中空円柱形の茎をさす名称である。ハナウドではこの茎よりむしろ根生葉の葉柄の方が重要で、それには以下に示すごとく多くの名称があるのである。
 注6.――haraのことを、真岡では別にkina-cihe“草・の陰茎”ともいう。

(4)situru-kina シトゥルキナ [situru(<si-turu“自分を・伸ばす”“伸びる”)kina(草)] 根生葉の葉柄 ⦅樺太各地⦆
 注7.――根生葉は長大な葉柄を持つので“伸び出た草”と言ったのである。
 注8.――概報(G、p.39)に、ハナウドの名としてHaraと並べてShiturukinaとある。Haraは茎でShiturukinaは葉柄なのを混同しているのである。

(5)cituru-kina チトゥルキナ [<situru-kina] 根生葉の葉柄 ⦅樺太各地⦆
 注9.――再帰相のsiは中動相(middle voice)のci-と交替し得る。

(6)cikisa-kina チキサキナ [ci(我ら)kisa(皮をむく)kina(草)] 根生葉の葉柄 ⦅白浦
 注10.――真岡では、皮をむいてそのまま乾かした葉柄をいう。

(7)cipere-kina チペレキナ [ci(我らが)pere(裂く)kina(草)] 根生葉の葉柄 ⦅白浦
 注11.――これも真岡では、皮をむいて裂いて乾かした葉柄をいう。かんぴょう(干瓢)のようなもの。だから、この地方では、やせて骨ばかりになった者を形容して“cipere-kina nenan”「ハナウドのかんぴょうのようだ」という。

(8)ciinun-kina チイヌンキナ [ci(我らが)i(それを)nun(しゃぶる)kina(草)] 葉柄 ⦅大泊落帆
 注12.――これでkina-piseというものを作って母乳代わりに赤児にしゃぶらせるのでこういう名がついている。後説。
 注13.――白浜では、採集して貯えておく野草の総名だという。ci-e-inun-kina“我ら・それを・貯える・草”の義に解しているのである。
(参考)幌別では、この植物の若い茎をとって皮をむいて生で食い、葉柄は皮をむいて干しておき、冬の食料にした。根は、洗って刻んで粥に入れたり、冬は干し貯えてあったものを刻んで茶にして飲んだ。その「煎汁」(概念形「ウセイ」usey;第三人称形「ウセイェ」「ウセイェヘ」useye、useyehe)は腹痛の薬にもしたし、また「がっちゃき」(「おイタ」oyta)という病気にはそれで座浴させ、さらにその根を噛んで患者の背すじからお尻の所までなすりつけて行き、また頭の頂にも十分なすりつけて、それから
 hussa!
と強く呼気を吹きかける民間療法があった。
 美幌でも、この根を噛んで柔らかくして、「がっちゃき」(「シプイェウェン」sipuye-wen)、あるいは赤児の尻の荒れた際、肛門に入れて座薬にした。
 樺太の白浦でも、真ん中に出る茎(概念形hara、kina-ci;第三人称形hari、harihe、kinacihe)の柔らかな所を選んで皮をむいて生で食い、横に出てくる葉柄は、小刀で皮をむいて干し貯えておき、冬になってから「シトゥルキナ・チカリペ」siturukina-cikaripe[ハナウド料理]と称する特別料理に使った。
 ハナウド料理の作り方は、皮をむいて干しておいた葉柄を生温い湯の中に漬けておいて柔らかくする。それから細かく裂いて刻み、鍋に入れて煮て、それを手で絞っておく。別に、数の子を水に漬けて柔らかくし、それを小刀で細かく刻んで、木鉢の中に入れ、アザラシの油を杓子で少量くみ入れて、真っ白くなるまですりこぎで搗きつぶす。さらに、それへ「チエトイ」[ci(我ら)e(食う)toy(土)、食用粘土]を少量水にといて入れる。そして、先に手で絞っておいた葉柄の刻んだのをこの中へ入れて、かきまぜて食った。この汁は、母乳代わりに幼児にも飲ませた。その飲ませ方は、ハナウドの花茎の適当な太さのものを選び、15〜18cm位に切って水につけておき、柔らかくなったら一方の端を糸でくくって、他方の端から吹いてふくらませ、その中にこの汁を入れて端を結び、何本でも作って上から吊るしておく。それを「キナピセ」kina-pise(草の油袋)と称する。それを赤ん坊に与える際は、一方に小穴をうがってそこから吸わせるのである。

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