日本語名:ナギナタコウジュ
アイヌ語名:エント
利用:食用、薬用
植物編 §065 ナギナタコウジュ Elsholtzia Patrinii Garcke.
(1)ento エント 茎葉 ⦅幌別、様似、本別、名寄⦆
注1.――なお、§130の注を参照せよ。
(2)seta-ento セタエント [犬・エント] 茎葉 ⦅長万部、沙流、鵡川、穂別、千歳⦆⦅A石狩⦆
(参考)茎葉を採ってきて、燃えている火の上にかざしてちょっとあぶってから、炊きたての粥の中に入れてしばらくおくと、粥に一種清爽な香気が移る。また、この茎葉を多量に採集して陰干しにしておき、日常お茶のようにして飲んだ。風邪にかかった際も、これを煎じて飲んだ。山狩りや沖漁に行く時、徳利の栓をわざわざこれでする。すると、何日たっても水の味が変わらぬという(幌別)。この植物には強い香臭があり、それが病魔を遠ざけるので、これを常用すれば身体を健康に保つことができる、とアイヌは考えたらしい。地方によってはこれを植栽した所もあるらしく、次のような記録が残っている。「……又傍に香薷(セタエント)を植たり。是は飯に炊て後湯に入、香を出し呑が為に植置とぞ」(松浦「夕張日誌」)。
茎葉の煎汁――ento-useyという――は二日酔いにも効があると(長万部)。