動物編 §272 エゾイタチ(エゾオコジョ)
(1)upas-cironnup ウパシチロンヌプ [<upas(雪)cironnup(けもの);エゾイタチは冬になると毛が雪のように白くなるので‘雪・けもの’の名があるのであろう。→§270(1)注(d)] ⦅胆振、日高、近文⦆
注.――バチラーはUpas chironnup,“ermine”(lit.:snowfox)(Vid.Batchelor,Dictionary,p.88,“chironnup”)と書いている。「チロンヌプ」という語が今は一般にキツネをさすので、「ウパシ・チロンヌプ」を単純に‘雪・キツネ’の意味にとったのである。
(2)saciri サチリ ⦅網走、春採、厚岸、多蘭泊、真岡⦆
注1.――尊んでsaciri-kamuyとも言う。またpoy-saciri-kamuy[<pon-saciri-kamuy]と言う所もある⦅屈斜路――Sarasina p.124⦆。この方はおそらくコエゾイタチをさすのであろう。
注2.――バチラーは、なお次の類語をあげている:
a)‘tanne-eremu’エゾイタチ。An ermine or stoat. Mustela erminea L.
b)‘yuk-eremu’.エゾイタチ。Ermine.
c)‘kurusurap’.イタチ。A weasel. Mustela itatse Tem.(Including Mustela vulgaris Briss.)
d)‘eremu-koikip’イタチ。A weasel.
注3.――コエゾイタチ(Mustela rixosa namiyei Kuroda)をも同じ名称で呼んだらしい。