アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

動物編 §299 ハシボソガラス

(1)kararak カララク [<鳴き声] ⦅近文千歳⦆ ハシボソガラス
 注.――⦅B⦆にはkararatとある。

(2)sirarkokari シラリコカリ [<sirar(岩・磯)ko(に)kari(往来する)、‘磯のあたりを往来する者’の意] ⦅幌別⦆ ハシボソガラス

(3)sirariwak シラリワク [<sirar-ewak(磯・に住む)] ⦅美幌屈斜路浦河⦆ ハシボソガラス

(4)sirarwak シラルワク [<sirar-ewak] ⦅屈斜路美幌浦河⦆ ハシボソガラス

(5)poysirariwak ポイシラリワク [<pon-sirariwak] ⦅美幌屈斜路⦆ ハシボソガラス

(6)sirariwak-kamuy シラリワクカムイ ⦅屈斜路⦆ ハシボソガラス

(7)poysirariwak-kamuy ポイシラリワクカムイ [<pon-sirariwak-kamuy] ⦅屈斜路⦆ ハシボソガラス

(8)etuane エトゥアネ [<etu-ane(くちばし・細い)] ⦅白浦真岡⦆ カラフトハシボソガラス

(9)etuwane エトゥワネ [<etu-ane(くちばし・細い)] ⦅多来加⦆ カラフトハシボソガラス

 関係語句

(1)ikkap イッカプ [<ikka-p(盗む・者)] ⦅春採⦆ 原義‘泥棒野郎’、カラスを罵っていう語。

(2)iyao イヤオ [<?] ⦅近文幌別⦆ カラスの特別の鳴きかたで、巻き舌に鳴くのをいう。
 注1.――カラスが戸外へ来てiyaoすれば人が来る前兆(幌別、近文)
 注2.――iyaoしなくても、カラスの姿が見えず影だけ屋内に映れば人が来る(幌別、近文)
 注3.――カラスにはいろいろの鳴き方があり、ある種の鳴き方で風の吹いてくるのが分かる(真岡)。

(3)kao paskur カオパシクル ⦅美幌屈斜路⦆ 夜中、何かに驚いてカア、カアと泣き騒ぐカラス[ka-o カアカアという]。――塒(ねぐら)を脅かされた鴉(カラス)が夜の空を騒ぐことがある。……そんなとき「夜飛んで歩くと六本のセタンニ(蝦夷小林檎)の木の垣になっていて通れない所へぶっかるゾ」とおどかしの言葉を浴びせかける’(『コタン生物記』p.169)

(4)ka-paskur カパシクル ⦅美幌⦆ ワタリガラス 北 IV,68

(5)paskuntori パシクントリ [<paskur-tori(からす・どり)] ⦅白浦⦆ 【祈詞】からす
 注.――樺太の英雄詞曲の中にも出てくる;
 puyara ka ta 家々の窓から
 sisam ne kun-pe 噂に聞く日本人にちがいない連中が
 nan-etok-oroke 顔、顔、顔を突き出して
 ciurenkare 重なりあっていた
 sapa-nis kasi その連中の頭の上には
 paskuntori カラスを
 ciurenkare どれもこれもとまらせていた。
(『北蝦夷古謡遺篇』p.21)
 この場合のpaskuntoriはいわゆるmotontori(もとどり)を連想させている。

(6)paskur wen rek パシクルウェンレ ク ⦅近文⦆ 原義‘カラスが悪く鳴く’‘カラスが不吉に鳴く’。いわゆるカラス鳴きが悪いこと。
 注.――9月の末ごろになると頭が坊主になるカラスがある。そういうカラスが現れるとその年はサケが豊漁だと。(幌別)

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