動物編 §294 いるか、イルカ
(1)tannu(y) タンヌ(イ) ⦅胆振⦆
注1.――幌別ではtannuyとよぶ人もいる。
注2.――幌別では‘いるか’に次の三種を区別している;a)tannu イルカ(delphinus dussumieri Blanford)、b)tuwayuk ネズミイルカ(同定未詳)、c)nisaparo、nusaparo(同定未詳)。
(2)terke-cironnup テレケチロンヌプ [<terke(とぶ)cironnup(けもの)] ⦅伏古⦆ イルカ(方言‘せんびきゆりか’
注.――‘もしおぐさ’に「テレケチロンノプ」とある。
(3)terkep テレケプ [<terke(とぶ)-p(もの)] ⦅白糠、空知⦆
(4)tannup タンヌプ ⦅礼文⦆
(5)koyka-isepo コイカイセポ [<koy(波)ka(上)isepo(ウサギ)] ⦅空知⦆
(6)tuway(y)uk トゥワ(イ)ユク [<tuwa(とぶ)yuk(えもの)] ⦅胆振、日高⦆ 民間語源説として、イルカが波間に群れ跳ぶさまを鹿群の跳躍になぞらえて、tuwayuk<tu-way-yuk<tu-wan-yuk‘数・十の・鹿’の義に解する者もある
注.――幌別、白老の漁夫の方言では‘ねずみゆりか’と称する。ネズミイルカ(Phocaena phocaena L.)か。バチラーの辞書には“カマルイカ。A kind of dolphin. Lagenorhynchus acutus Gray”とある。
(7)nisaparo, nusaparo ニサパロ、ヌサパロ ⦅室蘭、幌別、白老⦆ 同定未詳。
注.――吻端がスッと切断したようになっているものだという。イルカではなく、マッコウクジラだと言う者もある。
(8)nunokoncikor ヌノコンチコロ ⦅礼文⦆ 上に同じ
(9)okom オコム ⦅幌別⦆ ゴンドウクジラ
注.――バチラーの辞書に“a dolphin”とあり、同意語として‘rokom’‘tannu’をあげている。また‘pon-humbe’〔‘小さな・クジラ’の義〕をあげて“the porpoise”としている。
(10)rokom ロコム [=okom] ⦅網走⦆
(11)moni-humpe モニフンペ ⦅樺太⦆ シロイルカ(Delphinapterus leucas)方言‘しろくじら’