植物編 §100 ゴゼンタチバナ Chamaepericlymenum canadense Aschers. et Graebn.
辞書にRehamusとあり、植物名詳表によれば採集地は十勝及び上川になっている。「レハムシ」rehamus、語源はriya(越年する)ham(葉)us(ついている)で、葉の常緑なのに基づいて名付けたのであろう。
辞書には他に(1)cironnu-hurep、(2)ci-ronnu-hureppo、(3)cirunnu-hureppo、(4)sekakka等の形が見えるが、(1)はcironnup-hurepが正しく「狐の・赤い実」の義、(2)(3)はcironnup-hureppoが正しい形で「狐の・小さい赤い実」の義である。(4)はsi-kahkah[si(本当の)kahkah(ゴゼンタチバナの果実)]すなわちエゾゴゼンタチバナの果実に対する。
菅原繁蔵「樺太の植物」(p.249)には『ニポコ』とあり、千徳太郎治「樺太アイヌ叢話」(p.23)に『ニイポコニトレヘ』なるものをあげ、エチイチャラ(イワツツジの果実)に似て小なりとしている。ニトゥレヘni-turehは木の実をさしていう語であるから、本条のものとは違うであろう。