動物編 §274 ラッコ
(1)atuy-esaman アトゥイエサマン [<atuy(海)esaman(カワウソ)] ⦅白老、美幌⦆
(2)rakko ラッコ ⦅北海道、千島⦆
(参考)――a)‘rakko’(Torii,p.150). b) riakko(Klaproth, p.312).
(3)rahku ラハク ⦅落帆⦆
(参考)――‘raku’(S.Klaphroth,p.312)
補注1.――美幌の古老、菊地儀之助翁の言によれば、ラッコのことを、ふだんはatuy-esamanと言うのだが、その語は夜間に使ってはいけないことになっていた。夜間にその語を口にするとカワウソがばけて出て来るからというのだ。それで、夜はatuy-esamanと言わずに、もっぱらrakkoとよび、いまではそれが一般に通用するようになってしまったのだという。
補注2.――以上のほかにも、性の区別や成長の各段階に応じる特称がいろいろあったらしく、例えばモシオグサは「ホブシユツベ」、「ヌマツイベ」、「ピンネツプ」(pinne-p雄の・もの)、「マツネップ」(matne-p雌の・もの)、「アツ゜ウツルツ(子)」、「ラップ(子)」、「マイトベ(子)」、「ポンシユツテ(子)」などの名をあげ、またKlaprothのAsia polyglottaもカムチャツカ方言としてkotohnæpなる名称をあげている。