動物編 §102 ヤツメウナギ、カワヤツメ、スナヤツメ
ヤツメウナギ
北海道・樺太で普通に見られるヤツメウナギは次の2種である。
a)カワヤツメ Lampetra fluviatilis japonica Tanaka,
L. japonica(Martens),
Entosphenus japonicus(Martens).
b)スナヤツメ
L. mitsukurii minor Hatta.
L. reissneri Dybowski.
日本の方言ではこれらを共にヤツメの名で呼んでいる。アイヌもそれらについてはただ大小を区別するだけで、厳密な区別はしていなかったようだ。
(1)nukuripe ヌクリペ ⦅長万部、虻田、礼文華、東静内⦆ カワヤツメ
注1.――語源は[nukuri(気がすすまぬ、食う気になれぬ)-ipe(魚)]の約か、あるいは[nut(川のゆるやかに流れている所)kor(を支配する)ipe(魚)]か
注2.――ウナギをもそういう地方がある⦅虻田、静内⦆
(2)ukuripe ウクリペ [<nukuripe?] ⦅幌別、厚真、美幌、名寄⦆ やつめ、カワヤツメ
(3)okuripe オクリペ [<ukuripe?] ⦅近文⦆ やつめ、カワヤツメ
(4)ukurupe ウクルペ [<ukuripe?] ⦅富内、白浦⦆ やつめ
――ukurupe-suma 川原にある皿状の石でそれを拾って灰皿に使った。
(5)ukururpe ウクルルペ [< ?] ⦅白老⦆ やつめ、カワヤツメ
(6)nupurupe ヌプルペ [<nukuripe、これを俗解してnupur-pe(霊力ある・者)に] ⦅様似⦆ やつめ、カワヤツメ
(7)puyapuya-ceppo プヤプヤチェッポ [<puyapuya(ブワブワした)cep(魚)-po(指小辞)] ⦅沙流、厚真、穂別⦆ やつめ、カワヤツメ
注.――疱瘡神に対する魔除けに用いる(→分辞III,p.381)
(1)sumarurap スマルラプ [<suma(石)rura(運ぶ)p(者)] ⦅美幌、屈斜路、塘路⦆ スナヤツメ
(2)sumarura スマルラ [<suma(石)rura(運ぶ)] ⦅白糠⦆ スナヤツメ
(3)toysossopo トイソッソポ [<toy(土、どろ)sossoso(くずしくずしする)-p(者)-po(指小辞)、水底の泥の中にもぐりこむからそう名づけると] ⦅美幌⦆ スナヤツメ
(4)toyukurupe トユクルペ [<toy(土)ukurpe(ウナギ)] ⦅真岡、白浦⦆ スナヤツメ
注.――川にいる。5〜6寸。形はukurupeに同じ。もと食わぬ。
(5)nay-ukurpe ナユクルペ [nay(川)ukurpe(ウナギ)] ⦅多来加⦆ ヤツメ