動物編 §105 ホヤ(海鞘類)
(1)hoya ホヤ [< ?] ⦅虻田⦆ ホヤ
(2)tohoy トホイ [<to-o-i(乳房・多い・もの)] ホヤの類(マボヤ?)toの形と同じ、乳の腫れにつける、食用にはしない⦅白浦、多蘭泊[K28]、富内[土資28]⦆トツイ ホヤ(知日236)モシオ トツイ、蝦夷語箋 唐人日
(3)atoyeporo アトイェポロ [<attoyeporo<ar(全く)tohe(その乳房)poro(大きい)] ⦅富内⦆ (マクラボヤ?)⦅富内[土資28]⦆
(4)uyaka ウヤカ ⦅白浦、蝦夷拾遺⦆ ホヤの類
此辺り長七八寸位にて二股三股に成し石渤卒(右側にアイヌ語のつもりでトツイ[トフイ?]左側に日本語の読み方のつもりでホヤと振り仮名している)多く打ち上りたり。又一種すほや(津軽方言)と云物有(すほやの右側にチタタニとルビをふっている)、是は他に見ざる物也。余津軽にて見たりしが、皮を剥去り、腸を喰し。其肉皮の水晶の如く透明する所を味噌に漬け置て是を琥珀漬と云。又其を塩蔵して三四年を過て用ゆるに宜し。今津軽南部にて石渤卒をして梅干と書、恐らくは是栂干の当字が梅干に誤りしかと思はる。近比是を味噌漬にして上に生梅干味噌漬(スホヤミソとルビ)と書て江戸邸に贈る。邸より其何物たるを知らず、梅干と心得て或寺に贈る。和尚其美味を賞して再び其邸に乞しと云る話有しが、実に可笑事ならずや(知床日誌[古典全集本]p.236)
此辺海岸に沙噀(ナマコ)の如き丸き赤き物多く浪に打揚られ有たり。土人是を割り、潮にて洗ひ余に与ふる故喰しに、其味石渤卒(ホヤ)に異ることなく、後タライカ人に聞に、此辺の者口中の病有る時は、是を水に浸し置、その水もて洗ふに効験著しとかや(松浦「北蝦夷餘誌」270頁)